2016年 春ドラマの感想

2016年春ドラマの感想。


「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」
不機嫌な果実
「お迎えデス。」
「世界一難しい恋」


「早子先生、…(略」を切ったことによって、「今期のドラマは結構充実している!」という気持ちで見続けられた点は良かったです。とはいえ、最終回に近づくにつれて徐々に雲行きがあやしくなる作品もあり。。
とにかく「世界一難しい恋、がめちゃくちゃ面白かった」の一言に尽きます。



○「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」
【主演】
中谷美紀藤木直人
【あらすじ】
高校時代は高嶺の花、現在は青山でクリニックを開業・・・美人で経済的にも裕福、けれど独身のアラフォー。高校の同窓会で「結婚できないんじゃなくて、しないの」と彼女は主張するが、再会した当時の想い人とは「友だちでいたい」と即刻宣言されてしまう。気付かない間に恋愛弱者に陥っていた彼女が割烹料理店の店主を務める毒舌男を恋愛アドバイザー(自称師匠)にして結婚できる女を目指す物語。
【感想】
原作は「スパルタ婚活塾」、同じ著者の「LOVE理論」(彼女を作りたい男性向け)を原作とした漫画は読んだことがありました。ハウツーの結論としては同じようなものを感じたものの、ドラマの締め方としては釈然としませんでした。
「は?」と言いたくなるような師匠のアドバイスを怪訝な顔をしながらも少しずつ取り入れて最終的に本命との関係を成就させる・・・その流れをベースにしつつ、師匠自身の挫折話を組み込んだり、最後のアドバイスが「テクニックは大事だがテクニックが全てではない」というものだったり、という部分は「LOVE理論」同様で男女問わず流れは共通みたいです。この作品も最終回で「結婚って頑張ってするものじゃない、自然とそうなるものよ」(曖昧)という風にありました。
その流れ自体は好きで終盤までは結構面白いと感じていました。ただ、本命との結婚よりも師匠といる時間を選ぶラストは個人的には微妙な思いでした(師匠が「実は俺も…」とならなかっただだけマシですが)。主人公が師匠との時間を選んだ理由は「素の自分でいられる」ことだと思うのですが、その価値がどれだけ高いものなのかを感じ取れる場面が少なかったところが最も違和感があって微妙な部分だと感じています。
師匠との時間は、正直に毒を吐く師匠に対してやり返すように毒を吐くものが多かったわけですが、高校時代・現在と普段の彼女を見ていると、不満を貯めこんだり気を引くために無理をして過ごしているようには見えず、師匠に対して毒を吐くのは悪ノリに乗っかって返すような一種のパフォーマンスに思えます。そういう中で、「毒をも吐ける正直な関係=素の自分でいられる」と言われてしまうと、不自然さを感じました。
そういうわけで、この不自然さのあるラスト一つでちょっと残念な印象で終わってしまいました。因みに、「恋愛弱者が本命にアタックするのは、仮の恋人を作って自信をつけてからにすべきだ」というのも男女共通でなんだかおもしろかったです。
そういえば、主題歌はいきものがかりの「Sweet!Sweet!Music!」で、「じょいふる」の時にも同じことを思ったのですが、いきものがかりのこういう系の曲はハメをはずそうとした割にはパンチ力が足りないような印象で、正直合っていないのではと思います。


○「不機嫌な果実
【主演】
栗山千明市原隼人
【あらすじ】
結婚して5年、夫はマザコンであることと極度の几帳面であることを除けばルックスも収入も合格点だが、自分に女としての関心がない。満たされない思いを満たすためは昔の恋人や新しく出会った男と不倫という関係に主人公が溺れて周囲の人間と複雑に関係が絡み合う物語。
【感想】
不倫ドラマを観たことなかったのでと思って観ましたが、なかなかに面白くなかったです。まず一つは、不倫の演出がただ体を貪るだけの恋愛であること。実際の不倫がどうなのかよく知りませんが、見ているだけだととてもチープに感じてしまいました。また、行動原理が分からない登場人物が多く、惹かれ合う理由が分からなかったり「本能がそうしたいと言っているんだからそうしてしまうのもしょうがないよね」という理性の弱さに甘えた姿勢さえ目立つと感じてしまいました。不倫の演出はともかく行動理由がしっかりしていればストーリーとしては成り立って評価できたかもしれません。
結構珍しいと思ったのは主人公が不倫に関して積極的ではないところで、自ら手を出したわけではなく流されてそういう関係になり罪悪感を抱えながらも心情的にはどこか満たされてるというキャラクターでした。そのため、主人公が何を考えているのかがよく分からず、物語の向かう方向が全然見えてこなかったのが序盤から気になっていました。2人と不倫をしましたが、どちらも男が「ただ身体の関係を持ちたいだけ」にしか見えなかったので、主人公の魅力がよく分からないままでしたね。
また、高梨臨演じる主人公の女友達は主人公の夫と不倫をしていたわけですが、普段のたたずまいから理性的なキャラクターなのかと思えば、突然家に押しかけたりと脈絡もなく理性を制御できないキャラクターに変貌していて色々と謎が残りました。不倫がバレた後も、主人公の夫を「女なめんじゃねーよ」と突き放した割には結局付き合っていたり、主人公の結婚式に参加して涙していたり、と行動原理が全然分かりません。
女友達と言えば、橋本マナミ演じる女友友達の夫婦関係は主人公に影響を与えたようにも見えず不要だった気がします。最終回では若い愛人にナイフで襲われていましたが、ヒステリックになったフィクションの人間はなぜすぐにナイフを持ち出すのだろう、と全然理解ができずにもはや笑ってしまいました。
そんな彼女たちが「男なんて結局大差ないって気付いた私たち、成長したよね」というハッピー(?)エンドを迎えるのがラストシーンというのにはある意味意表を突かれました。今のままだと、不倫ドラマが面白くなるための要素を見出せません(そういえば、不倫ドラマの定番である「昼顔」も2話くらいで観るのやめてしまってましたね・・・)。


○「お迎えデス。」
【主演】
福士蒼汰、土屋太鳳
【あらすじ】
論理的・科学的な思考でしか物事を判断しない主人公だが彼には霊が見える能力がある。死んだ人間の霊はあの世に逝くことになるが、この世に未練を残して成仏できない霊もいる…という仕組みがある中で、主人公は人間として霊界のアルバイトをして、不器用ながら色々な人と関わって成仏できなかった霊の思いを叶える物語。
【感想】
1話を見逃したので2話からスタートしました。基本的に1話完結なので、あまり深く考えずに観ることができました。そういう意味でも序盤は結構面白かったですが、終わり方を意識し始めないといけなくなった辺りから雲行きがあやしくなったと思います。
幽霊が見える・霊を憑依させる能力を持つ、そして霊の未練を叶えるために頑張るという設定は結構面白かったです。死んだ後どうなるかというのは興味深い話だとは思いますが、今回の作品では自分のことよりまだ生きている他人のことで未練がある霊が多いので、死んでしまったことに関してはしょうがないと前向きな姿勢の霊が多く、物語に暗い雰囲気はありません。そういう気持ちを察しやすいヒロインとやたら合理的な理由でしか動けない主人公とヒロインとの掛け合いも面白かったです。
ただ先述したように終盤に差し掛かり、ご都合主義の部分がすごく増えたような印象があって少し冷めてしまいました。たとえば、ヒロインの幽体離脱能力は彼女の想い人である幽霊に直接触れる手段を持つためのものでしたが、前触れなく身に付いた能力の割にはその展開にはあまり膨らみがなく、最終的には主人公のことを想う幽霊を憑依させるために使われる能力でしかありませんでした。また、生きている人間の魂(?)を引っこ抜いてあの世に連れていき、あの世の逝った人間と話をすることが最終回でありましたが、ここまで来ると都合の良すぎる設定が多いかな、と。また、最終回で幽霊が人間を殴るシーンがあるのですが、ここはせめて主人公の憑依能力を使ってほしかった・・・です。
土屋太鳳はこの作品で初めて見て、「鞘師里保に似てる…?」という雰囲気と「ショートパンツ+ロングカーディガン」という衣装が個人的に好きなことから好印象を持っていましたが、よくよく見ていると彼女はスカートの方が似合うのではないかと思ったりしました。福士蒼汰は「恋仲」でも思いましたが、序盤にそのビジュアルの割にパッとしない姿を見せつつ、最終回で成長した姿を見させる演出はギャップ効果なのか惹かれるものがありますね。
あとは主題歌の「僕たちの未来」が良かったです。家入レオはアルバム「LEO」以降全く聴いていませんでしたが、これを機に再び聴いてみようと思います。


○「世界一難しい恋」
【主演】
大野智、波瑠
【あらすじ】
ホテル経営会社社長の主人公は他者の評価には厳しく、社員の一度の小さな失敗すら許さずクビを宣告するわがままな性格。ある日、中途で入社した女性社員にクビを宣告しようとするもなかなか切り出せず、その理由が彼女に恋をしたからだと気付いてしまう。仕事は敏腕な傍ら恋愛経験は乏しく、社長という地位もある中で、恋愛関係を成就させようと彼女に恋に不器用に歩み寄っていく様をコメディチックに描いた物語。
【感想】
端的に言ってしまうと「今まで観たドラマの中でトップ3に入るレベルで面白かった」というのが率直な感想です。最近では、ちょっと恋愛が絡むシリアスではない物語をすべてラブコメディーと括ってしまう軽い風潮がある気がしますが、この作品は「これこそラブコメディー!」というのを感じる作品でした。
主人公は肩書きこそ社長ですが仕事以外の面では子供みたいにわがままで、強がって素直になれず不器用に接する様子が面白く単純に笑わせれくれます。少し良好な関係になっただけで「実はもうお付き合いをしているのでは?」とか、付き合ってキスする勇気がないから事故に見せかけるためにベッドを改造したりとか、父親がいるときは同棲に積極的でない彼女が泊まってくれることから父親に同居を持ちかけたりとか、そんな発想があるかと思わされる馬鹿っぷりです。でも、彼女のことを大切に思っていることは確かで、彼女のことで一喜一憂する姿は微笑ましく笑わせてくれます。そんな主人公の存在がこの作品の大きな魅力であるため、それを見事に演じた大野智が素晴らしかったです。最初に観たときは社長というイメージがありませんでしたが、後々これは大野智以外にハマり役がいないのではと思えました。
そして、波瑠演じるヒロイン。波瑠を見たかったのがきっかけでしたが、嫌味のない真っ直ぐな性格は波瑠のイメージとも合っていて良かったです。自分の意見ははっきり言いつつ他人のことをしっかり尊重することから、主人公のアプローチもちゃんと受け止めてくれるところが見ていて苦しくならないので良いですね。途中で「また出ていけと言われるんじゃないかと思うと怖い」と女の子らしい側面もありました。
また、忘れてはならないのが社長秘書の存在で、社長の小言・わがまま・相談を一つも流さず全て的確に返答するところでボケとツッコミがちゃんと成り立っていて、表情には出さないもの社長のことを最初から最後まで全面的に応援している存在で、恋愛展開もお笑い展開もこのキャラクターがいないと色々と収集がつかなかったと思います。
悪いキャラクターがあまりいない点でも見やすい作品となっています。意外と早く中盤くらいでお付き合いを始めることになってしまったので終盤で息切れしてしまうのではないかと少し不安に思いましたが、終盤までしぼむことなく温かい雰囲気が保たれていたので、最後まで観ていて非常に面白かったです。
物語の中で出てくる「いさなみすやお」先生の件や最終回のタメ口の件などは結構好きでした。