BW2が発売されてからよく聞くようになった「ヤンキープレー」という言葉。
第5世代のうちに考察してみたかったことの一つではあったのですが、どうにも考えがまとまらないまま第6世代を迎えてしまいました。とは言っても考えた時間が無駄だったとは思わないこともあり、せっかくなので考えていたところまでで綴ってみようと思いました。
そのため、別の意見を聞いて「あぁ、なるほど」と自分の主張をくるりと変えることもあるかもしれませんし何かしら解釈や認識を間違っていることが多々あると思うので、もし読んでくださった方がいれば甘い目で黙って見逃していただくか鋭くツッコミをいただけると個人的には嬉しいです((
ヤンキープレー。
その言葉の示す意味は「突っ張ることが男のたった一つの勲章♪」という歌詞にある通りでヤンキーのように突っ張ってくることが語源でしょうか。
ポケモンにおける「突っ張る」の意味としては「交代せずに行動する」ことだと思いますが、交代が選択肢として脳裏をよぎる場面以外では使いません。そのため、突っ張るタイミングの前提として「そのターン先制で攻撃されていて行動ができない、もしくは行動に見合ったアドバンテージを得られない」というものがあるでしょう。
例えば、めざめるパワー炎のラティオスが相手のラティオスと対面した場面。相手のラティオスが普通に素早さを最速にしている場合は先制して流星群を打たれて負けてしまいます。しかし、相手の立場からするとこちらのラティオスが最速でないことは分からず、素早さ勝負になって負けた場合は一方的に不利になってしまうことから交代も十分に考えられます。そこで、こちらはラティオスを交代させずに行動させる・・・というのがありがちなものでしょうか。
BW環境ではジュエルアイテムの登場などで火力が相対的に向上したこともあり、下手に受けに回って予想外の火力で一方的に被害を被るくらいなら自分も強気に攻めに回って打ち合った方が負けにくいという傾向が強まったように思えます。
余談になります。
ヤンキープレーと聞いてなんとなく思い出したのは、セカンドプライス・オークションと呼ばれるオークションの形式でした。
オークションといえば、参加者でお互いに競って最終的に最も高い価格で入札した人が勝者としてその金額で落札する方式がまずイメージされるでしょうか。因みに、これはイングリッシュ・オークションという名称らしいです。それに対して、セカンドプライス・オークションの特徴は「封印入札方式」「セカンドプライス」の2つです。
「封印入札方式」は文字通りで、各参加者が入札する額を公開しない方式で、周りがどの価格帯で入札するかを見極めて入札額をする決定する必要があります。
次に「セカンドプライス」ですが、これは「最も高い入札額を提示した人が2番目に高い額を提示した人の入札額で落札することができる」という方式です。ゲーム理論に則ると、セカンドプライス・オークションでの最適な戦略は自分の商品の評価額を入札価格として提示するというものになります。評価額というのは簡単に言うと「この商品を手に入れるためならこの金額までは払ってもいい」という上限の額です。<セカンドプライスオークションでの最適戦略の話>
ある商品のオークションで自分の評価額は100とする。参加者は自分を含み2人とします。
(1.相手の入札額が110だった場合)
商品を落札できません。この相手に勝って落札するためには111以上で入札する必要があります。111以上で入札すれば落札には勝てますが、落札金額は110になります。これは「自分が支払っていいと思う上限」である評価額よりも高い金額を支払わなければならないという意味では損失と言えます。よって、自分の評価額以上に入札額を引き上げる必要はありません。
(2.相手の入札額が90だった場合)
商品を落札できます。もしこれがファーストプライス(入札額=落札額)だった場合は、91でも落札できたのに100で落札するため、その差分は損失となります。ファーストプライスで損失を最小限にするには落札できるギリギリの金額を狙う必要がありますが、封印入札形式であるためそれは難しいです。しかし、セカンドプライスであれば自分の評価額より低い入札額の相手に負けることなく落札できたときのコストを最小限にすることができます。
(3.結論)
セカンドプライスオークションでは自分の評価額を入札額とすることで、自分の評価額より高い額面で落札することなく、落札できたときのコストも最小限にすることができる。
・・・ということで、セカンドプライス・オークションは「自分の評価額を入札価格として提示する」のが最適な戦略なのですが、必ずしも参加者全員がそのように立ち回るとは限りません。自分の評価額を正しく決定できないプレイヤーもいれば、最適戦略に気付けていないプレイヤーもいるでしょう。
ヤンキープレーとセカンドプライス・オークションが似てると感じたのはこの部分で、「理論上安定的だと思われる立ち回りをする者にとっては縛られているのを無視して突っ張ってくる立ち回りや評価額より大幅に高い入札額で入札する立ち回りは刺さる」ところです。相手が理論上最適な立ち回りを選ぶことを読み切った上での行動選択と言えば間違いはないのですが、相手を選んで行わないと負けたときの損害が非常に大きくなります。
そのやや暴力的(?)な立ち回りの横行を止めるためには、突っ張る選択をした結果ハマらずに負けるという経験をすることだと思います。しかし、ポケモンの場合はそうならないでしょう。
オークションでは評価額・入札額の差分によって損害大きさが変わりますが、ポケモン対戦においての損害は1敗という事実だけであり、受けに回った結果負けても打ち合って負けても同じ1敗という事実に変わりはないため、ヤンキープレーが負けにくい戦略である環境ならば、それが通らなかった場合のリスクを加味しても突っ張る選択肢は有用であるように思えます。
BW環境で勝てるプレイヤーは少なからずどこかヤンキープレーをする人がほとんどだったように思えます。リスキーなことは間違いないですが、もはやすべての相手に対応することなどできないレベルに到達しているため、環境や対戦相手を考慮してある程度割り切って確率の高い選択を選ぶ必要性が高くなったということでしょうか。
そのため、BW環境で勝つ人はややリスキーな立ち回りが通って勝てた人、安定して勝ち続けられた人はどこでリスキーな選択をするべきかの判断が備わっていた人、ではないかなと改めて思いました。
個人的な経験を述べると、その割り切り方がものすごく下手で、後手に回って粘るものの結局負けるという試合が多く、BW2環境からは特にそれで苦戦していました。
また、3世代くらいからポケモンに触れていた私の個人的な考え方として「一発通せば勝ちというようなリスキーな選択は不安定なので、堅実な行動を積み重ねた方が安定して勝ち続けられる…のでそれができるプレイヤーが強いプレイヤー」というものがありました。しかし、BW時代に「リスキーな選択でも一発通せば勝ちなのだから、リスキーな選択を通すための努力を毎試合続けて勝ち続ければ良い」という逆転的な発想に出会ったのが印象的でした。
「環境読み」「今の環境にこのポケモンのこの型はいない」という話をよく聞くようにもなりましたが、これは「一度作成したら長く戦える環境に左右されにくいパーティが理想形」という考え方を持っていた私にはない発想で、過去の考え方に囚われず時代の変化に適応することが求められていると感じました。
記事を書くにあたって「ヤンキープレーの定義」「安定行動を謳いながらヤンキープレーを通されたら負けそうになっているのが安定と言えるのか」という話まで書ければと思っていましたが、そこまでは整理できておらず。
引き合いに出したセカンドプライス・オークションの話が長くなってしまいましたが、私の思考の整理であり似てると感じたということの記録なので見逃してください。。。
新作のXYでは火力的環境を作り上げた代表的なアイテムである各種ジュエルが登場しないようなので、ヤンキープレーの横行する時代でないことを嬉しく思いつつ勝つための思考をまた新たに切り替えていかないといけませんね(BW時代に記事をまとめられなかったのは残念ですがXYが発売したことでとりあえずオチができたのでよかったです・・・)。
因みに、冒頭で書いたラティオスの例。
仮に相手のラティオスの流星群でラティオスが倒されてしまったらハッサムを繰り出して剣の舞をする・・・という形で被害をケアできるようにすることが多かったです。相手が「竜の波動、めざめるパワー炎@命の珠」ラティオスなどの可能性もあると考えるとケアできませんが、そういう個体は少ないだろうと割り切った上での突っ張りなのでしょう。この想定だと相手側も最速個体ではないのですが、相手も同様に割り切って突っ張った場合・・・どうなるか楽しみですね。