「侍戦隊シンケンジャー」を見終わって。

侍戦隊シンケンジャー」を視聴したので感想を。


特撮ヒーロー作品の中でも仮面ライダーはいわゆる平成ライダーと呼ばれるシリーズからすべて視聴しているのですが、戦隊ヒーローとなると観るのは04年の「特捜戦隊デカレンジャー」以来でした(そもそもその前となると「超力戦隊オーレンジャー」前後になります)。


全部で50話近くあるので最後まで視聴するには結構な時間がかかります。観始めてそこまで面白くなかったら困りますが、ひょんなことからシンケンジャーの設定はちらっと見たことがあったこと、主演が松坂桃李だということは知っていたこと、などの理由からそこそこ楽しめるだろうという推測ができたので、他人にオススメされてからすぐに視聴を始めました。


ネタバレを含む感想は続きから。



事前に私が知っていたのは「シンケンレッドの立ち位置が殿様である」ということ。
戦隊シリーズのほとんどがレッドを中心としながらもそれぞれ対等な立場にありますが、今回の作品では物語の始まりも、志葉家十八代目当主・志波丈瑠(シンケンレッド)が侍として外道衆(いわゆる悪の怪人の総称)と一人で戦う使命を背負っているところからスタート。その彼の元に代々レッドの家臣として遣えてきた家系の侍たちが集結するというように、レッドだけ別格の地位に就いています。


変身は「いっぴつそうじょう!」の掛け声と共にショドウフォンでそれぞれが纏うモヂカラの能力を書くスタイル。最初は「そうじょう」の漢字が分からなかったり、書道法だと思っていました((
変身後の口上に関しては、「シンケンレッド 志波丈瑠!」「同じくブルー 池波流ノ介!」と名乗っていくときの「同じく」という表現になんとなく違和感を覚えました。


序盤で新鮮に感じたことと言えば、イエローとピンクの配役もありました。
それまでは「イエローはクールなお姉さん」「ピンクはかわいらしい女の子」という印象を持っていたので、脳内では白石茉子がイエローで花織ことはがピンクのイメ−ジでした。最初は結構違和感があったのですが、次第に慣れていき、「優しいお姉さんの茉子がピンク、フレッシュなことはがイエロー」と印象が変わっていったのが個人的な経験として面白かったです。


レッドも殿と呼ばれるだけあって戦闘力も高いのですが、圧倒的に強いわけではなく。折神や劣化大斬刀を武器に徐々にパワーアップをしていきます。
しかし、折神を使いこなすのはレッドだけではなく、家臣の中で最も忠誠心の高いブルーも折神を捕獲します。ブルーに関しても、レッドとは対照的にクールなキャラクターというイメージでしたが、今回はどちらかというと三枚目なキャラクターだったのも新鮮でした。
グリーンや後に登場するゴールドもそうですが、シンケンジャーは侍がコンセプトのためか全員凛々しい顔立ちをしていていいですね。


各話は、基本的にはやはり1話完結。
外道衆の戦術は様々で面白かったですが、シンケンジャーを圧倒しながら水切れで三途の川に戻らなくてはいけない流れは茶番と言わざるをえなく、また二の目(巨大化)になると個々の能力は使わないことからあっさり倒されてしまいます。ロボットの戦闘も侍っぽく刀をメインの武器にしてはいますが、アクロバティックなアクションはできないため、観ていてワクワクする感じはありません。
こういった部分が戦隊シリーズにそこまで興味が湧かない主な理由になっているのですが、キャストの衣装を観察する楽しみがあった点は良かったです。シンケンジャーの場合は普段私服を着用していることが多く、自分の色に沿ったアイテムを纏いながらコーディネートが色々と変わっていくのを観察できるのは面白かったです。


敵キャラクターも結構魅力的だったと思います。特に、外道に落ちた十蔵と薄皮太夫の2人。
レッドと幾度も死闘を繰り広げた十臓、そもそも初登場時に「唐橋充だ!」という驚きもありました。彼は外道衆の中でもはぐれ外道と呼ばれる特異な存在で、元々は人間だった者が外道衆になったというものでした。外道に落ちる方法というものは分かりませんでしたが、レッドと十臓のやり取りは単純に強い者と強い者のタイマンの殺陣を描くことが多いので非常にかっこよく、家臣が気付けないような殿の心情に十臓が気付いたりと剣を振るい戦う者としての純粋な思いなどが描かれていたので面白かったです。
薄皮太夫と接点が多くあったのはピンクで、彼女だけ贔屓されているのは戦隊の立ち位置としては不思議な感じがしましたが、ピンクの白石茉子も家臣の一人でありながらも殿の胸中を心配する立ち位置にいたので、最後は寧ろピンクで良かったと思えるようになりました。


キャラクター贔屓(?)で思い出しましたが、強化フォームになるためにインロウマルというアイテムを使うのですが、このアイテムは一つしかないので、強化フォームになれるのは各戦闘で1人だけです。これは結構珍しいと思うのですが、1話完結の物語はキャラクターの誰かにクローズアップしているので、そのキャラクターが強化フォームで戦うという演出になる意味では面白かったと思います。


改めて感想をまとめると
・レッドだけ戦隊メンバーの中でも別格に強い設定
・レッドの松坂桃李を中心に凛としたキャラクターが多い
・カラーとキャラクターがイメージと違って新鮮
・衣装が私服なので変化を見ることができる
・1話完結といえどもたまに小さな伏線があってそれを回収している
・戦闘シーンの茶番は戦隊シリーズなので仕方がない
・折神は多すぎてロボットの名前が覚えられない((

といった感じでなかなか1話完結物語の続く戦隊物にしては最後まで飽きずに見ることができたので、結構オススメできる作品だなと思いました。


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さて、個人的な感想にはまだ続きがありますが、もしここまで読んでいただいて少しでも観てみようかなと思った方は以下の感想は見ずに実際に作品を視聴してみるのが良いかと思います。




















・・・まさか終盤の展開がこんなに熱いとは思っていませんでした。
戦隊シリーズには大きなネタバレが存在あまりないので、「シンケンジャーは終盤にどんでん返しがある!」とも言うことはできず、敢えて上では一言も取り上げませんでした。


間違ってここまで読んでしまった方もここで留まればまだ間に合います((



















さて。
なんとシンケンレッドがもう一人現われました。これまで殿と呼ばれて戦ってきた志波丈瑠は真の志葉家十八代目当主である志波薫の影武者役であり、志波薫が物語のラスボスである血祭ドウコクを封印する封印の文字の習得に専念させるための対応であったことが明かされます。
丈瑠がこれまで、なるべく皆を巻き込まないようにしたり、親しくなりながらも皆と一つ距離を置いて接していたのも、すべて自分が偽物の党首であるからでした。序盤に悪口を言ってダメージを与える外道衆がいて、丈瑠はそのときに「嘘」と言われて大きなダメージを受けていたことがありましたが、それがこのことだったのかと納得させられました。
本物の当主が封印の文字を習得して表に顔を出したので役割を終えた丈瑠はこれまでの時間はすべて偽りのものだったと悲痛な思いを背負い、純粋な剣士として十蔵と斬り合うなど外道に落ちかけたりもしました。


これまで丈瑠に命を預けて戦ってきた他の侍たちは丈瑠を思いつつも、真のシンケンレッドである姫と共に外道衆と戦うのが家臣としての務めです。グリーンの千明が「姫の性格が悪くないせいで家臣として戦う務めを放棄できない」と言っておりましたが、姫の付き人である丹波に性格の悪いところをすべて放り込んでいて視聴者が姫に対しては悪い印象を持たないように誘導しているのも良かったと思います。


ドウコクとの決戦で真のシンケンレッドによって封印に成功したと思いきや、薄皮太夫の体の一部を取り込んだおかげで封印に失敗。ここにもはぐれ外道である太夫の生き様を描かれていました。
闘いで傷ついた姫は丈瑠を養子として志波家に迎え入れるという子供たちが理解できるのか分からない行動に出ます。丈瑠の父親といる回想シーンでの表札は「志波」になっていたと思うのですが、彼は本当に幼いころから影武者としての人生を背負わされていたのかなと思わされたりもしました。



そして、臨む最終回のドウコク戦。
1戦目は丈瑠とドウコクをタイマンで戦わせるために、家臣全員が丈瑠を囲みながら道を切り開いていきます。序盤で丈瑠に対抗心むき出しであった千明でさえ、自分の役割を把握して丈瑠の盾になることを選んだことは、侍として家臣として1年間戦ってきた成長が伺えます。しかし、丈瑠の一撃ではドウコクはびくともせず姫の秘伝ディスクも破損してしまい敢えなく敗戦。記憶が定かではないですが、敗戦後の「お前たち・・・立てるよな」というセリフが第1話のセリフを彷彿とさせていてましたね。
そして、再戦。姫が気力を振り絞って作った2枚目の秘伝ディスクと丹波から切り札のディスクをもらっての再戦。変身後の口上を変身前の姿でやっており、役者が演じたことによって彼らの鬼気迫る思いを見ることができたような気がします。個人的にはこのシーンがトップを行く盛り上がりでした。
姫と丹波から授かった秘伝ディスクを使いつつ、ドウコクにトドメを刺したのは丈瑠・・・ではなく流ノ介でした。「殿と家臣という上下関係」「ドウコクはかつて自分を封印したシンケンレッドに対して強い執着を持っていた」ことを考えると、トドメを刺したのが丈瑠でないことは物議を醸すかもしれません。しかし、偽物の殿としての苦悩を背負いながら戦ってきた丈瑠が「偽物だろうと僕らにとっては殿様だ」と受け入れてもらえたことで、主従関係ではなく命を懸けて戦ってきた仲間としての関係を強めて、丈瑠も流ノ介をはじめ仲間を信じたという1年間の表れだと感じたので、意外な展開ではありましたが寧ろこれが良かったと思います。何より、1戦目はドウコクとタイマンを張って敗戦したのを2戦目では全員の力を集めて打ち勝ったという比較描写が第1幕からの成長だと思います。
あっさり敗れてしまった二の目の話はカットしますが、倒す直前の丈瑠の言葉にはちょっと感動してしまいました。。


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オススメされたときには「殺陣がかっこいい」くらいにしか理由を教えてもらえませんでしたが、戦隊シリーズにこれほどのネタを仕込んであったことに驚かされてました。先に述べているように、キャラクターやアクションもかっこよくて好きだったので、かなり満足度の高い作品になりました。
オススメしていきたい作品なのですが、このような裏設定が存在することすら説明してはいけないので、面白さを説得するには力がいるかもしれませんね((