「特命戦隊ゴーバスターズ」の感想。

特命戦隊ゴーバスターズ」を観たので感想。


2012年放映のスーパー戦隊シリーズ36作品目で、私がちゃんと視聴する戦隊シリーズは5作品目になります。
戦隊シリーズは基本的に1話完結でその内容もお決まりのパターンで展開されていくので、終盤にあっと驚くような急展開がない限り観る予定はあまりないです(急展開があると事前に分かってしまったら驚きが足りなくなるというジレンマ)。しかし、この作品に関しては複数人からオススメだと推されていたので、視聴してみることにしました。


【あらすじ】
新西暦1999年。転送研究センターのメインプログラムであるメサイアがコンピュータウイルスに感染。意思を持つメサイアの暴走を止めるために、センターの研究員たちは建物施設ごと亜空間にメサイアを転送することで、メサイアによる世界の支配を防ぐことに成功した。しかし、通常の人間は亜空間に耐えることができず、亜空間に送られた建物施設から再転送されて戻って来れたのは特別なワクチンプログラムを持った子供たち3人だけだった。
そして、13年後の新西暦2012年。人類はエネトロンというエネルギーを利用して生活を営んいた。そこにメサイアの復活を目論む組織ヴァグラスがエネトロンを狙って亜空間から襲来。立ち向かうのは13年前に難を逃れた3人、彼らはゴーバスターズという戦士としてヴァグラスと戦っていく。


【感想まとめ】

  • 震災の次の年ということもあり、テーマはおそらく「キズナ、辛い過去を乗り越える」
  • 全体的な感想は「観終わった余韻は薄かったが、観ている間が面白かった」
  • キズナをテーマにした作品の中では、その向き合い方が好きな方だった
  • 陣・J・エンター・エスケイプのキャラクターが非常に良かった
  • これらのキャラクターが中盤で登場してアクセントとなるため、中だるみがなかった点は特に高評価
  • その反面、バスターズの初期メンバーである3人の印象がやや薄い
  • そういうこともあって、初期メンバーにフォーカスする終盤の展開はやや物足りない感じがあった
  • OPが2種類あるがどちらもカッコよくて好き


冗長になる部分は続きから。



あらすじも何も知らないままとりあえず観始めました。序盤の印象は良くも悪くも普通。
世界観の説明は新人オペレータとして登場した仲村への説明という形でなんとなく理解はしましたが、その彼女が担当していくメガゾード転送の仕組みなどは説明がなく、ここを理解するのに少し時間がかかりました。
一定時間までにメタロイド(怪人)を倒せない場合は亜空間からメガゾード(ロボット)が転送されて、メタロイドとメガゾードを同時に相手にすることになります。戦隊シリーズの典型的なパターンは「怪人を倒す→巨大化→ロボで撃退」なので、ここは違った試みということでしょうか。因みに、これを見た率直な感想は「最初からロボ使って怪人倒せよ…。」でした((
本作の怪人は地球上の無機物とメタウイルスが融合して生まれるメタロイド。エンターの「メタウイルス、〜する(動詞)、インストール」というセリフと共にメタロイドの名前がコールされて生まれるのですが、これはモチーフや狙いが分かりやすくて良かったと思います。
メサイアアバター的位置付けであるエンターのキャラクターが個人的にかなり好きでした。他のキャラクターとは一線を画する雰囲気を醸し出しており、その風格の通りゴーバスターズを出し抜く展開もありました。敵幹部は戦隊側に負ける展開が続いてキャラクターが台無しになっていくことも多いので、それだけで新鮮でした。


話が面白くなったと感じたのは4,5人目の戦士であるビートバスター・スタッグバスターが登場してからです。
陣の第一印象は「いい歳したギタリスト」という感じでしたが、よくよく見るとマジレンジャーでイエローだった松本廣也が配役だったのでちょっとテンションが高まります(マジレンジャーは最初の数話しか観てない)。
そして、陣のバディロイドであるビートJスタッグ。「Jは樹液のJだ」と言う辺り明らかに変わったキャラクターであり、人間ではなくバディロイドが戦隊の一員と変身するというのは今までにない面白い展開でした。
この2人が入ったことによって、コメディをやりやすくなったのが非常に良かったと思います。初期の3人はキャラクターが真面目で、ウィークポイントを使った形でしかコメディチックなことはできなかったように思うので、かなり幅が広がりました。


そして、もう一つが2人目の敵アバターであるエスケイプの登場。
エンターの風格については先述しましたが、それでも基本的にはメタロイドがゴーバスターズに倒されることになるので、キャラ1人で50話を乗り切るのはは難しいです。エスケイプはそんな中で現れた2人目のアバターであり、それがセクシーな女性となると目を離せません(?)。
この2人はそれぞれ悪役としてキャラクターが立っているだけでなく、中盤以降は彼らがゴーバスターズと交戦してアクションもこなすのでカッコよく映りますね。


30話付近で亜空間でメサイアを削除。宇宙刑事ギャバンとのコラボレーションを挟んでからメサイアカードを巡る第二部となりますが、ギャバン登場の時間設定は第一部から数ヵ月後とかで良かったと思います。
第一部でのメサイア削除はゴーバスターズにとって「13年ずっと助けたいと願い続けた自分たちの家族の消滅」でもあるので、時系列的には13年の思い・約束から立ち直るのが異様に早く見えてしまいます。
そんなこともあってなのか、エンターがメサイアカードを使って人間のデータを集め始める第二部はクライマックスにかかるまで少し下降気味でした。エンターの意図としては人間のデータを一つずつ蓄積していくことになりますが、メサイアカードから生まれた格が違うはずのメタロイドが毎回あっさり倒されていく(ゴーバスターズもパワーアップしましたが)だけで面白味がなかったです。


そうしてクライマックスを迎えるわけですが、全体的に若干物足りないです。
ただ、そう感じてしまう一番の要因としては、最後のメサイアカードの在り処について、レンタルDVDのパッケージでネタバレしてしまったことが挙げられるかもしれません((


とはいえ、結構気になる部分がありました。

  • クリスマスの決戦。まるで最終回みたいなスケールで描かれていて、残りの話が蛇足なように見えてしまう
  • エスケイプの終末。リュウジは彼女を時間を繰り返す人間のように捉えていましたが、バックアップから新規データとしてエンターが復元しているものを最後はそうしなかっただけなので、彼女が救われたようにも感じず、彼女を削除したリュウジの悲壮な思いも説得力がありませんでした。。
  • エンターのバックアップの削除。ヒロムを削除するわけにはいかないので陣を犠牲にする解決方法は擦り付け合いに過ぎず、その割に亜空間から帰還したメンバーはなぜか達成感に満ちた顔をしている
  • 序盤からかっこよく賢く強く描かれていたエンターは、人間のデータを集めて真の完全な存在になることを求めていたが、その先に力による支配しか見据えられていない気がして、少し小物感を感じてしまった
  • 最終回の名乗り。戦隊の定番は素面ですが、ゴーバスターズは面割れやマスクをはずしたスーツ姿の演出がそれまでに多かったため、特別感を感じなかった


そういう終わり方だったので、スッキリとはいきませんでしたが、良いキャラクターが多かったことから観ている間は楽しかったです。
あとテーマであるキズナとの向き合い方が結構好きでした。キズナをテーマにした作品は「仲間を想う気持ちが奇跡を起こして逆境を乗り越える!」ような「1+1=∞」を主張する作品が多いイメージでしたが、この作品は「自分にできることを一つずつこなして乗り越える、その範囲を広げるためにためにキズナを結ぶ」という「1+1=2」とリアリティのある描き方をされていたのが好印象でした。


主題歌については2種類のOPどちらもメロディライン的に好きでした。
第一部OPの「バスターズ レディーゴー!」は特に歌詞が特に好きです。戦隊楽曲の歌詞は「忍者」「恐竜」のような戦隊モチーフに焦点を当てた歌詞が多いですが、この楽曲は劇中の人物に焦点を当てています。Aメロの「すべてはあの日きっと始まっていた運命(デスティニー) 僕らは逃げたりしない 止まることなく未来を見た」はそれをかなり示していたと思います。
ただ、第二部OPである「モーフィン!ムービン!バスターズシップ!」は同じ作詞家が書いたとは思えない違和感が残りました。歌詞の中で「3+2人」や「5人のコラボ最強説」と5人チームであることを強調していましたが、言わば運命共同体のような初期バスターズ3人と比べると陣は一歩離れたキャラクターに感じてしまいます。また、ゴーバスターズは劇中でロボット整備士・オペレーターなど戦闘をサポートする人物を描写する機会が多かったので、戦闘する5人についてだけ強調するのは少し違う気がしていました。