2014年 春ドラマ感想

2014年春ドラマの感想です。


観ていたのは以下の5本。多いようにも見えますが、どれも作業をしながらの視聴になっていて、最終的には作業工数の方が多く「作業をするために観る(消化が終わってない)ドラマがない」という状況になっていました((


「MOZU Season1〜百舌の叫ぶ夜〜」
「SMOKING GUN〜決定的証拠〜」
「俺のダンディズム」
「死神くん」
アリスの棘



>「MOZU Season1〜百舌の叫ぶ夜〜」
都内で起きた爆弾事件、その裏には企業・殺し屋・警察…など様々な人間の意図が交錯していて、本当の真実が歪められたりぼやけていく中で「爆弾事件でなぜ妻が死ななければならなかったのか、ただそれが知りたいだけ」という純粋な思いで事件の核心へと迫っていくハードボイルドな主人公を描いた物語。
主人公の西島秀俊が好きだということもかなり大きな要素ではありますが、TBSとWOWOWの共同制作ドラマということでなかなか見応えのあるドラマになるのではないかと思い観てみることにしました。実際に観ていると力を入れていることもあってか脇を固める俳優も有名な方々が非常に多かったです。
まず一番意外だったことは西島秀俊がタバコを吸うことでした。西島秀俊に対して落ち着いた大人という印象が強かったためかハードボイルドの代名詞のようなタバコを手にするのが意外です(そう言うとハードボイルドな印象のない俳優がハードボイルドを演じることに違和感がなかったのかと問われそうですが)。主人公はハードボイルドなキャラクターというのはどこかでの文句として後々聞いたものだった気がするので、おそらく最初にタバコを手にするシーンを観たときは主人公にハードボイルドな印象など全く抱いていなかったのだと思います。
個人的にはタバコを吸うことがハードボイルドでかっこいいと思うときもありますが、最近では禁煙スペースが増えて、わざわざ移動しなきゃ喫煙できないようなので、そういう意味ではタバコを吸うことがかっこいいとあまり思えませんね。
最初に事件だけ起こしてその真相を少しずつ小出しにして進めていくため、伏線を張りながらも視聴者にとって意外性を与える演出をすることもできそうで、順当に作りこまれている感じはしましたが思ったよりも意外性というものはありませんでした。もちろん、視聴者の予想を裏切るような展開になる方が面白いですが、それを見誤っておかしい方向に話が進んでしまうよりは順当な展開を描いてくれた方が好みということもあり、最後まで主人公のキャラクターがブレることがなかった点でも個人的には楽しむことができました。
ドラマの中でのエリート刑事なら殴り合いもスマートに勝ちそうだと思っていたらアテナセキュリティから記者の女性を守る戦いでは意外にも互角の勝負を競り勝つ形でだいぶ現実的なのかと思っていたら、それまで圧倒的な能力を見せつけていた殺人鬼と黒幕の戦闘力が互角で鋭利な物が腹を貫通したにも関わらずまた動き出して・・・という辺りはノンフィクションっぽくあったりしたのがなんか不思議な感じでした。記者の女性と言えば、わざわざ有村架純を配役していた割にはあっさりと命を落としたのは描写的には良かった気がします。
SEASON2はWOWOWでの放送になり加入者を増やしたいという製作側の考えからすると全ての真相は最終回ではなくSEASON2以降に持ち越されることになります。わざわざ加入してSEASON2を観ようという意欲はないのですが、西島秀俊が演じるのを見ていて、「私がかっこいいと感じる男性は『爽やか、クール、ストイック』の要素を持った人だ」ということを整理できたので個人的には良かったと思います。


>「SMOKING GUN〜決定的証拠〜」
法や警察がわざわざ動かないような事件の依頼を受けて真実を裏付ける決定的な証拠を見つけて民間の科捜研を舞台に、事件に巻き込まれて恋人を亡くしてしまいその前後12時間の記憶を喪失している過去を持つ主人公が真実を調べて向き合っていくという物語。観るきっかけは非常に単純でヒロインポジションに西内まりやが抜擢されていたからです((
一風変わった主人公は少し後から登場する方が好きなので、主人公の登場シーンは好きでした。最初に痴漢の疑いを晴らす場面から「スモーキングガン」を口癖にしているようにも見えてしまい、これは毎回事件を解決する度に口上のように使うのではないかと想うと先の展開が思いやられたのですが、しかし、4話目くらいで所長が撃たれるなど主人公の欠落した記憶との戦いが意外にも早く始まりました。
終盤まで民間の科捜研にやってくる依頼者との物語を1話完結展開で描いて最後に記憶の解明をするのかと予想していたので、早い展開で主人公の過去に関する物語に触れ始めたことから1話ごとに依頼者と向き合いながらも意外と飽き飽きすることがなく観れた気がします。民間科捜研に軸を置いたドラマというよりは過去と向き合う主人公が民間科捜研に所属していたという軸のドラマになっていたような気がするので、そこは良かったと思います。
主人公の恋人が所属していた研究室で何があったのかが徐々に明かされていくものの当時の関係者の多くが既に亡くなっているとなると最終的に誰と戦うことになるのかが見えにくいなと思っていたところで、最終回の1話前で所長の娘が管理人さんに「今度うちのパーティにおいでよ」と招待してしまった演出で「これがラスボスか…」と分かってしまったところがちょっとあからさますぎだった気がします。その割にはラスボスもひょろいキャラクターで迫力が足りませんでしたね。
倉科カナが好きなことも何度か述べていますが、とにかく西内まりやが私のツボにハマっていて、毎回スカートが良いだの服装を楽しみつつポニーテールもかわいいとばかり思っていました(私が彼女に興味を持ったときはポニーテールじゃありませんでした)。主人公と元恋人がメインなので、ヒロインに抜擢されながら存在感は少し薄かったような気はしますが、今度は3,4番手くらいのキャラで存在感を発揮してほしいと思います。でも、主人公と恋愛関係なんかになるのは違和感しかないので、立ち位置としては良かったと言えるかもしれません。


>「俺のダンディズム」
お気に入りの女子社員が「ダンディな人」がタイプなことを知って、冴えない中年課長(妻子持ち)がダンディな生き方に目覚めてダンディなアイテムを入手していく過程とその記録を描いた物語。「ダンディズムとは痩せ我慢のことである」と阿久悠の言葉にあるようで作中でもそれが語られていましたが、ダンディズムな生き方に興味があるかは別として気に入られている女子社員を演じるのが石橋杏奈だったのでとりあえず1話を観てみようと思ったのがきっかけになります。
1話目から60万円の時計を買っているので相当敷居が高いのではないかと感じつつ、あんまり面白くもなさそうなのでと思っていましたが、たまたま時間が空いていたこともあって続きもいくつか観てみました。2回目以降は初回ほどは値を張らない、くらいにしか感じていませんでしたがお気に入り女子社員がストーカーの被害に遭っていることが分かります。それを小出しにされて、毎回のほんのちょっとだけの進展が面白く思えてきたのでそのまま最後まで視聴することにしました。
ダンディなアイテムを紹介するのがコンセプトでありながら有名ブランドの名前が覚えられません。私はカタカナを覚えるのが苦手であり、ポケモンも発売当初などは結構苦戦したりしているため、やはりブランド名を覚えることはできませんでした。そもそも私が買い物をするときもブランドにあまり拘りはなく、自分が良いと感じたものを買いたいという風にしか思っていないのですが、紹介される有名ブランドの粋なアイテムを眺めていれば自分がそれらのアイテムを手に入れようと思ったときに良いものや仮に大金を出してもこのレベルの物しか購入できないというラインを見たりもできるので、観ていて良かった気はします。
1話の流れは「課長のアイテムダメ出しで部長がダンディ→喫茶店のTVでダンディ講座視聴→マダムMのお店で起源紹介から妄想・ブランド紹介・オススメから購入→翌日の会社で『とってもダンディですよ♪』とお気に入り社員に言われる」というのが定着しています。この流れが決まっているので次回のアイテムが何になるかを予想するのも一つの楽しみでした。どうせ最後はスーツだろうと思っていたのですが、まさか最後が下着だとは思いませんでした。そして、最終回は録画を撮り損ねてしまったのですが、お気に入り社員との関係性がはっきりした後なので次回予告を見る限りはものすごく蛇足な感じがしました。
ところで、主人公のジェームスボンドの妄想の中で出てくる石橋杏奈を見ているととっても流暢に英語を話しているような気がしていて、それが最も気になりました。


>「死神くん」
死んだ人間の魂を天界へ送る管理をする死神の仕事の一環として、死亡予定者に余命を告げてから亡くなるまでの時間を付き添う死神と人間を描いたコメディチックなヒューマンドラマ。視聴理由は単純明快で「桐谷美玲が出演していたから」というものでした((
とりあえず、桐谷美玲演じる監視官の口調がきたなくて・・・そういうのはめったに見れないからと思いながらも、今を代表する若手みたいな桐谷美玲にこの口調の役を与えるということは世間的には桐谷美玲がそういうのが似合いそうな人物として思われているような気がして、なんとなく残念でした。
1話を観ていたところ仮面ライダーオーズの主演とヒロインがこんなところで共演しているではありませんか、という印象が強すぎました。2話目は録画を撮り損ねてしまいましたが、そこから最終回の9話までの各話がどういうストーリーだったかをなぜか珍しく覚えています。個人的に印象に残ったのは4話と6話でした。
第4話は死亡予定者リストに名前が載らなかったのでひとまず死神が現場に向かったものの、そのホテルの一部屋には政略結婚で別れる医者のカップルと救急の患者親子と逃げてきた殺人犯が一堂に会して火事により部屋に閉じ込められているという状況にあり、誰が死ぬのか分からない状態のまま悪魔も現れて・・・という展開でした。まずこのシュールな登場人物の集まり方がコメディっぽくてすごく面白かったです。結局、命を落としたのはその部屋にいたカップルのお腹の中にいた子どもという結末で、死を目前に固く結んだ決意で今後の人生を生きていく決心をした登場人物を誰も殺せなかったと聞くと聞こえはいいですが、お腹の中にいる子も立派な一つの命であることを考えると同等に扱われているような気はしませんでした。死亡予定者は名前で管理していたので生まれくる子の名前が載らないのには納得しましたが、そうすると同姓同名の人間がいてどちらが死ぬのか分からないという話があっても面白かった気がします。
第6話は子連れの結婚詐欺師とそんな彼に騙されながらも惹かれているキャリアウーマンの話。死亡予定日の前日に詐欺師が警察署に拘留されてしまい、娘が独りになるのを避けるために詐欺の結婚を本物にしようと都合の良いことを言うものの、強い女の生き方をうたう女性として「これが私の幸せよ」とその娘の母親になる決意をする女性が描かれています。彼女が最初に彼に惹かれたのは彼女に言い寄ってくる男たちとは違って彼には夢があったからということでしたが、そんな彼がなぜ詐欺師になったかは描かれてはおりませんでした。弱みを見せない女性を演じていた伊藤歩という女優を初めて知ってちょっと興味が湧きました。
死神にも寿命があって任務を失敗する度に寿命が縮まっていくのですが、最終的には自分の寿命よりも多くの人を救うためにと主人公の死神は死亡予定舎の運命を書き換えて、その連帯責任で監視官と一緒に消滅していきました(監視官が担当の死神を変えるという話をしていたので主人公は一人で消えるつもりだった)。人間が死んで魂が天界へ逝くというのも不思議な話ですが、死神は消滅したら生きている跡形も残らないため、人間が苦しんで死ぬのは遺体という形で生きた跡を残すためなのかもしれないとか思っていました。ラストシーンは死神と同じ容姿をした主人公と監視官が街で出会うというものでしたが、どういう意図でそういうシーンになったのかというのが個人的に消化しきれていません。釣り好きな大野智が釣り人を演じながら「(魚が釣竿に)引っかかっただけでも嬉しいね!奇跡だね!」(曖昧)というセリフを最後に残しましたが、これも何と掛けているのかが一瞬でピンと来ないままでした。



>「アリスの棘
将来の医療の発展の研究のためには実際の患者の多少の犠牲もいとわないスタンスの大学病院を舞台に15年前に医療ミスが原因で父親をなくした主人公が医師となって病院に潜入して、復讐を果たす物語。
ここまでの4作品が「○○が出演していたから」というのが視聴理由になっていましたが、この作品だけ別であらすじを聞いて面白そうだと思ったことがきっかけです。昔はあまり上野樹里が好きではなかったのですが、今は抵抗がなくなっていたので観ることにしました。
15年前の父親の手術に立ち会っていた1人をいきなり服従させたところからスタートしたので、10話近くある中でどのようにどういうスケジュール感で復讐をしていくのだろうかというのが気になりましたが、さっそく執刀医に対して復讐を果たしました。お腹に父親のイニシャルを埋め込むというその方法は復讐心を持っていないと思いつかないようなえげつなさを感じて、これ以降どのように形で復讐を果たすのかというのが気になったのですが、実は初回だけでした。意外と序盤の展開は早く、中盤では既にトップの相手の証拠探しを続ける展開で終盤には本当の黒幕が登場という感じでした。中盤で飽き飽きしないのは良かったですが、終盤は院内放送がされているにも関わらず黒幕が無警戒に真相を事細かに話し続けていたり、その裏でのうのと生きていたもう一人の黒幕が義理の父親だったりというのがあっけなかったです。
「のうのうと生きる黒幕」は展開上これまでに登場した人物であることを考えると養子にしてくれた父親しかいませんでした。義理の父親は物語に登場する人物の中では貴重なピュアな人間だったので意外性を突いたようにも見えますが、むしろこれは意外性を意識して道筋を踏み外してしまったように見えます。それも今まで良い人のフリをしていただけで最後に翻るのかと見ていたら思い悩み続けて生きていたらしいです。それにしては主人公のことを「古いアミーゴの娘」と陽気に語っていた言動などとマッチしないようにも思えます。ミステリーでよくある現場にいるはずのない人間が現場の状況についてうっかり口を滑らせたのが決め手にもなっていて、私もそのセリフに違和感を感じてはいましたが、その時点では「そんなところまで報道されてたんだ」と思ってしまったくらいには、義理の父親が犯人だとは思っていませんでした。また、これだけ入念に事件について調べてきた主人公が麻酔医だけ見逃していたのはなぜか不思議でなりませんでした。
15年間ずっと復讐しか考えずに生きてきた主人公でしたが、手段を選ばないでいたつもりが罪のない他人を巻き込みたくないと思ったり、盤台を前に復讐を焦ったりというところは人間らしくなっていました。有馬を裁いた場面ではナースの友人と協力して個人の復讐というよりも病院の悪事を明らかにするというスタンスへと変わっていたようにも見えて主人公の成長が伺えたので、最終回では西門の復讐を止める立場に回るのかと思いましたが、まあ当たったようなはずれたような。
なんというかちぐはぐな場面は見受けられたものの最後まで見続けられたのは録画していた分を一気にまとめて視聴していたからというのと、上野樹里が良かったからなのではないでしょうか。上野樹里があまり好きでなかったことから出演していた作品をあまり観たこともなかったのですが、こうやって凛としている姿は様になっていたと思います。また、オダギリジョーに関しても仮面ライダークウガでしか観たことがなかったのですが、あれから15年近いときが経っているだけあって非常にかっこよく様になっていたように思えます。
最後のシーンは復讐を終えた2人で乾杯をするというものでしたが、復讐を終えたことに乾杯するのなら初回くらいの憎しみを持ったまま完結させてほしかったですし、そうでないなら父親との思い出である桜の木の下やお墓などをラストシーンにしてほしく思いました。あと気になったのは、盤台悠馬の死がかなり軽く見られていることで、主人公が自殺を図るシーンでも「お前を庇って死んだ磐梯悠馬の気持ちはどうなる!」ということは触れられてなかったり、彼に想いを寄せていたナース友達があっさり主人公に協力したり、最後まで墓参りに行ったりすることもありませんでした。
物語の中途半端な感じは否めませんでしたが、謎だったのが一本に繋がっていく辺りや上野樹里オダギリジョーの良さを確認できたことなどを含めると個人的にはまあ見ても損はなかったです。