2015年 夏ドラマの感想

2015年夏ドラマの感想です。


今期は最終回をリアルタイムで観たドラマが3本もあり、「最終回を楽しみにしているドラマが1クールに3本もあったことなんて初めてかもしれない…!」と思いましたが、よくよく考えると今までは録画を貯めておいて一気に観るスタイルをとっていたので、単に最終回を待つ楽しみ方を経験していなかっただけなのではないかと思いました()
視聴していたのは以下の5つになります。


「恋仲」
「ホテルコンシェルジュ
「探偵の探偵」
ラーメン大好き小泉さん
デスノート



>「恋仲」
ヒロインと高校までの幼馴染でお互いに想いを寄せていた"アオイ"という名前の青年、転校生としてヒロインに密かに想いを寄せていた"アオイ"という苗字の青年。想いを伝えないまま突然離れ離れになってしまい、7年後に再会した"アオイ"がヒロインと結婚する結末までを描く物語。主演は福士蒼汰でヒロインは本田翼。
ひとまず主演とヒロインだけで観ることを決めたものの、第1話はあまり面白くありませんでした。今後の物語の導入として7年前の高校時代のエピソードが中心となっていたのですが、青春を描くにあたって胸キュン的なものを狙って詰め込んだように感じたのが大きな原因で、アクセントなく飛び込んできたので却ってしらける感じになってしまったと思います。
福士演じる主人公の煮え切らない感じが観てる分にはツッコミたくなりますが、冴えないキャラをしっかり演じられている意味で好評価。欲目なのか本田翼が演技が下手と言われることも気にならず問題なし。ただ、もう一人のアオイ役である野村周平の演技(というか声)に違和感を感じ、結局最後の最後までその違和感を拭うことはできませんでした。
2話目以降は結構面白かったと思います。1話の時点では医者になった転校生の"アオイ"君エンドだと思っていたのですが、幼馴染2人が離れ離れになる前に送った手紙を隠し持ち、それを利用してヒロインと再会するなど思ってたより器が小さい・・・。主人公とやり直したいという思いを持つ元カノや医者"アオイ"君に思いを寄せる同僚も登場しましたが、彼女らは関係をかき乱すキャラと思わせてただただ良い人でした。この物語は3人の関係を誰も邪魔せず嫌われ者のキャラがいないのが珍しいような気がしました。
最終話目前で「プロポーズされて花火誘われた・・・どう思う?」とヒロインが主人公に相談するシーンがあり、最終話まで結末がもつれるのがドラマなので当たり前ですが、「『行くなよ』って言えないのか」という感じで観ていました。。「恋仲」の放送が始まったころに「キスマイブサイク」という番組にゲスト出演していた本田翼がKis-My-Ft2のメンバーにこんな相談を受けたときに「行かせる」「止める」かの二択を問うていたことがあったのですが、劇中にそのままあるシーンのことだとは思わなかったので、この時点でキャストはエンディングを知っていたのかな、と。
最終話も一部生放送の必要性は分かりませんでしたが、個人的には良かったと思います。ヒロインが必要としている言葉をしっかり投げかけた主人公がようやくカッコイイところを見せたところ、キスシーンが不意打ちの1回(+お返しの1回)ともう1回ちゃんとあったところ、妹の恋愛関係には白黒つけなかったこと、もう一人の"アオイ"が結婚式に遅刻しそうなので走る描写にヒロインの父親を連れてくるという理由がちゃんとあったこと、など。気にかかったのは主人公がヒロインを追いかけて富山に向かう決意をする後押しをしたのが、コンクールの審査員のあからさま過ぎるセリフだったことだけでしょうか()
式場で「(新郎の)アオイさんがまだ到着されてません」とどちらのアオイか臭わせるシーンがありましたが、冷静に考えると結婚してヒロインの苗字がアオイになっていたら「翔太さんが…」と言うので、そうは言わないよな・・・など思いましたが、ちゃんと主人公が報われるエンドになって良かったです。最後の最後にカッコイイ福士蒼汰を見ることができて、アクセントをつけるのは大事だなと思わされました。


>「ホテルコンシェルジュ
ホテル・フォルモントを舞台に、新人コンシェルジュの主人公をはじめお客様のご要望のために奮闘してトラブルなどを解決していく様子を中心にホテルで働く様々な人を描いた物語。主演は西内まりや西内まりやが好きだからというのは当然ながらホテルを舞台にしたドラマは珍しいのではないかと思い、視聴してみることにしました。
物語は1話完結。来客されたお客様のトラブルや問題を解決するために主人公がみんなを巻き込んでおもてなしをするという内容で、象徴的なのはコンシェルジュの綺麗な格好で従業員通用口を全速力で駆け抜けていく様と「おねがいします!」「無理!」「そこをなんとか!」という掛け合いでしょうか。
ホテルを舞台にしている以外はよくある物語だと思いますが、恋愛要素を最後まで組み込まずに純粋にコンシェルジュとして頑張る主人公だけを描いているというところがポイント高めです(「社会人になってから彼氏いませんから!」と明るく言う西内まりやに笑ってしまいました)。また、1話完結らしくゲストとなるお客様が登場しますが、毎回2組以上出てきて何かしら絡み合うようにできている構成なのは珍しいところだと思います。ただ、解決方法にあからさまなドラマ感があったり細かいところで不自然に感じる部分があったりしたところが勿体ないように思います。
ホテルの売上とブランド価値の向上を目指す経営陣も、「お客様個人に対してサービスの度が過ぎていること」「ブランドとして見たときにエレガントさがない」など主人公のコンシェルジュとしての適性を見限りましたが、懸命に頑張る姿で人の心を動かしていく主人公に心を動かされたのか、最終的には「プロのコンシェルジュになりなさい」(あいまい)と主人公に声を掛けます。ただがむしゃらに頑張るだけならやる気と気持ちがあれば誰でもできるので、それを表に出さないように振る舞うのがプロ・・・という意味で「接客は美しさが大事」というのはとても共感できます。
西内まりやの一般的なイメージがどういうものか分かりませんが「眩しい笑顔で周りを明るくできる」のが彼女の魅力的な部分だと思っているので、周りがそれに巻き込まれていく様は彼女の魅力を引き出しているように感じました。そして、ホテルの人間としての美観を損なわないイメージも両立させたいとなると彼女にとってはハマり役だったのではないかと思います。


>「探偵の探偵」
7年前、ストーカーに妹を殺された事件。そのストーカーも同時に命を落としたが、彼が生前に妹の居場所を突き止めるため「死神」と呼ばれる探偵に依頼をしていたことを知り、決して姿を見せない「死神」を突き止めるために探偵となった主人公の物語。主演は北川景子
昔は北川景子がそんなに好きではなかったのですが、最近はそうでもなくなってきました。また、アクションがあると聞いてシリアスな展開でかっこいい女性を観ることができると思ったので視聴することに。
主人公が「探偵を探偵する」対探偵課の探偵になったきっかけはあくまで手段の一つで、「蔓延る悪徳探偵を撲滅したい」探偵事務所の所長と「死神を突き止めるために足がかりを探す」主人公とで利害が一致したためです。物語は「序盤・中盤・終盤」という表現が似合うほど大きく3章の構成となっています。
1章は警察から捜査協力依頼を受けた民間探偵の自演・悪徳を暴く戦い、2章は死神が関与しているDV被害者フィルターの脱走計画を阻止する戦い、そして最後は2章で死神の大きな手掛かりを得て核心に迫ろうとする主人公と死神の戦い・・・という内容です。物語の核心に迫っていく過程が見どころだと思いますが、「主人公は独りじゃない」というのも背景のテーマの一つだったかと思います。
主人公にとっては妹を失った日から時間が止まっていて、死神を突き止めることは自分の問題であることと大切なひとを失いたくないことから、命を狙われることもある対探偵課の仕事を一人で請け負ってきました。そんな主人公にも、妹の知人でもあり新人として対探偵課に配属された後輩、利害の一致から共闘した刑事、と良き理解者が現れるのですが事件の最中で、後輩は人質として巻き込まれて大けがを負い刑事は命を落としてしまいます。意に反して周囲の人間が巻き込まれ死神を負う亡霊のようになりながらも、最終回で死神を殺そうとしなかったのは探偵の実務で感じた現実の辛さだけでなく妹の影を重ねていた後輩が傍に居続けてくれたことが大きく影響していると思います。
死神が誰なのかというのはDVシェルター事件の際に一見不自然な演出があったことから悟ってしまいました。最終回の主人公とのやり取りで、主人公が死神に感情的な言葉を投げたのは相手を油断させるための演技だと思っていたのですが、それは買いかぶりだったようです。究極の選択で実の姉を選択して自分が選ばれなかったことに涙を流していたり、立場が逆転した際に「悔しい?自分のバカさ加減が?」という死神のセリフをわざわざ口調まで真似したり、ナイフを向ける直前までは本当に感情的だったようですね。
死神との戦いの後に主人公がちゃんと笑顔を取り戻せるかというのは一つ大きな問題だったと思いますが、後輩に「ありがとう」と言う場面はクールな雰囲気を保ちつつも少し不自然に不器用な笑顔が見ることができました。最後のシーンは別の調査会社で悪徳探偵を追い詰めるシーンでしたが、法に触れる強引な方法はとっていないことや最後に「探偵の探偵だから」と軽く笑うところから彼女の大きな前進が伺えたと思います。
スキニーパンツ+膝上丈のカーディガンというのが主人公の基本的な衣装となっており、それを着こなす北川景子がかっこよかったです。そういえば、劇中では法に触れるような方法をとることが多かったので、身分を詐称して物件を借りたり、リモコンを分解してスタンガンに改造したり、と探偵ならではの知恵が発揮されていましたが、これらは意外と真似しようと思えば真似できるレベルのもので、フィクションだと模倣犯が出ないように「それは現実だとできないでしょ…」という手口だけ出すのが基本だと思っていたので、そういう面でも楽しむことができました。別に真似はしません((


>「ラーメン大好き小泉さん
ラーメンを食すプロとも言える女子高校生・小泉さんのラーメンへの情熱や拘りを描く物語で、二郎や中本など実在するラーメン屋さんを回ります。1話30分の全4話構成で主演は早見あかり
ラーメンは私も好きですが、ラーメン好き度を数値に変換したら相対的に平均値を下回る値にいるのではないかという程度なのですが、マニアックなお店などが出てきたら興味は湧くので30分なら観れると思い視聴することに。
1話目が二郎・2話目が中本、と有名どころから抑える流れで、ここから知る人ぞ知るお店が紹介されるのではと期待していたのですが、4話目を迎えるまで最終回だと知らずに見ていたので残念でした。有名どころを抑えるだけなら情報番組としての性質は持たなくて、実写化した意味がそこまでないのではと感じました。
子役だった美山加恋が大人になって・・・というのは「山田君と七人の魔女」でも経験しましたが、クールな小泉さんと対照に元気のある役柄だったので見ていて気持ちが良かったです。
そういえば、小泉さんはラーメンを食べに行くとき基本的にラーメンしか頼んでいませんが、「ラーメンと合わせてサイドメニューを頼むことについてどう考えているのか」みたいな小泉さんのラーメンへの拘りが分かるエピソード・・・みたいなのがあっても面白かったかなと思いました。


>「デスノート
「そのノートに名前を書かれた人間は死ぬ」というデスノートを拾ったどこにでもいるような青年がノートの魔力に魅せられて変わっていく様とそれを巡る攻防を描いた物語。主演は窪田正孝。原作も映画も見たことがなく特に観る予定はなかったのですが、たまたまテレビをつけた際に1話が放送されていて意外と面白そうだったのでそのまま視聴することに。
どうやってノートを入手したのか知らないままですが、父親を助けるためにノートを使って最初の殺人を犯してしまいます。しかし、最初の一歩を踏み出すとそこからは簡単に進むもので、自身の無力さから閉じ込めるしかなかった幼いころ抱いていた正義感に火が点いたかのようにキラとしてノートを使い続け、そんな危険なキラを捕まえる警察の対策室との攻防がメインとなっていきます。
原作との大きな違いは主人公が天才か凡人かということですが、主人公と対策室のノートを巡る駆け引きを見ているとただの凡人ではないです。劇中では「潜在能力が開花した」ことになっていた気がしますが、それだと原作通りに最初から天才設定で良かったのではないかと思うので、凡人設定にする必要性がどこにあったか考えるのが良さそうです。
その1つは「映画とは別の世界であること」を強調するためでしょうか。ドラマが終了した直後に映画続編(?)の告知がありましたが、その導入のためのドラマと考えるとあくまで「デスノートを巡る別世界の物語」でなければなりません。それはそれで納得がいくのですが、それならばタイトルに「アナザーストーリー」的な表現を入れるなどして別世界の物語であることを大々的に宣言した方が良かった気がします。
もう1つは個人的な印象が強いですが「ドラマという長い期間で物語を描く上で、どこにでもいる青年が闇落ちしていく様を描く方が魅力的に思える」ということでしょうか。原作や映画ではどのような終末を迎えたかを知らないのですが、「なにを考えているかよく分からない」と思われる側面もある天才青年よりも「力に溺れて夢の実現方法を間違えただけ」となる凡人青年の変化の過程を描く方が魅力的なように思いました。
そんな風に思っていたので、ノートが消えて記憶が消えるなら主人公の記憶もそのまま消えるのが「方法を間違えてもまだやり直せる」意味で良いなと思って観ていました。実際には主人公は叶わない夢と一緒に命を燃やしてしまったわけですが、父と兄を失った妹は描写されず救われないエンディングでした。そもそも妹はたった一度の人質としての役割しか持たなくて、原作に忠実にする以外に妹を存在させた意味をあまり感じていなかったのでせめて最後の描写に絡んでほしかったです。
原作を観たことがない割には「これはアナザーストーリーとして捉えれば面白い」と思っていたように結構楽しんで視聴することができました。このドラマを観て原作や映画に興味を持った私のような人間もいるはずですが、原作や映画との比較で重圧の大きい中でキラとして凄まじい気迫を演じきった窪田正孝に圧倒されました。