2017年春ドラマの感想。
「リバース」
「あなたのことはそれほど」
「ボク、運命の人です。」
○「リバース」
【主演】
藤原竜也、戸田恵梨香
【あらすじ】
主人公は大学のゼミ仲間5人で卒業旅行に行ったが、その旅行中に親友が車の事故で命を落としてしまう。残る4人は彼を死なせてしまったことを深く反省しながらも、飲酒していた彼に車を運転させたことは秘密にすることを誓った。
事故から10年後、彼らの元に「人殺し」と書かれた手紙が届く。脅迫者が誰なのかを突き止める中で、主人公は自分が知らなかった彼の側面や事故の真相に対面していく。
【感想】
原作は湊かなえ。既に別記事でも何度か書いてますが、湊かなえ作品が好きなので視聴するというとても純粋なきっかけです。あらすじからも分かるように内容は「THE・湊かなえミステリー」という感じです。過去の事件の関係者の嘘や秘密を少しずつ明らかにしながら、それらが最後に繋がって事件の全容が見えるという展開で、「誰が誰のために嘘や秘密を紡ぐのか」という人間のリアルな部分にスポットを当てた描写が特徴的です。
その作風が好きとあって、物語自体は面白く見ることができました。ただ、終盤の展開は意外とあっさりしていて物足りなさを感じる部分がありました。同じく湊かなえ原作の映画「白ゆき姫殺人事件」を観たときにも同じことを感じましたが、本当のテーマはヒューマンドラマにあるため、あくまで物語を展開させる題材であるミステリーを重視していないというところでしょうか。
飲めないお酒を強要する、猛吹雪の中で迎えを強要する、車お酒を飲んでいるのに車の運転をお願いする、それを止めることができず送り出してしまう・・・親友が命を落としたのは車の事故ではなかったものの、そうした彼らの行動は事件の加害者であり罪は罪。10年間、隠し続けてきた嘘や真実と向き合って、自分を変えるために毎日を進んでいくというのがメインテーマ。しかし、ドラマとしては続きが気になるミステリーを演出したいため、50分枠のラストが盛り上がるような作りをするせいか、物語のテンポの悪さを感じる部分はありました。
そういったところもあってミステリーとして観た場合には、終盤拍子抜けするでしょうか。例えば、主人公ら4人を脅迫していたのが仲間の親の議員秘書であり、親友の死に恨みを持つ人間ではないところにあっけに取られます。また、事件当日に親友が蕎麦アレルギーなことを知らず蕎麦入りのハチミツを入れたコーヒーを渡したことから「親友を殺したのは俺だ…」と気付いて最終回を迎えた割には、「彼が死んだのはコーヒーのせいじゃない」という可能性を早々提示したり、そうでないことが想像の領域のように描かれているところは腑に落ちないところがあります。
そういえば、スペシャルサンクスという形で窪田正孝と杉咲花が登場しましたが、これって嬉しいことなのでしょうか・・・?(
○「あなたのことはそれほど」
【主演】
波瑠、東出昌大
【あらすじ】
占い師に「2番目に好きな人と結婚しなさい」と告げられたことから、その教えの通りに2番目に好きな人と結婚してそこそこ幸せな新婚生活を送っていた主人公。ある日、彼女は1番好きな人である中学の同級生と偶然にも再会、そのまま一線を越えてしまう。しかし、彼もまた結婚して家庭を持っており、W不倫の関係が始まる。
【感想】
観る予定はなかったのですが、なんとなく1話だけ観てから最後まで通しました。最後まで観た割には、面白いともつまらないとも思わなかったので、本当に惰性という言葉がふさわしいでしょうか。不倫を題材にしたドラマはあまり好きではないのですが、この作品はよくある不倫ドラマとは描写するものが違うところが最後まで観続けられた理由になるでしょうか。
不倫ドラマの典型は「結婚した頃と変わって今の夫に物足りなさがある、その物足りなさを埋める不特定の誰かを求めている、濡れ場シーンの強調」だと思いますが、これらはどうも理性的ではなく行動原理が分からないため、ただ体を貪るだけのチープな演出に見えてしまいます。しかし、この作品では「今の夫にはある程度満足している、2番目な夫よりも1番目の特定人物に恋している、濡れ場シーンなし」という描写がされており、主人公の語りが多かったり心情にスポットが当てられている点は面白く思いました。
終盤に進むにつれて夫の狂気的な部分が描かれるようになり、彼がどう変化するかの方が見どころとなって主人公の影が薄くなってしまった感じはあります。また、主人公の不倫相手である夫婦の描写ももう一つのテーマだと思うのですが、彼らが最後に仲直りできた理由がよく分かりませんでした。仲里依紗演じる妻が正しく芯が強く鋭いキャラクターで、不倫した夫への言葉や対応が怖くもあったのですが、それがなんでキス一つ(出勤前早朝に実家まで毎日出向く誠意を見せたとはいえ)をきっかけに仲直りできたのか・・・思い返すと、二人のキスシーンは付き合う前でしか描かれていなかったため、そういう昔の思い出から本気が伝わったということなのでしょうか。
そういえば、主人公の不倫相手を演じた鈴木伸之という人を知らなかったのですが、「若くて爽やかでかっこいい、これは町田啓太同様にEXILE系だろう」と思ったら本当にその通りでした。
○「ボク、運命の人です。」
【主演】
亀梨和也、木村文乃
【あらすじ】
女運に恵まれずに生きてきた主人公の前に謎の男が現れる。神を自称する彼は「君と彼女との間にできた子供が30年後に隕石から地球を救う」と主人公の運命の人を教える。彼女とは全く面識がないつもりだったが、5歳のときに海で一緒に遊んだり、高校の修学旅行、今年の初詣…と実は人生で既に何度もすれ違っており、今も主人公の職場と同じビルの同じフロアの別会社で座席から壁1枚挟んだ真後ろで仕事をしていると言う。
最初は神の口車に乗せられながらも本気で好きになった彼女に対して運命に翻弄されながらアプローチをしていくラブコメディー。
【感想】
「運命の人は実は身近にいて、何度もすれ違っているのに彼らが出会うことはない」という類のショートムービーを昔何かで見た記憶があるのですが、それがもし出会うことができたなら…を体現したドラマと言えます。あらすじだけで期待を持てただけでなく、ヒロインが木村文乃ということで観ない理由がない作品でした。
一応、最後まで面白く観れた作品でした。しかし、それは私が木村文乃が好きだからという要因が非常に大きく、終盤は方向性が変わったのかあまり盛り上がりを感じませんでした。特に最終回に至っては、もはや総集編なのではと思うほど意味を感じない内容でした。
このドラマの一番良かったのは、都合の良い出来事を「だってそれは運命だから」とコメディチックに受け入れられる設定にあると思っています。ドラマチックな伏線回収を主とした展開が基本ですが、ただ綺麗に伏線を回収されても「所詮はフィクションだから」という思いが残ってしまいます。ところが、このドラマの場合は「運命だから伏線は回収される」と予め宣言をした上での展開なので、寧ろ綺麗に伏線を回収するところに芸術的なものを感じます。
序盤は心を閉ざしていたヒロインと主人公の間での噛み合わない歯車が些細なところでピタッとハマる展開がとても面白かったのですが、二人が恋人になった中盤以降は物事が滞りなく進んでいくため盛り上がりには欠けました(それまで凛としていたヒロインの木村文乃が柔らかい表情を見せるようになったので個人的にはそれはそれで良い)。また、謎の男を演じたのは山下智久でしたが、亀梨・山下の組み合わせに需要があるためか謎の男の正体や主人公との友情(?)展開が強く、ヒロインが置いてけぼりな感じがしました。
最終回にプロポーズをするのですが、ヒロインも割と気持ちが固まっていたため話がすんなりと進んで終わりました。最終回の展開が好きじゃなくて評価を落とす作品は今までにも多々ありましたが、最終回の展開が薄すぎて評価の変動に響かないタイプは初めてで不思議な感じでした。