2016年のプロ野球日本シリーズの感想

10/22〜29に行われていた2016年の日本シリーズの感想。


第1,2戦をフル視聴、第3,6戦もほぼほぼ視聴していたので感想を書いておきます。
(今年は野球の記事を一つも書いてなかった…というのもあります)



○第1戦 (日本ハム 1-5 広島)
【ハイライト】
雨が降りしきる中での開幕。2回裏に一・三塁からダブルスチールという形で広島が1点を先制。4回裏には4番に抜擢された松山・6番エルドレッドのソロホームランで追加点。日本ハムは7回表にレアードがホームランを放つも追い上げはその1点に留まり、盤石の継投で逃げ切った広島の勝利。
【感想】
先発投手の調子が対照的な試合でした。ジョンソンのピッチングを初めて見たのですが、これは2年で29勝するピッチャーだと納得する圧巻のピッチングでした。対する大谷は雨の中でのピッチングということもありストレートの制球に苦しんでいた印象です。
先制点は記録的にはダブルスチールですが、守備の連係ミス。二死一・三塁からの一塁ランナーの盗塁で、キャッチャー大野は大谷カットで送球したつもりでしょうが、大谷がスルー。外野に抜けるのをショート中島が何とか止めている間に三塁走者が生還というもの。打者が8番なので盗塁を許しても9番のジョンソンと勝負すれば無失点で切り抜けられる可能性は高いため、そもそも送球はしないのが正解でしたね。
しかし、苦しい投球だったとはいえ、その連携ミス以外はホームラン2本だけで連打による失点を許さなかった大谷もさすがだと思いました。


○第2戦(日本ハム 1-5 広島)
【ハイライト】
この日スタメンに抜擢された7番小窪のタイムリーで広島が2回裏に先制。4回表に菊池の失策で日本ハムに同点に追いつかれるものの、6回裏には1番田中の二塁打から2番菊池がバスターでタイムリー。失策が重なった後にエルドレッドのホームランでトドメを刺した広島が前日同様に継投で逃げ切って勝利。
【感想】
広島先発の野村はボールを見る限りは調子が悪そうに思えましたが、終わってみれば6回1失点の好投でした。1戦目のジョンソンが良かったのもありますが、日本ハム打線が全体的に湿っている印象を受けました。その割には野村の球数は多かったので日本ハムも淡泊に終わらず嫌らしいところは見せつけられたでしょうか。
6回裏の攻撃は見ていて心躍る展開でした。2番菊池にバントはさせず、3番丸がセーフティ気味にバント。1点取るだけなら菊池がバントでも良かったと思いますが、バスターを選んだのは終盤を見据えて2点以上取る目的があったからでしょう。1点奪ってから丸にバントをさせているところからも、次の1点を着実に取りに行く(2点以上取る)狙いが見えます。こういう動きができるのも「菊池の打撃能力が高い」「後ろに丸がいる」おかげなので、広島の攻撃面の強みが見えるシーンでした。
ただ、菊池のバスターの場面で田中は本塁へ走るべきではなかったように思います。無死一・三塁でも次の打者が丸、そして4番打者へと続くので、かなりの確率で1点は取れそうで2点以上の得点も期待できる場面になります。際どいタイミングでビデオ判定の結果セーフになりましたが、本塁でアウトになれば一死一塁で1点とれるかどうかになるため、リスクが高いです。
ところで、ビデオ判定について、テレビの実況で「野球の醍醐味がなくなる」みたいなことを言っていましたが、どういう意味なのかよく分かりませんでした。本来セーフのものを誤審でアウトと言うところに野球の醍醐味があるのでしょうか。審判も人間なので間違いますし、ビデオ判定を導入することで極力それを減らすことができていると考えるのが自然な気がしますが…。
そういえば、勝利監督インタビューで「小窪を使えと打撃コーチが推薦したので!」と声にしてコーチを労っていたのはとても良かったと思います。


○第3戦(広島 3-4x 日本ハム)
【ハイライト】
1回裏に中田の内野ゴロの間にランナーが生還して日本ハムが先制。しかし、2回表にエルドレッドが3戦連続となるホームランで広島が逆転。そのまま試合は終盤へ進み、8回裏にチャンスで大谷という場面で敬遠を選んだ結果、続く4番中田が逆転タイムリー。広島も9回表に同点に追いつき延長戦にもつれるも、10回裏に大谷のタイムリーで日本ハムがサヨナラ勝ち。
【感想】
今後の展開によっては黒田の引退試合になるかもしれないという試合。引退表明している選手がシーズンの最後まで第一線で戦っているということ自体がまず凄いことなのですが、ピッチング内容を見ていると本当に引退するとは思えない内容でした。失点も内野ゴロの間に1点だけ、それ以外は走者を背負っても要所を抑えるピッチングが冴えていました。
黒田の勝利投手の権利が残ったまま8回裏に二死二塁で大谷を迎えるピンチ。大谷はこの日黒田から2本のツーベースを打つなど当たっていて、次の中田はシリーズ通して不調気味。大谷との勝負を避けるのは無難な選択だったと思います。見ている雰囲気だと、ジャクソンの球と中田は相性が良さそうな感じはありましたが、中田まで避ける場合は失点した場合に2点以上の失点になる可能性が高くなるので避けられないでしょうか。なので、打たれてしまったのは仕方がありません。ただ、広島側としては松山に守備固めの選手を出しておいた方が良かったかなと思います。捕れば無失点で切り抜けられるので前に突っ込んだこと自体は悪くないと思いますが、松山の守備能力を考えると無理して2点失うよりは1点で済ませる方が良かったかもしれません。
9回表は鈴木誠也スリーベースから7番安倍のタイムリーで同点。簡単に引き下がらないところは広島も強いですね。
そして、10回裏で大谷を迎える場面。二死一塁だったため大谷との勝負を選びましたが、ここで一塁走者の西川が果敢にスチール。広島側は継続して大谷との勝負を選択。ここで大谷を避けるとシリーズ中ずっと避けなくてはいけなくなるため、勝負を避けられなかった感じでしょうか。ピッチャーの大瀬良もいい球を投げていましたし、2ストライクまで追い込んでいたことが勝負を選択する後押しになったようにも思います。結果的には打たれてしまいましたが、大谷の打ったボールは内角膝元のボール球で、普通なら打ってもファウルか一塁ゴロにしかならないようなボールで、これは大谷が上手かったというしかなさそうです。大谷も凄かったですが、勝利に直結した西川の盗塁も凄かったです。


○第6戦(日本ハム 10-4 広島)
【ハイライト】
前日サヨナラ満塁ホームランの西川が初球をいきなりスリーベース、そのまま日本ハムが1点を追加。しかし、2回裏に連打の後暴投と失策であっさり広島が逆転。お互いに先発投手を早い回で諦めて継投勝負になるものの、同点の8回表に日本ハムが満塁のチャンスを作ると、中田の押し出し四球で勝ち越し。ピッチャーのバースのタイムリーを挟んでレアードの満塁ホームランで広島を一気に突き放した日本ハムが勝利して日本一。
【感想】
地元で3連勝を決めて勢いに乗った日本ハムが先制する展開。しかし、無視一・二塁のチャンスで4番中田をダブルプレーに仕留めて1点で食い止めた広島先発の野村もさすがのピッチングです。そして、そのダブルプレーも田中菊池の二遊間の素晴らしい守備で成り立つもので見ていて少し感動(?)しました。
6点入った8回表。ジャクソンが二死からランナーを3人出して4番中田にストレートの押し出し四球をわけですが、ネクストバッターズサークルの大谷が掛ける圧力も大きく影響していましたね。しかも、中田で勝ち越しできたらバースをそのまま打席に向かわせる、と代打で出す気は最初からありませんでした。そもそも7回裏の守備の時点で日本ハムは9番ピッチャーのところに陽を入れて5番に投手バースを入れました。この意図としては「7回裏に投入したバースに長く投げてもらうため打順を遅らせる(8回表は8番からスタート)」「ランナーを貯めて中田を迎えたときに投手のところに代打大谷を送ることができる」という2つでしょうか。バースが意外にも続いてレアードがトドメを刺したことで試合の行方はほぼ決まりましたが、事前に試合を見据えた栗山監督の采配が素晴らしかったです。


○シリーズを通して
大きく差が出たのは「1番打者」と「監督の采配」でしょうか。
広島の1番である田中広輔はシリーズ通して打撃に苦しんでいたように見えます。田中・菊池・丸のトリオが機能したのも第2戦のみで、広島の得点はホームランか相手のミスによるものが多かった気がします。対する日本ハムの1番である西川遥輝もシリーズ序盤こそ打撃に苦しみましたが出塁はしていて、打順が2番となった第5戦でサヨナラ満塁ホームランを打つと、第6戦ではその勢いのままスリーベースを2本放ち得点に大きく貢献しました。
采配の差に関しては、広島の緒方監督がシーズン同様の戦い方を貫くのに対して、日本ハムの栗山監督が短期決戦を意識した思い切った采配を打つことが多かったことでしょうか。シーズン同様の戦い方を貫けるならそれに徹した方が良いと思っており、実際に広島は2連勝でスタートできたことから形を崩さないで戦うことを選びました。逆に2連敗で劣勢になった日本ハムは、打順の入れ替えや継投のタイミングに積極性があり、これがうまくハマって、逆転優勝という結果に繋がったと思います。結果論ではありますが、北海道での緒方監督の策略は裏目に出ることも多く、打線で得点できない皺寄せが投手陣に回って、今村やジャクソンを6連投させざるを得なくなったという形にも見えます。ここはどちらが正解ということはなく、ハマったら正解という風に結果でしか判断できないため、見事にハマる選択ができた栗山監督が今回は1枚上手だったということでしょうか。
ここ2年はソフトバンクが圧倒的な戦力で隙のない野球をしてセリーグを制するだけの展開だったので。終盤まで接戦をする試合が6試合続くシリーズで色々なプレーを観ることができて、非常に面白かったです。来年も面白いシリーズになることを期待したいですし、その前にあるWBCも楽しんでいけるといいですね…!