劇場版 名探偵コナンシリーズ 評価ランキング

「劇場版 名探偵コナン」シリーズを20作品すべて視聴しました。
ので、ランキング形式で評価をして感想を書いてみました。


コナン映画はアクション要素が多く盛り込まれる傾向がありますが、作品としてのベースはやはり推理なので、推理物として楽しむことができて且つアクション要素がバランス良く取り入れられていたら高い評価になります。
また、レギュラーのキャラクターに対する思い入れはあまりないので、そこで加点になることもあまりないです。




【評価ランク】


■ Sランク…(他人にオススメできる面白さがある、Aランクに比べて個人的に好き)
「瞳の中の暗殺者」
純黒の悪夢
14番目の標的


■ Aランク…(他人にオススメできる面白さがある)
天国へのカウントダウン
「時計じかけの摩天楼」


■ Bランク…(個人的には好き)
「世紀末の魔術師」
「探偵たちの鎮魂歌」
戦慄の楽譜
「水平線上の陰謀」


■ Cランク…(良くも悪くも普通)
「迷宮の十字路」
沈黙の15分


■ Dランク…(良くも悪くも普通、Cランクに比べて盛り上がりに欠ける)
「ベイカー街の亡霊」
「異次元の狙撃手」
「漆黒の追跡者」


■ Eランク…(あまり面白くない、このランクを観るくらいなら他の作品を勧める)
「絶海の探偵」
「業火の向日葵」
11人目のストライカー
「紺碧の棺」
天空の難破船
「銀翼の奇術師」


評価が下位の作品からそれぞれの感想を続きから(※ネタバレあり)。



○20位「銀翼の奇術師」(Eランク)…第8作、2004年
【あらすじ】
毛利探偵事務所に「怪盗キッドから運命の宝石を守ってほしい」という依頼が来る。予告上通りにキッドは会場に現れるものの、宝石を奪えずに逃走。無事に宝石を守ったお礼として、依頼人の別荘に招待されるが、別荘に向かう飛行機の中で依頼人が殺害されてしまう。
【感想】
個人的には盛り上がる部分が全くなかったように感じています。
起こった事件はあまり複雑な推理をしていない毒殺事件が1件。キッドも飛行機に乗り合わせていましたが、前半で宝石を盗みそびれたから再度訪れただけで、それ以上の意味はなく。操縦士が毒にやられて飛行機が墜落寸前になるというシナリオも映画のスペシャル感を出すためにとってつけただけのように感じてしまいます。
唯一良いポイントと言えそうなのは、キッドの地顔が新一に似ていることから新一の姿に変装をしたことで蘭やコナンを動揺させたというところでしょうか。当時だとその設定がなかったかもしれませんが、もはや初めてではなかったので驚きもなく・・・。



○19位「天空の難破船」(Eランク)…第14作、2010年
【あらすじ】
鈴木次郎吉怪盗キッドに挑戦状をたたきつける。東京から大阪へ向かう6時間を制限時間として宝を乗せた飛行船で回遊を始めるが、その飛行船が殺人バクテリアを強奪した疑いのある集団に乗っ取られてしまう。飛行船に乗り込んでいたキッドと共闘してハイジャック集団に立ち向かう物語。
【感想】
スケールが大きいように見せかけて小さすぎというのが全体での感想です。
赤いシャムネコという組織の名前も過去の事件から借りただけの嘘、盗んだ殺人バクテリアは偽物、バイオテロを装って人を遠ざけてから奈良から仏像を盗むのが真の目的・・・まるで虚勢を張っている人を見続けているような虚しさですね。
ゲストキャラとして大橋のぞみが演じてた少年がいましたが、この少年もなぜ登場したのかがよく分かっていません。「服部も探偵としては優秀だけど、ヒントを与えてくれるようなキャラがいないとダメ(和葉では不十分)」という一種のあてつけのようにしか思えませんでした。




○18位「紺碧の棺」(Eランク)…第11作、2007年
【あらすじ】
海賊・財宝の伝説がある島でバカンスを楽しむ中で、ダイビング中に人がサメに襲われて命を落とす事件が起こるが、それは事故ではなく仕組まれたものだった。博物館での窃盗や銃の発砲など不穏な空気の中、伝説の財宝を巡って海底の宮殿へ向かい謎を解く物語。
【感想】
あらすじを書きながら思いましたが、少し踏み込んで書かないといけないくらいには内容が薄いです。
ダイビング中に人がサメに殺されるのが事故ではなく事件だと暴いた時点でトリックは割れており、焦点は「誰が殺したか」だけになります。が、今回の演出は小物感のある明らかな悪党キャラがいたため、誰が殺したかすら興味が湧かず、推理という推理もないので、もはや人を殺す意味があまりなかった気がします。
終盤は財宝のある海底宮殿に向かうわけですが、コナンと悪党でどちらが先に財宝の在り処を見つけるかというテーマでもあれば良かったものの、悪党は既に在り処を知っていて囮として連れ去られた蘭たちを救うためにコナンが後追いするというもの。また、お互いに背中を預けて戦ったという女海賊の伝説を蘭と園子で再現するも、実際に悪党と戦えるのは蘭だけなので園子に背中を預けて戦えないという矛盾。そして、クライマックスであるはずの海底宮殿からの脱出シーンの尺が異常に短い。
ということで、全体的に事件も登場人物も小物感漂う中で見せ場という見せ場もない作品という印象です。




○17位「11人目のストライカー」(Eランク)…第16作、2012年
【あらすじ】
毛利小五郎の元に爆弾の爆破予告が届き、助けを求めるために蘭は新一に電話をする。コナンはその暗号を解読するが、爆弾の設置場所は自分が今いるサッカースタジアムだった。なんとか被害を最小限に抑えることはできたものの、これは犯人からの挑戦の始まりに過ぎず、次なる爆弾予告に挑んでいく物語。
【感想】
現役サッカー選手を5人くらい声優で出演させる辺りからもJリーグとの共演がテーマなので、面白くはならないだろう思っていました。それは予想通りだったわけですが、サッカー選手の台詞の棒読みはもう少しなんとかならなかったのだろうかと思うくらいに酷かったです。
爆弾の爆破を止めることがメイン事件になる作品は1作目の「時計じかけの摩天楼」でもありましたが、目立った工夫もなく二番煎じという印象が拭えません。また、最初の爆弾解除のシーンはサッカー場の屋根をスケボーで駆けるなどアクション要素がかなり強いシーンになるのですが、この一件の描写が長すぎてテンポも悪く後ろもつっかえたように思います。
まとめると「テーマ重視のため事件に工夫を入れることはあまりしておらず、アクションで尺を稼いで映画にした」ような印象でしょうか。




○16位「業火の向日葵」(Eランク)…第19作、2015年
【あらすじ】
鈴木財閥がゴッホの向日葵の画の展示会を日本で開催することを発表した場に怪盗キッドが現れる。画を盗むにしては不可解なキッドの謎めいた行動、キッドとは別の犯人の存在が浮かび上がる中で、展示会が終了するまで向日葵の画を守ろうとする物語。
【感想】
全体感から述べると事件にあまり興味を惹かれず見どころのないまま終わってしまった印象です。
序盤に飛行機が墜落寸前になる事件があるものの、空港にいるコナンは無力。しかも、飛行機の墜落は過去の映画でもあるテーマだっただけになんだか陳腐に思えてしまいました。また、向日葵畑の中で兄を誤って殺してしまった話など唐突に出てきたり、キッドカードのトリックがトリックと呼べるレベルでなかったり、犯人の動機が弱かったり・・・結構色々気になるところはありました。調べてみたらどうやら3時間分の脚本を改変して作ったらしいのですが、映画は2時間と分かっていながら脚本を3時間分にしてしまうのはどうなんでしょう・・・。
面白かったのは美術館の壁を蘭の怪力で破壊するシーンだけ。キッドとコナンも真面目にお願いしてそれを実行してしまうから面白い。あとゲスト声優は榮倉奈々でしたが「このキャラクター、ゲストが演じてるな」という違和感がありました。




○15位「絶海の探偵」(Eランク)…第17作、2013年
【あらすじ】
海上自衛隊イージス艦で体験航海ができるイベントに参加するが、不審船の発見や未確認物体の漂流など不穏な空気が漂う中で左腕だけの死体が発見される。やがて、艦内には他国のスパイが潜入している可能性が高いことが浮上して、日本の自衛の機密情報を守るためにスパイを探し出す物語。
【感想】
スパイの正体を暴く、という推理テーマは面白そうなのですが残念ながら内容は期待していたものではなかったです。
左腕だけの死体の正体はスパイに機密情報を漏らしている内通者なので、事件としては「内通者がなぜ命を落としたのかを解き明かしてスパイの正体を暴く」という流れが自然だと個人的には思ったのですが、そうではありませんでした。そもそもスパイ容疑のかかる人物がほぼいないせいで視聴者にとってはスパイの正体は最初から明らかになっているような状態で楽しみもなく、事件解決もスパイ確保後に左腕死体という順序で、スパイがテーマであることを考えるとこの順序では左腕事件は蛇足と思いました。
スパイと格闘して海に落ちた蘭を探し出すシーンに関しては、自衛隊が発見するしかないのでコナンが「らーん!!」といくら叫んでもどうすることもできない無力さしか感じずクライマックス感がありませんでした。唯一、なるほどと思わされたのは小五郎の名刺がちゃんと伏線になっていたことです。




○14位「漆黒の追跡者」(Dランク)…第13作、2009年
【あらすじ】
同一人物による犯行と思われる連続殺人事件が発生。その捜査会議に黒の組織のメンバーが潜伏していることが判明。更に、そのメンバーは工藤新一と江戸川コナンが同一人物であることを見抜いているようで、殺人事件の究明と黒の組織の目的とで激突する物語。
【感想】
あらすじだけ見ると結構面白そうに思えるのですが、全体的に印象に残るシーンがありませんでした。
推理をしたのかしてないのかすら覚えてないくらいですが、犯人のキャラクターを考えると7人も殺す残虐さを感じさせる必要性がなかったようにも思えます。ジンとアイリッシュの不仲により工藤新一の正体が明るみにならないままで済むという展開は面白かったですが、ジンの「殺したやつのことなんかいちいち覚えていない」(曖昧)という発言にはジンの器の小ささを感じてしまいました。終盤にゲスト声優がDAIGOだというのが分かることが話のアクセントになっているくらいに印象が薄いです(もう1回観るべきではと思いつつも既に観るのが2回目だった)。
そういえば、水樹奈々が出演していたらしいのですが、彼女が声優の仕事をしていることをほとんど観たことがないためなのか全く気付きませんでした((




○13位「異次元の狙撃手」(Dランク)…第18作、2014年
【あらすじ】
コナンたちはベルツリータワーのオープニングセレモニーに赴くが、そこで狙撃を受けて一人の客が殺されてしまう。狙撃ポイントにはスナイパーのメッセージとしてサイコロと薬莢が置いてあり、第2,第3の狙撃が起こる中で、容疑者としてあがった人間をFBIと協力して追う物語。
【感想】
Dランクに割り振る一つのポイントである「あまり事件に興味を惹かれなかった・・・」系の作品。
FBIも関わるということで一見スケールは大きく見えますが、劇中で無差別狙撃が話題になったくらいに話を盛る要素でしかない印象でした。最後の狙撃ポイントの推理はまだ良いとして「(容疑者と思われていた人物が殺害されたのは)真のスナイパーになるための訓練だったのか!」という動機はもはや想像に過ぎず。あとは昴さんの正体が分かるのがサプライズシーンなのかもしれませんが、アニメで観たことない私にとっては急に声だけ変わっても全く気付く余地なく、後でその事実を知っただけでした。
印象的だったのはゲスト声優の福士蒼汰が犯人役であったこと。「ゲストで声優を招いているのだからイメージが悪い犯人役にはしないだろう」という風潮はこれまでの作品にもあったように感じていて、そのキャラの登場第一声で「あ、これ福士蒼汰か」と分かる特徴的な声だったので、その後真犯人が分かった瞬間にちょっと意表を突かれました。
あとは柴咲コウの歌う主題歌がこれまでのコナン映画の楽曲とは雰囲気が違った系統で、良かったと思います。




○12位「ベイカー街の亡霊」(Dランク)…第6作、2002年
【あらすじ】
仮想空間体験ゲームの完成披露パーティ会場で殺人事件が発生。事件の鍵はゲームにあると睨んだコナンはゲームのデモに参加するが、ゲームを支配した人工知能に参加者50人全員が失格となった場合にはプレイヤー全員の命を奪うと宣告される。事件の鍵を探すため、生き延びるために100年前のロンドンという仮想空間を冒険する物語。
【感想】
シリーズの中で一番最後に観ました。ストーリーには冒険的な側面があって、切り裂きジャックの存在が冒険の鍵となることがはっきりしている点では良かったと思いますが、それよりも気になる点の方が多かったです。
切り裂きジャックが事件の鍵となっているので、その行く先を突き止めることが重要になるのですが、切り裂きジャックに会って何をすればいいのかは明確になっていませんでした。実際に切り裂きジャックの正体を暴いたものの襲い掛かってきたため戦闘となり、最終的には蘭の身投げと同時に崖下に落ちていきましたが、逮捕すればいいのか殺せばいいのか謎を暴けばいいのかが分からなかったので、「あっ、それでクリアになるんだ」とあっけにとられた感じはありました。また、仮想空間にはいない工藤優作が犯人が隠しておきたかった事実も含めて事件をあっさり解決してしまったので、仮想空間で事件の鍵を探すというコナンの本来の目的の意味がかなり薄れたように見えます。
あとコナン一行は全員で10人いたわけですが、彼らの中で失格になる者の消され方が「登場人物多いからまとめて減らしておくか」という感じにしか見えなかったのがちょっと残念でした。




○11位「沈黙の15分」(Cランク)…第15作、2011年
【あらすじ】
都知事が出席した地下鉄開通式でトンネルが爆破される事件が発生。都知事就任前のダム建設が真犯人の犯行動機に関わりがあると睨んだコナンは都知事が後日出席予定だったスノーフェスティバルが開催されている新潟の村へ向かう。そこで数年間眠り続けた記憶喪失の少年に会い、彼を犯人の魔の手から守りつつ真犯人の目的を阻止する物語。
【感想】
今回観るのは2回目だったと思うのですが、初めて観たときと変わらず「最初の爆発シーンは面白かった」という感想でした。
最初の爆発はトンネル内で偶然あやしい人物を発見したコナンが車から飛び降りスケボーで逆走するという結構かっこいいアクションシーン。尺としてもちょうどいいくらいで結構面白いと思いました。ただ、最初のシーンに迫力があり過ぎた反動で、雪山のシーンは最後まで退屈に感じてしまいました。事件としては悪くないように思いますが、最初の爆破シーンと合わせて一本の作品と考えるとアンバランスな感じが否めません。




○10位「迷宮の十字路」(Cランク)…第7作、2003年
【あらすじ】
8年前に盗まれた仏像のありかを示す暗号が何者かから届き、住職は仏像の在り処を探すために毛利小五郎に依頼しコナンたちは京都を訪れる。同じ頃、大阪・京都で窃盗団のメンバーが複数人殺害される事件が発生。その事件を調べていた服部と合流してお互いに捜査を開始する。
【感想】
服部に焦点を当てた物語だと認識しているのですが、それにしては中途半端な部分が多いという感想です。
仏像の暗号を解く間に殺人事件が1件起きるのですが、この事件が暗号を解く踏み台くらいの感覚でしか扱われていないところが残念。暗号をテーマにするなら殺人事件は起こさなくて良かったと思います。
また、服部との組み合わせを考えるとコナンより工藤新一とのコンビの方が熱い展開になりそうなので、服部と工藤新一が並ぶアクションシーンは面白かったのですが、アクションの最後においしい部分を持って行ったのは服部でも新一でもなくコナンだったのが残念で、いっそ最後まで見せ場を服部に譲ってしまって良かったと思います。
京都の街の再現がきれい(詳しくはない)に見えたこと、倉木麻衣の「Time after time〜花舞う街で〜」の雰囲気がかなりマッチしていること、が評価できる点です(事件とは)。




○9位「水平線上の陰謀」(Bランク)…第9作、2005年
【あらすじ】
豪華客船の上で殺人事件が起こる。コナンたちと同行していた人物のあやしい行動が描写されており、その人物の犯行である証拠を集めて突き止めていくのがメインテーマに置かれた物語。
【感想】
一度観た記憶があって、内容は覚えていなかったのですが「面白くなかった」印象だけ残ってました。ということで、かなり低いハードルからスタートしたので期待よりはだいぶ面白かったです。以前観たときは今回のランキングでも上位に位置付けている作品しか観たことない状態での感想だったので、そういう印象になってしまうのも仕方がありません。
犯人だと思わしき人物の裏に糸を引く真犯人がいるというコナンでは珍しいタイプの事件になっていて、コナンがミスリードさせられた中で小五郎が真相に辿り着くという点でも特徴的な作品となっています。
最初の事件をもう少し早めに起こして、あと1つ事件を追加することができればタイトルや舞台に見合ったスケールの作品になっていたと思うので、もう少し工夫が欲しかったという印象です。




○8位「戦慄の楽譜」(Bランク)…第12作、2008年
【あらすじ】
高名な元ピアニストを表した音楽ホールの完成記念コンサートが予定される中、彼の創設した音楽アカデミーの門下生が次々と爆弾で狙われる。また、コンサート当日出演予定だったソプラノ歌手が連続的に狙われたことからコナンは行動を共にして、2人で真犯人を探し出す物語。
【感想】
この作品に関してはかなり個人的な嗜好による評価が強いです。
爆弾事件が何件か起こるわけですが、被害に遭うのはまだ登場していなかった人物ばかりで、事件としては面白味に欠ける面はあります(これだけだとD,Eランクレベル)。それでも評価が高い理由は「コナンと行動を共にしていた天才ソプラノ歌手のキャラクターが好き」というだけです。プロ意識が高いストイックな性格が好きだったのですが、彼女がコナンと行動を共にするコンビ感が良かったです。
これ以上の感想がないくらい個人的な好みの問題です((




○7位「探偵たちの鎮魂歌」(Bランク)…第10作、2006年
【あらすじ】
毛利小五郎宛に依頼があり、そこで腕輪型のフリーパスをもらい蘭や少年探偵団はそのパスで新設テーマパークに遊びに行った。残るように指示されたコナンと小五郎は「ある事件を12時間以内に解決してほしい、できなかった場合は全員のパスが爆発する」と脅迫され、子供たちを救うために依頼調査を進める物語。
【感想】
姿も見せず謎に包まれた依頼人、何も知らされていない人質、タイムリミットは今夜、とあらすじだけ観ると結構面白そうな設定となっています。普段は勝手に現場に出てくるコナンを叱りつける小五郎ですが、蘭や子供たちのためにコナンと協力して調査を始める序盤は結構良い感じなのですが、中盤の服部や白馬が登場した辺りからは推理を楽しむモードなのか緊迫感がなくなってしまうのが残念なところ。
小五郎が妃に電話で「俺に子供たちを救えると思うか・・・?」というシーンの件は結構好きなのですが、その小五郎は最後まで活躍できず。小五郎が現場を足で回って稼いだ情報をヒントにコナンたちが真相を掴んだ流れではありましたが、もう少し違った演出をしてほしかったです。
探偵たちが捜査する中で遊園地側の描写もありますが、灰原の応対・佐藤刑事と高木刑事・人質事件などは結構好きでした。ラストシーンの爆弾回収漏れの件は必要なかった気もしますが、これがないと白馬探偵の正体を描けなかったからということなのでしょうか。
設定やシーンの随所で好きなところが多かったので評価は高めですが、もう少し良くできたのではないかと思えるのでこの位置。




○6位「世紀末の魔術師」(Bランク)…第3作、1999年
【あらすじ】
鈴木財閥が発見したメモリーズ・エッグを盗むと怪盗キッドから予告状が届く。コナン服部の推理はギリギリ間に合わず、予告通りにキッドに盗まれてしまう。しかし、キッドが何者かに狙撃されてエッグは何とか取り返す形に。その後、エッグの元の所有者のお屋敷へ向かうが、そこで殺人事件が発生。キッドの狙撃と同様に右目を射抜かれていることから国際指名手配犯のスコーピオンの存在が浮かび上がる中、屋敷に隠されたカラクリを破ってエッグの謎を解く物語。
【感想】
序盤で大きなアクションシーンを用意してから事件・推理パートに移る・・・という流れは近年のコナン映画でよくある展開ですが、アクションシーンに時間を割きすぎて事件・推理パートが疎かになりがちな傾向があると思っています。この作品もそういう展開で始まるのですが、その中では事件がしっかりしている印象がある点で評価が高いです。
エッグの謎を解くためにカラクリ屋敷の中を進んでいく冒険的な側面があり、その一行にスコーピオンが紛れ込んでいて事件も起こり、最後は犯人と一騎打ち、と期待して観れる要素が多いです。あと初めて観たときは白鳥刑事の立ち位置がまだ分からずキッドの変装だと気付かなかったので意表を突かれた記憶もあります。
ストーリーは結構良いと思うのですが、私が上位に置いている他作品と比較するとインパクトが少々薄い気がしたのでこの位置です。




○5位「時計じかけの摩天楼」(Aランク)…第1作、1997年
【あらすじ】
工藤新一の誕生日前日、新一宛に爆弾予告の電話が届いた。コナンは急いで少年探偵団の元に向かいなんとか爆弾事故を防ぐが、次の爆破予告の電話が再び鳴る。犯人の最後の標的は蘭が新一と待ち合わせをした映画館のある建物であり、爆弾予告の暗号を解いて爆破を防ぎながら真犯人を追究して蘭の命を守るために奮闘する物語。
【感想】
第1作目の映画。シリーズで定番になっている爆弾事件の原点であり、王道感のある分かりやすさでストーリーがしっかりまとまっている印象です。
爆破予告の暗号を解いて爆破を防ぐシンプルなストーリーで犯人の存在もほぼ自明となっています。しかし、下手に犯人を推理するための要素を盛り込む必要はなく、爆破を防いだと思ったらまた次の予告が来る展開が続き、その規模が徐々に大きくなりつつクライマックスをそのまま迎える流れの方が目を離せない展開を演出できていて良かったと思います。因みに、私は「ベイカー街の亡霊」を観るまでモリアーティを知らなかったので、犯人の名前の元ネタがそれであることには気付きませんでした((
爆弾解除で赤と青どちらの配線を切るかというラストシーンをはじめ、「コナン」というよりも「コナンになってしまった新一」という描写で2人のラブストーリー的な側面も強く、新一の誕生日を祝うように主題歌の「Happy Birthday」が流れる終わり方は綺麗だったと思います。




○4位「天国へのカウントダウン」(Aランク)…第5作、2001年
【あらすじ】
コナン一行は新設されたツインタワービルを訪れるが、ビルの下にジンの愛車が停まっていたことを知る。灰原もあやしい動向を見せる中で、ツインタワービルで殺人事件が発生。更にはツインタワービルで会った人物が連続して殺害され、黒の組織が影が見え隠れする中で事件を解明していく物語。
【感想】
コナン映画の中では最初の方に観たことのあった作品で結構面白かったという印象が残っていましたが、その通りでした。
黒の組織が登場する他作品と比較するとコナンと直接的に関わるわけではありません(それでも1人殺してるしクライマックスのためにビルを爆破している)が、存在感をその程度に抑えてちゃんと連続殺人事件の推理をメインに置いています。犯人像が推理で追い込んだ後にもう一対決するくらいの人物だと、劇中における事件の印象はもう少し強く残る気はします。
とはいえ、この映画の一番面白いところは「蘭とコナンのバンジージャンプ」「スポーツカーでのビルの飛び移り」のアクションだと思っているので、アクセントをつけるために事件の存在は控えめになっていると思うと頷けます。「現実的にはできなさそうだけど、できると夢見てしまう」ような適度なドラマチック感をクライマックスに持ってくるこの作品は、コナン映画のアクション要素を象徴する最も印象的なシーンだと思います。
あと評価の高い点は主題歌が倉木麻衣であること。私の中でコナンの主題歌と言えば倉木麻衣が王道なのです。




○3位「14番目の標的」(Sランク)…第2作、1998年
【あらすじ】
小五郎の身近な人間が次々と襲われる事件が発生。目暮十三警部の13、妃英理の12…とターゲットが全員数字にちなんだ名前をしていることから、次に狙われるであろう人物を訪れてアクアリウムへ向かうも、そこでは遂に殺人事件が起こる。その場にいるもの全員が数字にちなんだ名前をしている中でターゲットとなりながらも真犯人を探し出す物語。
【感想】
歴代映画シリーズの中で最も推理物としての要素が強い作品というイメージです。
序盤で毛利小五郎の周囲の人物が狙われるというサスペンス感を出しつつ、中盤以降は「この中に犯人がいる」という状況で事件が起きます。推理物の定番である見立て要素を用いており、そのために登場人物の名前も分かりやすく設定されていて、飽きない展開で見やすくまとまっています。また、事件と関連して小五郎が妃英理に銃を発砲した過去の話が出てきますが、それも最後のシーンへの伏線(?)となっています。キャラクターに迫るドラマ性も持たせつつ、その真相が最後にちゃんと判明することで話としての収まりも良いです。
気になったのは犯人の犯行動機でしょうか。味覚障害を引き起こす事故を起こした人物への復讐心はまだ情状酌量の余地があるとして、残りの人物はソムリエとしての威厳を貶されたことやワインの管理方法がなってないことへの苛立ちなど、犯罪動機としてはかなり軽いものになっています。推理物の連続殺人にしては珍しい印象です。
最近の映画はアクション要素が強く、そのために大舞台を選んでスケールを大きく見せる風潮があると思いますが、推理する作品がやはり好きみたいですね。



○2位「純黒の悪夢」(Sランク)…第20作、2016年
【あらすじ】
リニューアルオープンされた水族館を訪れたコナンたちは記憶喪失の女性に出会う。しかし、その女性は前日に警察庁から機密データを盗み出した黒の組織のメンバーだった。記憶喪失になった彼女の回収を図る組織とコナン・FBI・公安警察が激突する。
【感想】
現時点で最新の映画。初めて映画館でコナン映画を観たので、その臨場感による補正もあってか高評価です。
今回は黒の組織との対決がメインになっていますが、これまで黒の組織が絡んだ映画と違って推理や事件は皆無という潔さ。組織との対決を期待させつつ事件と推理を織り交ぜるよりも、却ってシンプルな内容に仕上がったので個人的には良かったと思います。
組織との対決に重きを置いた作品だけあってか組織やFBIのメンバーも多く登場するオールスター仕様になっていますが、どの人物を活躍させるかしっかり絞ってあったので、ただキャラクターがたくさん登場して賑やかしていく内容ではない点も良かったです。また、対決によるアクションだけでなく、キーパーソンである記憶喪失になった組織メンバー・キュラソーの物語でもあり、簡潔にまとめられています。そして、これを演じていたのがゲスト声優である天海祐希だということが驚きで、その迫力に圧倒されました。
気になる点を挙げるとするなら、安室と赤井が観覧車の上で格闘を始めるところの脈絡が分からなかったこと、そこでアクションをする必要性をあまり感じなかったことくらいでしょうか。そもそも私は「安室を知らない」「赤井秀一が生きてることを知らない」という状態で観ていたので、もしかしたら必要なシーンだったのかもしれませんが。。
序盤のカーチェイスの場面で「これマリオカートだったら跳んでショートカットでしょ」と思ったところで期待通りに跳んでくれたり、とアクション映画と考えれば面白かったです。




○1位「瞳の中の暗殺者」(Sランク)…第4作、2000年
【あらすじ】
現役の警察官が連続して殺害される事件が発生。被害者の共通点は過去にある事件を捜査していたことで、その事件に関与していた佐藤刑事まで犯人に襲撃されてしまう。そして、偶然にもその場で犯人の顔を目撃してしまった蘭はショックで記憶喪失に。記憶を取り戻す前に蘭を消そうとする真犯人から蘭を守りつつ、真犯人を解き明かす物語。
【感想】
個人的にはダントツ。シリーズの中で初めて観た作品だったこともあって強く印象に残っているだけかと思っていましたが、見返してみてもそれは変わりませんでした。
まず蘭が記憶を失くすまでの話。最初の事件現場に偶然居合わせるのはご都合主義かもしれませんが、この現場を踏まえた上で佐藤刑事が次に狙われるかもしれないとなると他人事とは思えなくなります。蘭が記憶喪失になる理由も自分のせいで佐藤刑事が撃たれてしまったことによるショックと説得力がありましたし、ここで見えるコナンお馴染みの真っ黒な人影から残忍感が伝わってきました。
次に蘭が記憶を失くしてからの話。事件としては終わっているのに、蘭が命を狙われているということで目を離せない展開が続きます。犯人の特徴でもある左利きというのが分かるシーンをさりげなく混ぜ込んであり、観ている人間がしっかり推理できるようになっています。
そして、犯人との対決。犯人のキャラクターが犯人像としてハマっているように思います。普段の温厚そうな雰囲気と残忍な暗殺者としてのギャップ、フィクション作品の医者テンプレの完璧主義で賢ぶった感じ(?)、が現れていて好きです。遊園地での追いかけっこは適度なアクション程度にしか思っていないですが、記憶を取り戻すシーンは新一と蘭の思い出の場所でもあり佐藤刑事が撃たれる現場で見た光景とも類似しているという点で説得力もありました。また、終盤まで命を狙われるヒロインでしかなかった蘭も最後に空手で犯人を圧倒するという見せ場があって良かったと思います。
見返してみて気になったのは、自分が思っていたより推理要素が少なかったところくらいでしょうか。とはいえ、最初から最後まで落ち込むところないストーリーで、アクションシーンも適度、個人的に記憶喪失系の話が好みというところで、私のランキングでは文句なしの1位です。