映画「スマホを落としただけなのに」を観てきたので感想を。
そこそこ面白かったです。
当然、物語のネタバレを含むので内容は続きから。記憶違いがあったらごめんなさい((
○あらすじ
主人公の稲葉麻美には結婚を前提にお付き合いをしている彼氏・富田誠がいる。ある日、麻美が誠に電話をかけると知らない男が電話に出るが、どうやら誠がタクシーの中にスマホを忘れてしまいそれを拾ってくれたらしい。麻美がスマホを回収したことで事なきを得たつもりだったが、身に覚えのないクレジットカードの請求が来たり彼氏のスマホにしかないはずの写真が麻美に送られてきたりSNSのアカウントを乗っとられたり…とスマホを落としただけなのに生活が一変してサイバー犯罪に巻き込まれていくミステリー。
○所感
SNSで自分を発信したりECサイトで決済をしたり…と利便性が高まっていくスマホ端末がいかに個人に密な情報を持っているか、そしてそれが流出する危険性がどういうものなのかを示して警鐘を鳴らすかのようなストーリー。この「うっかりスマホを忘れる」は誰にでもあるような経験であり、観ている側としても他人事ではないリアリティを感じることができるミステリーになっております。
また、意外だったのはスマホを落としたのが主人公ではなく彼氏だったこと。もはや自分の分身とも言えるスマホは自己管理できていれば良いという話に留まらず、ネットワークで繋がる周囲の人間にも影響する(その逆で影響を受ける)ものだということを知らしめるようで、私もその意識は軽薄だったので妙に感心してしまいました。
○犯人
ミステリーと言えば犯人予想はつきものですが、そもそも怪しい人物が全然いなかったのであらかた予想がつきましたね。
犯人はSNS上で友達登録しているネットセキュリティ会社の知人の部下を謳う人物、誠のスマホを拾った張本人です。しかも、この男は主人公にサイバー犯罪を仕掛けていただけでなく、それと並行して描かれていた連続殺人事件の犯人でもあるという設定。主人公と犯人が対面してその狂気っぷりは伝わってきましたが、動機や事件の関連性で気になるところがありました。
犯人は幼少時に母親から虐待を受けて育ったことから、長い黒髪の女性に母親を重ねて慈しみと憎しみの双方の感情を抱くようになっていました。連続殺人の被害者5人のうち2人だけ犯人との関係が描かれましたが、どちらも風俗嬢と客の関係であり、彼女たちから拒絶をされたことから憎しみの思いが強くなったことが殺害動機であるように見受けられます。その一方で、主人公を誘拐した場面で「恐怖に脅えるその表情を見るのが快楽」と語っていたはずで、殺人に至る理由がちぐはぐなように思いました。
また、風俗嬢が殺害された事件については、田舎で暮らす親にスマホで音声偽造したメッセージを入れることで消息不明を悟らせないようにしてはいましたが、サイバー犯罪とはそれほど関連性はなく、この作品のテーマが「サイバー犯罪の行き着く先」を描くものだったと考えると、不要な設定だったようにも思います。
背景は疑問に残るものがあったものの、狂気に満ちた犯人を演じた成田凌は良かったです。
○結末
ごく普通のカップルが事件に巻き込まれた・・・だけかと思いきや主人公の過去には秘密がありました。本当の麻美は既に死んでいて、今いる麻美は整形して成り代わった山本美奈代という彼女の友人。境遇が似ていて意気投合した2人でしたが、麻美が株投資に失敗して美奈代名義で借金をしており、麻美が美奈代として自殺を図り美奈代は麻美として生きていく決心をした…というのが主人公が誠に隠していた過去。この設定は原作とは違うらしいのですが、なぜ違う設定を用意したのか意図は見えず、犯人が秘密に気付く要素を持ちつつ悲壮感を漂わせるために設けられただけで、それを語るのもも妙に駆け足なように感じました。
また、エンディングクレジットで北川景子の次に名前が出てくるのは千葉雄大であり、彼が演じる加賀谷は実はもう1人の主人公のような立ち位置で描かれています。ネットワーク関係の仕事から転職して刑事になった彼もまた幼い頃に母親から虐待を受けており、犯人と同じ境遇で育ちながらも対照的に育った彼が最後に犯人と対面するという側面も持つストーリーでした。連続殺人事件の設定が必要だなのは彼のためだったのですが、先述の通りサイバー犯罪にテーマを絞った方が良かったと思います。対照的な姿を描くなら、なぜ互いにネットワーク関係に詳しくなったのか何が彼らの進む道を分けたのかの描写が欲しかったです。
○総評
犯人や結末に関しては「もう少しこうだったら良かったな」という部分ばかり書いてきましたが、今まで観たことないテーマだったので新鮮で良かったという印象の方が強いです。
北川景子に関しては特に好きというわけでもなく、思い返すと彼女が主演している作品を何一つ見たことがなかった気がします。少し年齢を重ねた面影が映る場面もありましたが、逆にそれは「自分が昔から知っている有名人が自分と同じように歳を重ねていることへの共感なり親しみ」のような気持ち(感覚的には「同じクラスだったけど関わりがあまりなかったクラスメイトと同窓会で再会する」みたいな感じなのですが適切な表現が見つかっていない…)を感じて良かったです。序盤でそれを感じつつ、中盤恐怖に怯える展開を経て、終盤笑顔を見せる一連の過程を見たこともあって、すごく好印象でした。
○その他小ネタ
・麻美の背中にある3つのホクロ、プラネタリウムで見た夏の大三角形と関連するかと思ったけどしなかった
・既読にならない誠のスマホ、麻美「どうしたらいい?」友人「電話したら?」麻美「わかった、そうする」、それはそう
・拾ったスマホをカフェの店員に預けておきますね・・・って交番に届け出させないとダメでしょ。。
・犯人シーンのBGM、南国を思わせるもので残虐とのギャップはいいんだけどなぜそのチョイス?(メリーゴーランドが良かった)
・ネットワーク屋としての犯人、ネットワーク屋なのに「これで完璧に大丈夫」みたいなこと言っちゃうの気になった(安心させるためだからの表現)
・要潤、イケメンエリートサラリーマン役似合い過ぎ
・筧美和子、北川景子と同い年くらいと思ってたら全然若かった・・・。
・北川景子の恐怖演技、迫力あったけど同じような場面を経験したことないから演技難しそう
・泰造刑事、メリーゴーランドで揉み合いになるまでの援護が遅すぎる
・寝てる田中圭をバックにした北川景子の自撮りの笑顔がとても良かった