ブラックキュレム 個別考察

先日、捕まえたままの陽気キュレムをボックスに見つけました。
BW2になってフォルムチェンジをしてパッケージの画を飾ったにも関わらずホワイトキュレムとは違って弱いと言われているブラックキュレムですが、せっかくなので1匹くらい育成してみようと思ったのでブラックキュレムの考察をしてみることにしました。



(種族値)

HP 125
こうげき 170
ぼうぎょ 100
とくこう 120
とくぼう 90
すばやさ 95
弱点:格闘、岩、鋼、ドラゴン
半減:水、草、電気


圧巻の攻撃種族値170。その数値は無振りでも攻撃最大のハリテヤマを1上回るほどのもので、ハリテヤマの根性インファイトが無振りのカイオーガを倒せる火力でコジョンドのけたぐりがHPに振ったパルキアを2発倒せる火力だと知っている人ならばブラックキュレムの逆鱗がいかに強いかが分かるのではないでしょうか。
更に分かりやすい指標をつけるとするならば、ブラックキュレムの1.5倍逆鱗はHP振りのバンギラスがギリギリ耐えられる程度です。無振りのグラードンとHP振りのメタグロスとHP振りのディアルガは同程度の物理耐久であり、バンギラスはヨプの実を持ってコジョンドなどの格闘技を耐えるべくディアルガと同程度まで物理耐久を引き上げることが多いです。GSルールではかなり物理耐久の高い部類にあたるこれらのポケモンがギリギリで攻撃を耐える程度の火力だということが分かるでしょう。
しかし、残念なことにその攻撃力を生かす物理技に全く恵まれておらず、タイプ一致である氷タイプの物理技は攻撃に2ターンかかるフリーズボルトだけという始末です。ゼクロムと合体した名残でクロスサンダーは覚えるもののタイプ不一致であるためゼクロムの雷撃に比べると火力は劣ってしまいます。


防御面を見ていくと、HP種族値が高く耐久の水準は無振りでも比較的高めです。
ドラゴンタイプなのでGSルールトップメタであるカイオーガの主力攻撃である水技を半減することができます。更に、複合しているタイプが氷タイプなので、カイオーガのサブウエポンとして採用率の高い雷も半減することができ、もう一つサブウエポンとして考えられる冷凍ビーム・吹雪を等倍で受けることができます。雷を打たせず氷技で凍り状態になることもないので対カイオーガに関しては事故率の面でも比較的強いポケモンだと言えるでしょう。
反面、氷タイプは耐性が少なく弱点が多めです。格闘・岩・鋼が氷タイプと複合したことによる弱点ですが、GSルールでは格闘技の通りが良いため格闘ポケモンや技が採用されることは多いです。岩タイプ・鋼タイプと言えばバンギラスメタグロスが頭に浮かぶと思いますが、この2匹はGSルールでも強力な上に処理も困難なポケモンです。苦手なポケモンが周りと被りやすいために構築には組み込みにくいです。


素早さ種族値は95と90族のポケモンを一歩リードしている分は少しながら有利に働いてくれそうです。特に、特性のテラボルテージが発動するため、カイオーガグラードンとの素早さ関係を確実に見極められる点は非常に良い点だと言えるでしょう。


メジャーな一般ポケモンに対する打たれ弱さが目立つものの、カイオーガに強く伝説枠で分の悪い相手はミラーとディアルガパルキア程度しかいないため一般ポケモンに対しては数値の高さを利用してうまく誤魔化していける組み合わせを作れるのではないでしょうか。
それでは技と持ち物を考察していきます。


〜技〜


クロスサンダー
→ブラックキュレムカイオーガに強くあるために採用必須な技。この考察はブラックキュレムの考察なのでフォルムチェンジ前提で考えられていましたが、そもそもノーマルキュレムは耐性的にカイオーガに強いという面を持ちながらカイオーガに対する打点を持つことはできていなかったので、ブラックキュレムになってクロスサンダーを覚えてくれたのはしっかりとした強化ポイントだったりします。しかし、強化アイテムがないと無振りのカイオーガにさえほぼ耐えられてしまう程度の火力しか出せません。


○逆鱗
→冒頭でも書いたように圧倒的高火力。攻撃がどちらに飛ぶか分からない不安定な技であるため採用を避けたいようにも思えますが、キュレム自体が尖ったポケモンなので安定感を求めて火力を落としてしまうよりは逆鱗でどちらかを適当に削りながら当てたい方向に当たったらラッキーと考える方がいいような気はします。A210程度でルンパッパが1発、HP振りディアルガが2発。


○ドラゴンクロー
→逆鱗に比べて火力は相当落ちるものの小回りの利くドラゴン技。ガブリアスギラティナのドラゴンクローの火力に悶々としていた方も多いでしょうが、ハバンの実を除けばこの威力でもパルキアを倒すことができます。レシラムが高めの乱数1発という程度なので攻撃に振り切る場合は意外と使いやすい印象です。


フリーズボルト
→専用技。氷のタイプ一致技ですが、発動までに2ターンかかり命中も100ではありません。ただし、火力は偉大で「ブラックキュレムの逆鱗耐え」調整ポケモン(HP振りギラティナなど)が高乱数で倒せるようにはなっています。拘り鉢巻などなら最後の技として採用する価値もあるかなと考えてみたりもしましたが、だいたいドラゴン技で事足りるかと思います。


アイアンヘッド
→抜群が取れても「逆鱗>アイアンヘッド>ドラゴンクロー」となるので、だいたい対バンギラス専用技。攻撃に振り切っても高めの乱数で2発にできる程度の火力しかありません。


れいとうビーム
→特殊技。一応、タイプ一致なのでグラードンランドロスへの打点になります。しかし、特攻に振り切っても特防振りグラードンを一撃にすることはできないので、基本的には2発で倒す前提になります。無振り下降補正でも2発にできる火力はあるので攻撃に振り切らない型の場合は採用しやすいでしょう。


○こごえるかぜ
→特殊技。相手の2匹に当たり素早さを下げることができます。冷凍ビームの項でグラードンを2発で倒す前提だとあることから分かるようにグラードンには3〜4発かかることになるので打点としては全く期待できません。キュレム自身で縛り関係を逆転させることができる貴重な技ではありますが、猫騙しと合わせても相手の守るが安定しがちでなんとも言えません。


○だいちのちから
→鋼タイプへの申し訳程度の打点。キュレムは素早さに補正を掛けなくてはならないので、特攻に努力値を振り切ってもメタグロスを2発で倒せるか微妙なラインにしかならず。ドリュウズに至っては確定で耐えられてしまいます。ただ、相手にする側からはあまり予想しやすい技でもなく連携で鋼を処理しやすくなるので採用する価値はあるかと思います。


○にほんばれ
→天候変化技。ここでは対雨と味方の気合の襷を潰さないように霰ではなく日本晴れとしていますが、バンギラスドリュウズの初手に対抗する手段として天候変化技を挙げました。ブラックキュレムからドリュウズに対してはほとんど打点を持てずバンギラスにも殴り合いで有利ではないので、猫騙し+日本晴れで天候を奪って猫騙しを打つポケモンドリュウズを攻撃できるようにすればまだ五分に持ち直せるのではないかと思いました。霰の場合はドリュウズ猫騙しを守られても気合の襷を潰せるというメリットもあります。


〜持ち物〜


○こだわりハチマキ
クロスサンダーカイオーガを一撃にするための持ち物。しかし、メインはクロスサンダーではなく逆鱗・ドラゴンクローでこれらの火力が凄まじいことになっています。特に、小回りが利くドラゴンクローが逆鱗の火力に化けられることや2匹に高火力の逆鱗が一貫している状況を作り出すことができます。当たり前ですが、難点は技を拘ってしまうところ。キュレムは一般ポケモンを中心に縛られやすいポケモンなので守るを使用できないと交代しない限りはそのまま倒されてしまう可能性が高いです。また、クロスサンダーで拘って相手の後続から電気技が有効でない相手が出てくるとキュレムが交代せざるをえなくもなりますが、ブラックキュレム構築が相性補完が綺麗になるとは思えないのでキュレムに有効な打点は後続にも一貫している可能性が高く極力交代をしたくはありません。そういった面で融通が利きづらい持ち物ではありますが、わざわざブラックキュレムを採用するからにはこのパワーを持たせないといけないかなとも思います。


○でんきのジュエル
クロスサンダーカイオーガを一撃にするための持ち物。拘り鉢巻に比べると、カイオーガを処理した後に弱くならない点や守るを使って縛り関係を隣で解除できたりする点が非常に動きやすいです。自由に技選択をしたいだけなら命の珠の方が良いと思うかもしれませんが、カイオーガを一撃にする火力を確保した後に耐久に努力値を回せることが電気ジュエルの強みだと思っています。サブウエポンのジュエルは腐る場合もあって好みでないという方もいるかもしれませんが、覚える攻撃技に優秀なものが少ないブラックキュレムにとってジュエル+クロスサンダーは「一度きりのタイプ一致威力100命中100」という強い技の感覚として使うことができるのではないかと思います。拘り鉢巻に劣る点としては、逆鱗を打たざるを得ない場面が増えるということでしょうか。


○いのちのたま
→拘り鉢巻で守るを選べない点と電気のジュエルで逆鱗の火力が上がらない点の両方のデメリットを解決しようとする持ち物。後で紹介するAS振り命の珠持ちを見ても分かりますが、攻撃に振り切っても微妙に火力が足りないためどちらかといえば拘り鉢巻と電気のジュエルのメリットの双方を欲張った結果の妥協アイテムという印象です。


こだわりスカーフ
キュレムが行動回数を稼ぐアイテム。この攻撃力を持ってして先手を取りながら逆鱗を適当に選んでいるだけでも一定の恐怖感はありますが、使う立場に回ると貴重な伝説枠のポケモンを使い捨て感覚で扱う上に逆鱗の計算の立てづらさが相まってわざわざ採用する理由を見つけるのが難しいような気がします。使い捨てるにしてもホワイトキュレム含めて他のドラゴンポケモンの方がやりやすいような気がします。


きあいのタスキ
キュレムが行動回数を稼ぐためのアイテム。しかし、わざわざ数値の高いキュレムに持たせるアイテムとしては勿体なく思います。ただでさえ綺麗な相性補完が難しいGSルールで苦手な相手の被りやすいブラックキュレムの入った構築では気合の襷を使って無理やり耐えなくてはいけないポケモンが存在するであろうことから一般ポケモンに回したいアイテムになると思います。


○パワフルハーブ
フリーズボルト専用アイテム。フリーズボルトの項でも書きましたが、1発の火力としては逆鱗より高いのでどうしても倒したい相手がいるのであれば選択肢の一つになるかと思います。


努力値配分の方針ですが、まず素早さを最速にすることはほぼ確定かと思います。対カイオーガだけを見据えても素早さ種族値90の最速は絶対に抜いておきたい数字でそこまで振るならばキュレムレックウザとの同速にも一方的に不利にならないように最速にするでしょう。
残りを火力と耐久にどう振るかがポイントになってくるかと思います。攻撃にすべて振り切るとバンギラスのような物理耐久の高いポケモンをごっそり削ることができるようになります。しかし、キュレムは素早さ種族値が95ととても速いわけではなく弱点も多いので先手を取られて縛られることも多々あります。なので、残りを耐久中心に配分することでそれらの攻撃を耐えて行動するチャンスを作ることができます。努力値を振らなくてもブラックキュレムには十分な火力がありますし、せっかくの高火力なのですから耐久に振らずに縛られてしまうよりも無理やり耐えて1回行動する方が総合的に見てダメージを稼ぎやすいと言えるでしょう。よって、今回は耐久に配分した型を中心に考えてみます。
クロスサンダーカイオーガに強いという点をとって特殊攻撃をメインの型にするという方針もありますが、特殊攻撃の火力が物足りないと感じることと「ジュエルクロスサンダートゲキッス1発」「A156ゴウカザルインファイト耐え」「C202カイオーガの雨75%しおふき2発耐え」のすべてを両立させたいことから攻撃にも耐久にも下降補正はかけたくなく個人的には取りづらい選択肢だと思います。


〜配分案1〜
○Bキュレム ようき テラボルテージ
201-200-142-126-111-161 H.4 A.76 B.172 D.4 S.252
げきりんクロスサンダーれいとうビーム、まもる@こだわりハチマキ
・A177コジョンドのけたぐり耐え
・A181テラキオンインファイト耐え(0.99〜1.00の乱数以外)
・C202カイオーガの雨75%しおふき2発耐え(最大乱数×1回以外)
・C226ミュウツーの命の珠波動弾耐え(0.96〜1.00の乱数以外)
・ドラゴンクローでH156B91ルンパッパ1発(0.85〜0.88の乱数以外)
クロスサンダーでH207B111カイオーガ1発(0.85〜0.86の乱数以外)
クロスサンダーでH141B81コジョンド1発
(・A199逆鱗でH181B111ミュウツー1発)
(・A196クロスサンダーでH192B116トゲキッス1発)

→縛られやすいキュレムがなるべく動きやすいように耐久中心に努力値を割いた型。電気のジュエルを持たせることも想定して技構成に守るを入れてはいますが、配分案2とドラゴン技の火力を比較するために持ち物を拘り鉢巻と書いています。拘り鉢巻のドラゴンクローは持ち物なしの逆鱗と同じ火力なので電気ジュエルで想定したい場合はそのような見方をすると良いかと思います。


〜配分案2〜
○Bキュレム ようき テラボルテージ
223-191-129-126-111-161 H.180 A.4 B.68 D.4 S.252
げきりん、ドラゴンクロー、クロスサンダー、ねごと@こだわりハチマキ
・A177コジョンドのけたぐり耐え
・A181テラキオンインファイト耐え(0.99〜1.00の乱数以外)
・C222カイオーガの雨75%しおふき2発耐え(最大乱数×1回以外)
・C184パルキアの亜空切断まで確定耐え
・ドラゴンクローでルンパッパに最低142ダメージ
・逆鱗でH175B111カイオーガ1発
クロスサンダーでH192B116トゲキッス1発(0.85〜0.88の乱数以外)
(・H223D110でC202ディアルガの竜の波動耐え)
(・H214D111でC226ミュウツーの命の珠波動弾耐え)

→配分案1に比べて特殊耐久をもう少し厚めに見た配分。特に耐久を調整したパルキアの亜空切断なら耐えるようになっているのがポイントだと言えるでしょう。しかし、その分火力面の乱数があやしいことになってしまっているのが悩ましいところです。特に、ホウオウやミュウツーまで考えると個人的には不安が残ります。


〜配分案3〜
○Bキュレム ようき テラボルテージ
201-222-120-126-110-161 H.4 A.252 S.252
げきりんクロスサンダーれいとうビーム、まもる@いのちのたま
・逆鱗でH175B111カイオーガを1発
クロスサンダーでH207B111カイオーガを1発(0.85〜0.88の乱数以外)
クロスサンダーでH192B116トゲキッスを1発(0.85〜0.86の乱数以外)
・逆鱗でB141クレセリアに最低140ダメージ(H227オボンクレセリアのHP総量が283)
・ドラゴンクローでB91ルンパッパに最低142ダメージ
・冷凍ビームでD110グラードンに最低159ダメージ
(・手助け逆鱗でH207B142ディアルガまで確定1発)
(・手助け逆鱗でH183B160グラードンまで確定1発)

ゼクロムの延長として一番最初に考えていた型。そのときに手助けと組み合わせることを考えていたのですが、手助け逆鱗が通れば等倍のポケモンはほとんど倒せるというのを分かっていただけるかと思います。命の珠を持たせた火力はおおよそ拘り鉢巻を持たせた配分案2と変わりません。技を拘り守るも選べないリスクこそ存在はしますが、キュレムというポケモンが大事にとっておくような性質ではないことと行動回数の確保のしやすさから同じ火力ならば耐久にも努力値を振ってある方が個人的には扱いやすいように思えます。


・・・とりあえず、私が陽気キュレムを育成したのでここまで。
本当ならば相性のいいポケモンを考察したり構築例を載せておくべきなのでしょうが、納得いく構築を組むのは難しくまだ先のことになりそうなので今回は載せません。


この考察を通して感じたことは、強さを知るための考察は大事だということです。
たとえば、少し前に全国ダブルではシュバルゴの使用率が一気に上がったようです。シュバルゴがブレイクする前、ローテーションバトルをやっていた際にシュバルゴが強いとオススメをされて使ってみましたがかなり強かったです。トリル対策として機能しやすいナットレイモロバレルに強い上にジュエル+虫の知らせのメガホーンの火力がメタグロスを倒してしまうくらいのもの、更には攻撃を耐えてトリックルームを返すこととでトリル対策をしようとしているクレセリアを一撃で葬ることができるという特徴を持っていることが分かりました。そして、これはクレセリアモロバレルの使用率が非常に高い全国ダブルでもシュバルゴが刺さっているのではないかと思いました。
負け惜しみですが、私がオフで使ってみようかと試行錯誤している最中にその前日の関西の大規模オフで優勝という結果を収めたことで一気に注目が集まったと思います。シュバルゴのスペックに気付き構築をまとめ上げて結果を残したということは素晴らしいことですが、シュバルゴというポケモンを思い出して考察をしっかりとしていれば急に大発見をしたというリアクションでシュバルゴを使い始める人はもっと少なかったのではないかと思います。


とても当たり前なことしか言っていませんが、強そうかもしれないと思ったポケモンや何が強いのかイマイチ分かっていないポケモンなどもしっかりと考察をしてみることがやはり大事ですね。