「ウルトラマンネクサス」の感想

ウルトラマンネクサス」を観たので感想。


特撮作品はよく見るものの、ウルトラマンシリーズは幼いころ以来観たことがありませんでした。その理由としては以下の2点が挙げられます。
・物語が1話完結ベースで、お決まりの展開になりがち
・他の特撮と違って敵が人間体じゃないので、流れるようなアクションになりづらい
しかし、「まどマギ仮面ライダー龍騎とネクサスを足していくつかで割ったような作品」というツイートを見たことがあり、それをきっかけに視聴することにしました。


全体的な感想としては「特撮が相当好きな人にはオススメしてもいいかもしれないが、そうでない人には他作品をオススメしたいかな…」という感じでした。
ネタバレを避けるために詳細は続きから。



先述のツイートで、シリアスな雰囲気で主人公がジレンマに葛藤する物語を期待していましたが、まどマギ龍騎ほど板挟みになっているようには見えず。そういう期待値で観ていたところがあり、ウルトラマンシリーズの好きじゃない部分が解消されているわけではないので、評価が高くなりませんでした。
DVDの特典にあった制作会見映像での「テーマは絆」も意図を理解するまでに時間がかかり、主人公である孤門の成長を描くことが大きなテーマであることに気付いたのは最終話直前でした。


まず最大の特徴と言えば「主人公がウルトラマンの変身者ではない」ことでしょうか。
第1話は主人公の孤門がウルトラマン変身した姫矢に助けられることから始まります。とはいえ、「最初から最後まで変身者が一人なのなら、わざわざ孤門を主人公に置く理由がない」と思ったので後々変身能力を引き継ぐような想定ではいました。
また、第1話のエンディングの孤門の語りが「これが僕と彼女の最初の…」(あいまい)と西条凪が今後重要な人物であることを伺わせていたことから「過去に何かがあった」というより「これから何かある」という期待感を持っていました。そして、西条の年齢感が読めない・・・。
因みに、弓矢に喩えて弧門と姫矢なのかと思っていましたが、孤門の字は「弧」ではありませんでした。


あとの序盤の感想としては

  • ナイトレイダーにスペースビーストを殲滅する能力があるらしい
  • ナイトレイダーの出動、リフトが上に登りますが初見で脳内では降りるものに見えていた
  • 物語の最初から恋人がいると「このひといつ死ぬんだろう」となってしまうこの思考((
  • B'zをカバーしたようなOP、これは結構好き
  • EDのメロディラインの不自然感はもはや作曲した三枝夕夏のセンスを疑うレベルだった


そんな感じで観続けている間に、恋人を亡くしたり(最初から死んでいましたが)精神的にダメージを負った孤門も少しずつ強くなり姫矢やナイトレイダーに影響を与えながら、姫矢も過去のトラウマを乗り越えてウルトラマンとしての役割を終える。
そして、その光を受け継ぐのが孤門になる・・・と思いきや、劇中2番目の変身者となる千樹憐の登場。「姫矢編で登場人物の心境にも変化があったこと」「若い世代のキャラクターが増えたこと」により物語の雰囲気はだいぶ明るくなりましたが、孤門は若い世代を導くような立ち位置でした。
物語が明るくなったのはすぐに落とすための布石だと思っていましたが、考え過ぎでした。姫矢編は救われない報われないようなキャラクターが多くひたすら暗かったイメージがあるので、かなり見やすくはなったものの成長した孤門が変身せずに導く立場になったのがなぜなのかがよく分からないままでした。


物語が大逆転することを期待したまま30話を観終えてました。
どの時点か忘れてしまいましたが、TLTの中にスパイがいるという件。DVDには32話の前にTV未放映だった平木隊員にスポットを当てた物語が収録されており、ここで平木隊員にスポットが当たったせいで黒幕は主要人物の中でそれまでの重要性が薄めな人物という演出から察知してしまいました。
全37話なのに憐編が終わるのが36話・・・。最終話は黒幕がいきなり姿を現して、成長した孤門が西条を救い出し、光を受け継いで変身して黒幕を倒す…という急展開。放映時は打ち切りで1クール分の尺がなくなってしまったのが大きな要因ではあると思いますが、まとめがきれいにならなかった感じはどうしても否めません。


そういうわけで、いつのまにか視聴を終えてしまいました。
ウルトラマンシリーズとしては異色の取り組みを取り入れたのだと思いますが、先に挙げたような期待感を(勝手に)持っていたので(勝手に)裏切られたような気分でした。最初の方で「テーマは絆」という話をしたことを思い出すと、孤門が成長していく過程を描くところに主眼があったのではないかと思うようになりました。
とはいえ、成長過程も個人的にはあまり納得がいってません。未熟だった主人公が導かれて成長していくなら最後は導く側の立場にいてほしいという思いがあり、姫矢編から憐編にかけて孤門が既に導く側の人間になってしまったのを見ると変身する必要がないのではないかと思いました。ただ、憐編のラストで「見守ることしかできない・・・」という孤門を見て、憐編では孤門の無力さを描きたかったのではとも思いましたが、1クールカットの件もあり最後にとりあえず変身しただけの感じが否めません。


中盤終盤で気になったのは

  • 見たことあるようなきれいなお姉さんだと思った人が仮面ライダードライブで沢上りんなを演じていた吉井怜だった
  • 孤門の頭に降りてきただけの「ウルトラマン」という言葉が思いの外自然と受け入れられるようになっていた
  • 西条は孤門の影響も受けて変化が見えて、溝呂木が命を落とした際も「生きて償え」という思いに変わっていたのに、最後の最後まで憎しみがビーストに対する行動原理なことは変わらなかった
  • 変わらないままデュナミストになり変身したところを孤門に救われたのであれば「憎しみでは解決できない」描写が欲しかったがあまりなかった
  • 最終回の平木の初っ端で石堀に打たれてそのままという扱いひどいような…。


繰り返しになりますが、打ち切りによって描き切れなかった部分が多いと思われるのであまりすっきり終わった感じはありませんでした。
特撮作品が打ち切りになったということを初めて耳にしたので、1年間戦い続けた他作品の偉大さを少し感じることができたことが収穫でしょうか。また、ネクサスがどういう作品か分かったということで、ウルトラマンシリーズにおける異色がどれくらいの幅を持つものか掴めたことも収穫でしょうか。