「キャサリン・フルボディ」の感想。

ゲーム「キャサリン・フルボディ」をプレイしたので感想を書きます。

 

○ゲームのあらすじ

32歳になる主人公ヴィンセントには5年付き合っているキャサリンという同い年の彼女がいる。まだ気楽な独身生活を楽しみたいヴィンセントだが、キャサリンの言動に結婚を仄めかすものが増えてきていて関係に頭を悩ませていた。

そんなある日、ヴィンセントは行きつけのバーで奇しくも同じキャサリンの名を持つ女の子と出会い、記憶が曖昧なまま一夜を共にしてしまう。浮気をしてしまった事実に焦るが、それ以来毎晩"落ちる"悪夢にうなされることになる。

それは「夢の中で死ぬと現実世界でも命を落とす」という呪いの夢であり、主人公は生きるために夢の中でひたすらに石段を登り続ける。

 

○ゲームの概要

・本作は2011年に発売された原作のリメイク版で、異なる要素として新たに3人目のキャサリンが登場する

・ゲーム要素としては「現実世界での恋愛シナリオ」「悪夢世界でのパズル」の2面

・現実世界ではキャサリンや友人たちと時間を過ごして、時折現れる選択肢によってエンディングが分岐する

・悪夢世界では石段を登るパズルをクリアする、失敗すると一種のゲームオーバーだが同じパズルをやり直すことが求められるだけ

・声優陣が豪華、主人公は山寺宏一、愛人キャサリン沢城みゆきだが、愛人キャサリンダウンロードコンテンツで10人の有名女性声優の中から好きな声を選べる

・キャサリンの区別はスペルでされる(恋人→K、愛人→C、少女→Q)

 

○大雑把な感想

 ・まあ面白かったけど、(自分が通ったのが)期待していたエンディングではなく物足りない

・パズルの操作性が悪い気がするので、Undo機能が非常に良かった

・Cキャサリンで理想の声を楽しむことができるが、私が一番好きなのはQキャサリン平野綾であることを悟った(

・ヒロインが3人いるので最低3周×{good, bad}くらいはやらなきゃいけない気がするが、そこまでする気力がなく1.8周で感想を書いている…程度

 

 

ネタバレを含むので、感想は続きから。

 

 

 

○シナリオについて

1周目は素直に「自分なら…」という選択肢を選び続けた結果、Kキャサリンとよりを戻して結婚するグッドエンドに辿り着きました。割と人並みの選択でしょうか(?)。

「結婚についてリアリティを突きつけられて考えさせられる場面が多かった」のは良い点でしたが、どちらかと言えば「回収されないシナリオが多かったこと」「Cキャサリンの正体」などイマイチな部分の方が目立ちました。

まず「回収されないシナリオ」について。悪夢を見させられているのはヴィンセントだけでなく周囲の人間も同じなのですが、彼らがどういう事情を抱えてどうなったのかが分からないままでした(私が回収下手なだけかもしれない)。例えば、友人のジョニーは「親友を裏切り続けている」と言うので「これはKキャサリンとの浮気ルートか」と思いきや、特に何も分からないままでした。また、Qキャサリンも記憶喪失状態で何か巨大な足音に追われたりヴィンセントが見る悪夢の中に現れたりしていたのに、彼女のルートを辿らないせいか何も事情が明らかにならないまま自然消滅する形でエンド。この辺りでモヤっとした感じがすごく残りました。

そして「Cキャサリンの正体」について。悪夢を見させていたのはバーのマスターで彼は人間ではない存在でした。そして、Cキャサリンはヴィンセントにだけ見えるサキュバスで彼女にいたっては実在する人物ですらありませんでした。人間がリアルに直面する修羅場を期待していただけに、彼女が実在しないと分かったときの気分は夢オチを見させられたときと近いものがあり、残念な気持ちでした(修羅場と言えば、キャサリンが刃物を手に揉める最も修羅場な場面もヴィンセントの夢オチでしたね・・・)。

もしかしたら別の分岐ルートを辿ると設定も異なるのではないかと思ったのですが、2周目をやりながらその様子がなさそうなのを察してそれ以降手が止まってしまいました。。

 

○パズルについて

難易度はNormalでやりました。因みに、チュートリアルでいきなり詰んでしまい仕方なく解説動画を見たのですが、なんと石を手前に引くことができるとは思いませんでした()

ゲーム概要を聞いたときから「修羅場ドラマなのになぜパズルを解かなきゃいけないのか」と組み合わせの意図が不明だったのですが、シナリオの続きを見るためにはひとまずパズルをクリアしていかなくてはなりません。そのためパズルと向き合うことになるのですが、ここで登り方のテクニックなどが少しずつ身に着くと逆にパズルをするのが楽しくなってきます。ここでこのゲームの本質が「シナリオと声優を餌にユーザを釣るパズルゲーム」であることに気付きました。

操作性が微妙に良くないのが気になりましたが、一つ前の動作からやり直すUndo機能があったおかげで気軽に石を動かして色々試せるところも良かったです。ただ、この機能によって各階層の最終に現れる敵の攻撃が全く痛手にならなかったので、その兼ね合いは難しいところでしょうか(そもそも敵の攻撃次第で登り方を変えなきゃいけないランダム要素がパズルに必要なのかどうか)。

 

○主人公ヴィンセントについて

ある意味これが一番難解でした。私たちはヴィンセントを通してシナリオを辿るわけですが、私が勝手に想像したキャラクターと劇中のヴィンセントの言動の乖離が大きく感じて、 選択肢を選んだ後の展開が思っていたものと違うものになることがそこそこありました。

そもそも「32歳で5年付き合っている同い年の彼女がいる」ということはお互い27歳のときに付き合い始めたわけで、相手の年齢的にもその段階である程度結婚のことは考えておいた方が良さそうですが、それを5年間先延ばしにし続けているしたところから物語が始まっています。なので、ヴィンセントがKキャサリンについてどういう気持ちでいるのかが分かりにくいです。また、Cキャサリンと一夜の過ちを犯してしまったことは仕方ないとしてその後キッパリ断ることもできず、二人に対してその場しのぎな言い訳で乗り切っている側面も見ると、だらしなさを感じてしまいます(Cキャサリンを手放しづらかった彼女がヴィンセントの好みだったからというのは後で知って少し納得)。

そんなヴィンセントですが、悪夢の世界ではヒーローのように称賛されており、そのことにすごく違和感がありました。異常な状況に置かれて絶望していく人が多い中で、生き残り続けることを諦めず、その言動で周りを励まして奮い立たせていく・・・ というのが日常の姿からすると納得感がありません。時折「昔からみんなの中心にいて…」と語られる場面はあるので、本質的にはそういう部分があるのかもしれませんが、個人として共感できないにしても言動の理念みたいなものを理解してプレイしたかったです。

 

○総評

シナリオに期待して始めてみたものの、あまりスリリングな雰囲気を味わうことができず。しかし、パズルはなかなか面白く、これをやるために後付けでシナリオが設定されているかのようにも感じました。

Cキャサリンの声は多数の選択肢から選ぶことはできますが、ゲーム時間の多くはバーで仲間と飲んでいるかパズルに挑戦しているかなので、実はそれほど登場回数が多くないような気もしました。10人分の声を録らなきゃいけないため当たり前ではありますが、人数減らして台詞を増やしてくれる方がやりがいはあるのかなと思います。

普通に楽しむことはできたものの、前作があって好評だったからそれをリメイクするものだと思っていたので、もう少ししっかりしたゲームなのかと期待していただけにちょっと残念な気持ちも残ります。