2016年 冬ドラマの感想

2016年冬ドラマの感想です。


5作品観てしっかり感想を書いた割には、全体的にあまり面白い作品がなかったです。。


犯罪心理学者 火村英生の推理」
「傘を持たない蝉たちは」
「武道館」
「スミカスミレ」
「フラジャイル」



>「火村英生の推理」
犯罪心理学者と推理作家のコンビが警察に協力して事件を解決する推理物の物語。主演は斎藤工でコンビを組むのは窪田正孝
局が違うのに特撮出身のゲストがやけに多いのが印象的でした。清水一希高杉真宙吉沢亮、佐野岳内田理央吉井怜梨里杏竹内涼真・・・最近の特撮で知っている人だけでもこれくらいはいたので、個人的には勝手に盛り上がって観ていました。というよりも、それがないと面白がる部分が特になかったというのが正直な感想でしょうか。
謎解きに関しては、推理として推測部分が多いなど少し弱い部分はありましたが、事件現場にほぼ必ずある不可解な点を犯罪心理学者らしく犯人の行動原理などと合わせて解き明かしていく様はちょっと変わった推理物と考えれば楽しむことができました。
主人公は「人を殺したいと思ったことがある」と口にしていて、物語の終盤は「人を殺してみたかった」と残虐な殺人をいくつか犯す少年や「(主人公に対して)あなたはわたしとおなじにおいがする」と言う革命団体の指導者と絡み合う展開となっていくのですが、ここの展開がよく分かりませんでした。
少年は序盤からキーマンのように描かれる割には、警察にあっさり引き取られて主人公と一度面会してそれっきり。革命団体の指導者はいわばラスボスなのですが、理解不能な思考は一周回ってただ幼稚にしか写らず最後まで何がしたいのか分からないまま。これらのキャラクターは主人公の中に眠る犯罪欲求を引き出すためと思えるのですが、「この世に美しい犯罪など存在しない、それを越えてしまう人を止められるように犯罪心理学者として携わっている」(曖昧)という類の台詞があったように、既に強い信念を持っていたので逡巡しているようには見えず、ラスボスの対決も主人公に人を殺す動機が全くないため一線を越えそうな緊迫感が全くありませんでした。
また、結構印象に残ってる残念な出来事として「山本美月が真犯人!?」というテロップが出されていた回がありましたこのテロップで山本美月の演じる役が容疑者の候補からはずれる確信を持ちますし、役名ではなく役者の名前を使う演出の仕方から脚本で勝負している感じを味わえませんでした。


>「傘を持たない蟻たちは」
NEWSの加藤シゲアキの短編小説集が原作。1話30分で全4話、主演は桐山漣。原作を読んだことがありませんが、この4話は「昔ブレイクしたもののその後は鳴かず飛ばずだったSF作家が突然現れた中学生のころの同級生を通して、もう一度書くことと向き合う」ことを描く物語でした。
どういう物語かあまり分かっていなかった段階で観た第1話がとても面白かったのですが、その後は期待した展開とは違ったので少し残念な感じでした。その第1話はと言うと、編集者から恋愛物を書けと言われてアイディアに悩む主人公が同級生の一言からの閃きで一夜で原稿を書き上げ、その原稿をドラマシーンとして主人公が演じるというものでした。その原稿の物語も「つれない部下を口説き落とすまでの駆け引きを主人公の語りで描くも、実はその部下は入社前から主人公のストーカーであり、シーンを巻き戻しにして今度は部下が計算通りに口説かれてたことを描く」というもので不意を突かれて楽しんでみることができました。
その案は恋愛ではなくもはやミステリーであることから編集者には没にされたものの、この原稿が原作の「短編」を指しているものだと思い、編集者に没にされながらも恋愛を巡る物語を毎話描いてくれるものかと期待したのですが。。2話以降は同級生との再会を通じて過去を振り返り、思いを物語にぶつけて編集者から称賛をもらうというややありきたりなストーリーでした。1話目で勝手な期待を膨らませていただけに、期待していない方向性に進み残念な気持ちでした。。
1話以外で良かったところをあげるとすれば、4話の主人公の過去の甘酸っぱい告白シーンでしょうか。「彼氏とかいるの?」「いない」「好きなひとは?」「まあ…」「どんなひと?」「ひとのためにケンカとかしちゃうようなひとかな・・・そっちは?」「・・・俺に勉強教えてくれたりするひとかな」みたいな。


>「武道館」
武道館ライブを目標にするアイドルユニットのメンバーのアイドル活動に関する苦労や悩みなどを中心に奮闘する様を描いた物語。劇中でもハロプロユニットのポスターやメンバーが登場するように劇中のNEXT YOUはつんく♂プロデュースとなっており、ハロープロジェクトのJuice=Juiceの5人が主演としてNEXT YOUのメンバーを演じます。
Juice=Juiceの5人のことは普通に知っていたので、NEXT YOUのセンターが植村あかりであることに新鮮さを覚えながら観始めました。序盤のうちは「ただJuiceに演技経験を積ませるためのドラマ」と思って見ていて、水着の話題に関しても「ドラマに便乗してJuiceに水着グラビアをやらせてJuice自体を話題にしたいだけなのでは」と。水着・握手券付きCD・傷害事件などで「大人の事情」に当人たちは悩まされながらも結局はそれを自己肯定する理由を作って乗り越えるしかない現実を描いているのですが、それを描くにはキャラクターへの深掘りが足りなかったように思えます。とはいえ、「アイドルに一番必要なのは個性」や「アイドルはアイドルを辞めた後も生きていかなきゃいけない」という台詞からはまだ本格的な感じが伺えます。
中盤以降はアイドルと恋愛という形でテーマもはっきりしてJuiceのセンターである宮本佳林演じる主人公に焦点が当たり面白くなってきた方なのですが、終わり方はイマイチだったと思います。武道館ライブを前にスキャンダルの発覚したメンバー2人が恋愛か武道館かを選ぶわけですが、その2人とも恋愛を選ぶ結末でした。演出的に2人用意したのは対比のためだと思っていたので、主人公は看過されたように見えてしまいます。また、ラストシーンは主人公が脱退する際のファンへのビデオメッセージとなっているのですが、ここだけ現実ではなくフィクションのように「これには多くの人が感動した」というのはには説得力を感じられませんでした。
10年後のNEXT YOUについてプロデューサーが語るときに「昔は恋愛するくらいでアイドル卒業になったものですよ」(かなり曖昧)というようなコメントがあり、アイドルは恋愛NGが基本という現実に何かを投げかけたその点は良かったです。


>「スミカスミレ」
幼い頃から実家を支え続けて外の世界を知らないまま生きてきた65歳の女性が、母親を看取った後に自分の人生を振り返って「人生をやり直したい」と願い、屏風に封印されていた化け猫の能力によって20歳の体を手に入れて、大学に通い青春・人生をやり直す物語。主演は桐谷美玲
「一応、桐谷美玲だからまあ・・・」というくらいにはストーリーに対して期待を持てていない状態で観始めました。若返る設定自体は結構珍しいとは思うものの、その主人公に何をさせたら面白いかというのが全くイメージできなかったので、何をさせるのかを逆に観てみたかったというのもあります。
地味で不器用な主人公がクラスの中心でみんなの憧れである男の子と恋に落ちる・・・とよくある少女漫画のような物語でした。毎回「これまでのあらすじ」が冒頭に入るのですが、それだけで物語のほとんどを語ることができていて内容は薄く、それこそよくある少女漫画の映画化のように2時間程度でサクッとまとめてしまう方が良いと思いました。また、この作品の原作の設定は大学生ではなく高校生らしいのですが、よくある少女漫画の映画化も「内容が薄かったとしても高校生という青春感を演出として見せられる」点があるから良いと思っているので、大学生でそれを演出するのは難しいように思います。
そういう意味では終盤でいきなり5年後の話になったのには驚いたのですが、特別なことはあまりなかった気がします。化け猫は主と契約を交わしたのだから何かしら悪魔であってほしかったのですが、誰のデメリットになることもありませんでした。また、70歳の姿に戻ってしまっても結婚したいと恋人は言ってくれるのですが、好きな人と長年過ごして一緒に年老いたわけではないのに変わらず好きでいられる気持ちを全然分からなくて逆に一歩引いてしまった感覚があります。しかも、その割には奇跡のように20代の姿を取り戻し、そのままの姿で生きていける結末になって結局何をどうしたいのかがよく分かりませんでした。
桐谷美玲だから観続けられた作品ですが、恋人役の1分半に及ぶかっこいい告白シーンは衝撃でした。「俺、前から如月さんのこと・・・」から始まったらそのままストレートに気持ちをぶつけそうなのに、次に出てきた言葉は「かっこいいと思っていて」。で、そこからどんなところがかっこいいかを語りつつ「でも時々危なっかしくて不安になるから守ってあげたい」(曖昧な要約)という流れに持っていき、「大事にするので…俺と付き合ってください」という展開。わざわざどこが良いかを語るまでもなさそうなかっこいい演出を見ることができた・・・これが唯一の収穫でしたね。


>「フラジャイル」
病院の中で患者には直接会うことなく治療前に診断を確定させるなどの病理診断を行う病理医。「100%の診断を出す」ことで医療の正義を貫く天才病理医の主人公を描いた物語。主演は長瀬智也。1話目の冒頭をちらっと観たくらいで継続して観るつもりはなかったのですが、面白いと聞いたので3話目から録画をして一気にまとめて観ました。
診察する、診断を確定させる、診断結果に従って適切な治療を行う・・・というのが治療までの流れであり、この診断を確定させるところにスポットが置かれています。診察は患者にとって身体的にも費用的にも負担が大きく、治療が遅れると症状が悪化する可能性もありますが、主人公は「確実な診断を出さないと適切な治療を施せない」という理に叶った視点で、医者の都合による診察や治療に対して「100%の診断を出す」ことで患者を救う物語になります。
なので、基本的には1話完結。見栄・プライドから来る自分の能力の過信や判断ミスを認められない・・・そんな医師に100%の診断を突きつける姿勢は一貫していてかっこいいですね。そういう爽快感だけでなく、医療の現場として重い命と向き合っていることが伝わってくる演出のバランス感は良かったと感じています。また、主人公は変人のレッテルを貼られていますが、その行動はいたってシンプルだと思っており、それに振り回される生真面目な役柄の武井咲が良かったです。
そういえば、劇中で「病理医は残業が少ない」と述べられておりちょっと意外でした。これは患者が診察に訪れるのは日中の間だからということでしょうか。病院の仕組みを全然分かっていないのですが、夜間などに緊急で来るかもしれない患者のために病理医は待機・・・というわけではないみたいですね。