ゲーム「春ゆきてレトロチカ」感想

「春ゆきてレトロチカ」をプレイしたので感想。

 

2022.5.12に発売した実写の推理アドベンチャーゲームで、既にプレイしていたへきさんから面白いと聞いて2023.12ごろにプレイしました。
私はSwitchで遊びましたが、PlayStation, Stream, Android/iOSでも遊べます。

 

〇大雑把な感想

・トータルでの感想は面白かった、単純に物語が良かった
・各章の推理パートは単調さがあるが、終盤の展開が熱い(?
・キャストに思い入れのある人が数名いるので、実写がマイナスにならなかった
・その他、人によってマイナスになりそうな点が自分には気にならなかったから評価高めなところはある

 

ネタバレを含むので、残りは続きから。

 

 

〇物語の感想

面白かったです、一番は最終章の流れを予想だにしていなかったことです。
まず一番は如水のトリック。これは実写でないと成立しない上手さへの関心と単純に驚きという2点で面白かったです。実は各章でヒントとなるシーンはあって確かに違和感は覚えていたのですが、赤椿の正体を探るところに話の軸を置かれていたので、深く勘繰らずにスルーしてしまったことや6章で一旦事件が解決したように思わせるところに上手くやられてしまったと感じます。
また、その後の佳乃の話。これもまた如水のトリック以上にはないと勝手に思わされてしまったところに来たので衝撃でした。また、ここまで来るとただ単純な意外性だけでなく、如水と佳乃の関係性の見え方が変わってくるのでドラマとしても面白かったです。

 

〇ゲームとしての面白さ

人によっては結構マイナスになりそうな要素がたまたま自分にはそうならなかったので、楽しくプレイできた感じがあります。
まず、このゲームのプレイ時間の大半は物語ムービーを眺めているだけになります。倍速再生やスキップがないのでテンポの悪さを感じる側面はあると思いますが、私の場合は思い入れのあるキャストが数名いたので、その演技を見るのが一つの楽しみでした。また、彼らがロールプレイなのは個人的に良かったです。悪く言えばコストを抑えるための役者の使い回しではあるのですが、実写推理物にありがちな配役から犯人を予想するメタ的な視点を気にしなくて良いのが良かったです。
推理については、結構こじつけが強いのでまずそれを許容する必要はあります。事件によっては主人公が手記で読んだ想像を映像で再現しているだけのものもあるので、言葉尻を都合よく責めたり証拠が決定的とは言えない場面もあったりします。その上で難易度はそこまで高くないので、推理を楽しみたい人からすると物足りないかもしれません。個人的にはくだらない仮説が好きで、例えば『木乃伊が呪い殺したのではないか』とか普通にしていたらわざわざ思いつかないので、すべての可能性を見落とさないようにと言いつつも自分はそれをできていないのだと感心して、どんな仮説が出てくるかが楽しみの一つになっていました(これも人によってはテンポロスを招く要因だと思います)。

 

〇クリア後コンテンツ関して

もう少し充実していても良かったのではないかと思います。
6章をクリアした後タイトル画面に終章が現れる・・・ので、ある意味クリア後コンテンツなのかもしれませんが、終章をクリアしても特に何もありません。章のキャプチャに飛ぶ機能も弱いので、部分的に見返したい場面があっても謎を解いたり映像を見なくてはいけないのが不便だと思いました。
また、DLCが存在していますが、800円する割にキャストのインタビューしか収録されていません。物語の核に触れるのを避ける意図は理解できるのですが、せっかくならメイキングやNG集など映像特典だけでももう少し豪華にはできたと思います。また、肝心のインタビューも人物ごとではなくインタビューの質問ごとになっているため非常に見づらいです。
個人的には推理失敗パートがここに揃って欲しかったです。本編で敢えて失敗を選んで映像を見たい気持ちはあるものの、無駄に評価が下がったりそもそも戻ってくるまでに時間がかかったりして、全部見切れなかったので特典としてまとまっていて欲しかったです。

 

〇思い入れのあるキャスト話

平岡祐太

・昔から顔がめちゃくちゃいいと思っている
・雄々しさのバランスが絶妙に良い、水嶋ヒロほど強くなく岡田将生ほど弱くないみたいな(?
・私の思うカッコいい男性3要素は「爽やか・クール・ストイック」で、永司と如水を通じてその2面を楽しむことができた

松本若菜

仮面ライダー電王から知っている、最近遅咲きでブレイクした女優
・特撮出身の女性はそのままブレイクに繋がらないと家庭を持ったりで芸能を引退してしまうケースが多い中、ずっと続けてそれが実ったと考えるととても感慨深い

■佐野岳

・こちらも仮面ライダー鎧武から
・友人間での「佐野岳が禁断の果実を巡って争うゲーム」というキャッチコピーが面白かった(

 

〇各章の感想メモ

 

■第一章 うろつく木乃伊

・直前にも書いたが「佐野岳が禁断の果実を巡って争うゲーム」と聞いていたので、ようやく始まったなという感じ
・この章の推理はとても簡単だった、簡単過ぎて違う可能性があるのではないかと思ってしまったほど(
・競売主催の「頼れる男は軍人の君しかいない!」の台詞、軍人って言葉を使っているせいで納得してしまったので上手い


■第二章 論理の路はつながらない

・突然の梶裕貴で笑った(
・ロープとタンクを使用した形跡からナイフを突きさすほど腕力がない人物が犯人になるとは推理できた
・ただ、二択を絞る強い理由がなく、1章で佐野岳が犯人だったからとメタ的発想で事件を解決した
・「あなたは鼻が敏感でだとすると血の匂いに気付いていないのはおかしい」というのは証拠としてはちょっと弱い
・永司の着物と羽織がカッコいいので参考にしたい(

 

■第三章 巡情エレジー

・かな子の人知らない…と思ったらこれが麻倉ももらしい
・失言があったので脅迫者の特定はすぐにできた
・犯人は彩綾なのだろうと思っていたが、その狙いが自殺だったことには進むまでに気付けなかった
・彩綾のレクイエムを歌いたいという気持ちがさっぱり分からなかったが、後に赤椿の「殺し」「弔い」が両立している話を聞いてなるほどとは思った
・因みに、火を苦手そうにしていたお客さんのことは後もちゃんと覚えていた


■第四章 亡失の川

・終わるまで香川愛生だと気付かなかった(
・女将が如水と佳乃に女湯の案内をしていることに疑問は持ったが、スルーしてしまった
・これも推理は簡単で、アリバイトリックをする必要性から犯人に辿り着いた
・仮説にあった「重しになっていたやかん(?)を川沿いにいる人間に投げつける」が個人的には爆笑ポイント(
・もう一つ「赤椿は狸が怖くて部屋に入れなかった」も笑ったが、「赤椿は恐れるものがあって部屋に入れなかった…ってこれだから正体はあの人じゃん」とヘンテコ仮説がなければ気付けなかったから逆に面白かった


■第五章 唐繰回牢

・唯一行き詰まった章だった、具体的には牢の鍵を開けるところ
・如水の部屋の数字がどうなってたか知りたいのだがだが、会話ログを見る方法がなくて困る。。
・仕方ないのでヒントを見てみたら…まさかの直接的に答えを提示してくる形で笑った(
・クリア後に戻ってきたが、やはり如水の部屋の数字が分からないとクリアできない模様で不親切設計だと思った


■第六章 赤い椿

・赤椿は火が苦手なことが4章までに分かり、5章で火を灯す描写があったので消去法で現代の正体も分かった
・火が苦手な理由は家を燃やされた側だからだと思っていたが、そうではなかった模様
・想い人からもらったトキジクは想いの証ではなく研究の人柱としてというのは切ない

 

■終章 春ゆきてレトロチカ

・2章で弥宵が誰を守るために行動していたのかの謎が残っていた
・伊夜の「握手会のときに如水さん」を見た、ですべて繋がった
・思い返してみると、如水が男性っぽくないと思える場面はいくつもあった
・更に明里の行動はずっと怪しく、5章で火に近づけることを見るまで彼女が赤椿だと疑っていたので、その違和感もするっと解けた
・先にも書いたが、ここを最大のトリックと見誤ったために弥宵が佳乃だと名乗った瞬間にまた驚かされた
・確かに言われてみれば屋敷に来た直後に「お久しぶりです」って言っていた
・彼女たちは不老であって不死ではない…とはいえ、これ以外にもっと良いエンディングはなかっただろうか
・如水と常盤子は不老を呪いのように感じていたので、死は彼女たちの負を断ち切る善な選択であるという見解は理解できる
・一方で、佳乃は不老を如水から与えられたものとポジティブに考えてここまで生きてきた、これまでも孤独であったがこれからも孤独で、その際何を希望に思って生きていくのだろうか
・とはいえ、佳乃と如水が未来に希望を持って生きていく展開になると常盤子が不憫である、これは非常に難しい