2014年冬ドラマの感想です。
「学校のカイダン」
「問題のあるレストラン」
「残念な夫。」
>「学校のカイダン」
名門校に編入した主人公はプラチナ枠と呼ばれる特別生徒から生徒会長の職務を押し付けられるも、特別待遇のプラチナ枠・体裁を大事にする教師・そんな環境に染まってしまった生徒の在り方をおかしいと思い、無力ながらも天才的スピーチライターの協力を得ながら革命を起こすかのように学校を変えようとする物語。
スピーチの言葉で訴えかけるという設定が珍しく面白そうだと思ったことと主演が広瀬すずであるということから観てみることにしました。広瀬すずのことはあまり知らなくて、いきなり主演を務められるような人物なのかどうかが気になったというのが理由です。
先に全体の感想を述べると、シリアスコメディとして考えたら面白かったのですが、ストーリーはあまり…という感じでした。メガホンを片手に生徒、生徒会、冴えない部活組・・・と1話目から色々な相手に対して言葉を投げかけていき、その言葉に心動かされた人々の行動が変わっていく。そのストーリー自体は悪くないと思うのですが、4話目以降からはプラチナ枠や教師たちまで50分の間で簡単に翻っていったので内容が薄っぺらく感じました。プラチナ枠という存在も小物の集まりという印象が強かったですが、まるで敵の幹部であるかのように君臨していた教頭先生も「論破してみなさい」と言うくらいに強い信念でぶつかりあった割には、くるっと何事もなかったように普通に接するようになると不自然極まりないです。
話の中で印象に残ったのは教頭に言葉を訴えかけていた場面で「幼いころは自由に夢を持つことが推奨されて夢を持てないことをあれこれ言われる、なのに高校生になったときにはいつまでも夢を見てないで現実を見なさいと言われる」という言葉でしょうか。よくあることではありますが、確かにそうだなと改めて思いました。あと教師にとっての1年と生徒にとっての1年の価値が違うミスマッチから学校に望むものが違うという風に感じたのも印象的です。
SPECシリーズでもそうでしたが、神木隆之介は最近こういう変人偉人みたいな役柄しか演じていないような気がします。俳優や女優に彼らを象徴するキャラクター像みたいなのができてしまうと新鮮味がなくて面白くないと思うことは多いのですが、どちらかというと非日常的な部分を感じさせるこういう役柄でキャラクター像ができる人物は貴重だと思うので、神木隆之介にはぜひこのままのキャラクターでいってほしいと思いました。
そして、結局広瀬すずに関して大抜擢されるほどの魅力がどこにあったのかよく分かりませんでした。ただ、今回の役の場合は「どこにでもいそうな不器用な女の子」を演じるので、それが自然に表現できていたという意味ではマッチしていたと思います。
>「問題のあるレストラン」
飲食業の大きな会社に勤めていた主人公だが、職場は男性中心社会で女性へのパワハラやセクハラがまかり通る場になっていて、新店シンフォニックをオープンさせるも反発して退職。その前に酷い仕打ちを受けて辞めていった友人の夢を叶えるために新店の前のビルの屋上にビストロ・フーというレストランを立ち上げて、それぞれ問題を抱える女性を従業員として誘いながら奮闘していく物語(正確な説明としては間違っているかもしれません)。
1話を見たきりで、そのままずっと録画で放置していたのを一気にまとめてみたのですが、特に苦も無く続きをそのまま見続けられるような内容でした。ストーリーとしては1,2話で「みんなでお店やりましょう!」と主人公が声を掛け、一緒に働くスタッフ一人ひとりの問題が1話ずつ解決されていく形で、最終的には大企業の新店に対抗していくというある意味王道的なものでした。しかし、演じるスタッフの多くは主演を務めることはほとんどないながらも実力のある(?)役者が多かったからなのかうまくまとまっているように思えました。
話として気になったのは最後にビストロ・フーが閉店になるところの展開が雑だったことです。客が落としたスプーンが屋上から道端まで落ちることはクレームになりそうですが、その後も細かいクレームを数多く受けたために閉店することになったというのは視聴者に対する説明としては色々と省きすぎなような気がします。
真木よう子が頭の良い強い女性を演じることは稀ではないと思いますが、クールに振る舞う役柄であることがほとんどなので性格がすごく明るい設定が珍しいように感じて、観ていて面白かったです。
東出昌大は料理の腕に自信があってプライドも高いキャラクターを演じていたため序盤は嫌な部分を感じることも多かったですが、シンフォニックがフーに押されてきてからは素直に負けを認めて再び前に進む姿勢になる謙虚さを持ったキャラクターであったため、それが非常にかっこよく思えました。ずば抜けた容姿を売りにしている存在ではないからなのか何をしてもかっこいいと思えるわけではありませんでしたが、良い容姿を持つ人が良い立ち振る舞いをしたらそれはすごくかっこいいのだという当たり前のことを再認識して、立ち振る舞いの大切さを確認できる良い機会でした。
あと印象に残ったのは松岡茉優です。彼女のことは知り合いが「あまちゃんに出ててかわいかった」と言っていた程度にしか知らなかったのですが、元々が無口を貫くような暗いキャラクターであっただけに終盤の方で普通に話をしたり笑顔を見せたりというギャップを感じてその成長を見守るのが楽しく、それをしっかり演じていたように思います。
脇役として出てくるキャラクターに仮面ライダー出演経験がある方がちょこちょこ出てきたり、臼田あさ美演じるキャラクターを中心にコメディとしても笑わせてもらえる部分がたくさんあって個人的には面白いドラマだったと思います。せっかくなので、もうちょっと登場人物の行動原理とかを考えて観る方が良かったかもしれません。
>「残念な夫。」
家事は妻任せで育児にも非協力的だった夫が離婚危機を感じて、どこか抜けていながらも強力する姿勢を見せて理想の家庭を取り戻そうと奮闘する結婚3年目子育て1年目の夫婦をコメディチックに描いた物語。
メインキャストが玉木宏と倉科カナで、個人的に倉科カナが好きでありコメディを演じるのも上手いと思っていたこと、玉木宏の声が好きであのメリハリのある声もコメディに合っていると思い、楽しいものになりそうだと期待ができたので視聴することにしました。
序盤は育児にあまり関心がないなどテーマもテンポも軽くコメディチックに見ることができていたので、離婚危機という言葉が出るほど深刻な問題に感じていなかったのですが、終盤には浮気未遂をきっかけに本当に離婚危機の状況に陥っていたので、序盤を観ていたときの考えが浅はかだったなと思いながら色々と考えさせられることも多く面白かったです。
たとえば夫の妻に対する「手伝おうか?」というのは悪気があるわけではないけれど、妻にしてみたら「子育ては妻の仕事と考えているからそういう言葉が出る」と聞こえるわけで、このセリフが出てきたときに「あっ、それはだめでしょ…」と思うことができていただけ良かったものの、実際の生活だったら無意識的にそういう軽率な言葉を使ってしまう場面なんていくらでもあるような気がしたので自分もそういうことをする可能性があるところに怖さを感じました。
また、物語は主人公の上司や顧客の妻が主人公の妻のママ友だったりとドラマ的な狭いコミュニティで3家族の様子が描かれていましたが、3家族とも違う形で家庭の在り方を考えさせられるところがあって良かったです。
全体的に軽く明るい雰囲気で進んでいた序盤に対して、終盤は離婚調停などで深刻なムードでしたが、玉木宏も倉科カナもそれをうまく演じ分けていた点も良かったです。声が良いとどういう展開になってもちゃんと雰囲気を作ることができるのがいいなと思いました。