2019年夏ドラマの感想。

2019年夏ドラマの感想。

春ドラマは唯一「あなたの番です」を観ていたのですが、なんと2クール続くドラマだったので、感想は夏ドラマとしてここに書きます。

 

「あなたの番です」

「ルパンの娘」

「サギデカ」

 

  

○「あなたの番です」

【主演】

田中圭原田知世

【あらすじ】

新婚夫婦となった主人公は引っ越して新しいマンションでの新婚生活をスタートさせるが、そのマンションの集会で持ち出された「交換殺人ゲーム」として実際に殺したい人の名前を書いて交換しあってしまう。誰もがその場での悪ふざけくらいにしか思っていなかったが、その夜マンションの管理人が屋上から転落して死亡。マンションの掲示板には「管理人」と書かれた紙が貼られており、本当に交換殺人ゲームに巻き込まれていく。

【感想】

出演者で興味のある人は特にいませんでしたが、設定自体は面白そうだったことと前期の同枠「3年A組」が良かったことからの期待で観始めました。因みに、2クールにかけて放送することは1クールの終盤で知りました。

感想としてはイマイチ。交換殺人ゲームが開始して次々に登場人物が死んでいくのですが、住人のほとんどが日常に近い生活を続けていたり死体を直視できないコメディ設定の刑事が登場したり、とどうにも緊迫した雰囲気が全くありません。その上、登場する人物ほぼ全員に疑わしい点があるような伏線だけばら撒くためドラマとしてはぐだぐだな雰囲気を感じました。それが1クール中盤だったので以降は「観始めてしまった以上、真相が気になるから観ていただけ」に過ぎません。

ただ、観ている途中でこれはドラマではなく「SNSで考察をして視聴者同士で盛り上がるための設定提供」なだけだと気付きました。実際、途中段階で脚本は最後まで決まっていなかったようで、ネットテレビ限定のムービーを使ったりして風呂敷を広げられるだけ広げるような形式を取っていたことからもそれは理解しました。

また、設定提供的な側面をもう一つ感じたのは「西野七瀬横浜流星のプロモーション」の意味合いです。乃木坂46を卒業した西野七瀬、2クール目からはブレイク必至の横浜流星を主要人物に置いていますが、設定に対して適切な配役をしたというよりも演者を決めてからそれに見合う設定を作った感じが強く出ているように思いました(空手の世界大会優勝経験のある横浜流星がアクションを行うシーンはまさにそれ)。

ということで、普通のドラマと違うこと自体は理解しましたが、ネットテレビ限定でしか得られない推理ヒントがあることもあって推理考察するモチベーションも特になく。惰性での視聴が続いて最終回を迎えましたが、黒幕に特にひねりもなく回収されないままの伏線も多数あって、真面目に推理考察していた方が気の毒だと感じました。

 

○「ルパンの娘」

【主演】

深田恭子瀬戸康史

【あらすじ】

主人公の三雲華は結婚を見据えて恋人の両親に挨拶に行くが、彼の家系が代々警察一家であることを知って困惑する。というのも彼女もまた「Lの一族」という代々泥棒一家の家系に生まれだからである。決して相入れない2人が困難を乗り越えていく様をコミカルに描いた物語。

【感想】

瀬戸康史が好きなことと面白いらしいという話を聞いて2話目ごろから視聴を始めました。余談ですが、瀬戸康史が演じる役の祖父役が藤岡弘ということもあって仮面ライダー的には熱いらしいです。

感想としては「将来見返したりしなさそうだが退屈せず面白かった」というところです。深田恭子が出演するコメディ物には彼女自身はほぼコメディしないという印象があるのですが、今回もおおよそその通りで渡部篤郎をはじめとして周りの配役が良かった印象があります。

特に良かったのは、円城寺とBGM。主人公の幼馴染であり彼女を想い続ける円城寺は原作には存在しないキャラクターらしいのですが、毎回歌詞字幕付きでミュージカルをする恒例の登場が妙に癖になりました。それでいて、警察と泥棒という困難を乗り越えてでも選びたい人がいるという対比の役割としても重要な人物であり、一途に彼女の幸せを想い続ける紳士的な姿勢が魅力的でした。

BGMについては特にサカナクションの主題歌。Lの一族が泥棒家業する際の服装がどことなくダサいのですが、そのちょっとだけダサい感じとサブカル感がすごくマッチしているように感じました(サブカルがダサいという意味ではなく、フィクションの大物泥棒は華麗でカッコいいのが王道であるのに対してちょっとダサいのがサブカルという意味)。原作がどういう設定かここは把握していないのですが、ちょっとダサい感じがコメディ感を出せているので悪くなかったと思います。

深田恭子にはあまり思い入れがなく、彼女の出演作を見るのは15年ぶりくらいだったと思うのですが、その間ビジュアルも期待されるキャラクターも全く変わらずブランドを維持していることについては、すごく感心しました(※「ジョーカーゲーム」という映画を観てたことを後で思い出しました)。

 

○「サギデカ」

【主演】

木村文乃高杉真宙

【あらすじ】

 人の善意を利用してお金を騙し取る詐欺行為。中でも老人を対象にした振り込め詐欺がが横行しており、これらは単独や少数ではなく組織的に行われているものであるため大元となるトップを捕まえないと根絶やしにすることはできない。そんな詐欺犯罪に立ち向かう女性刑事を描いた物語。

【感想】

木村文乃が主演という理由だけで視聴を決めました。なので、あらすじも何も全く知らない状態で1話を観ていました()

こちらも「すごく惹きこまれたりはしなかったけど退屈もしなかった」という感想。木村文乃の喜怒哀楽を見るのが目的なら退屈しないだろう…というのはごもっともなのですが、詐欺犯罪に関わるプレイヤー(警察・被害者・組織・掛け子)の実情などがしっかり描かれていて、関心を持って観ることができました。

組織は実際に電話を掛ける「掛け子」と呼ばれる人をたくさん雇って、騙し取ったお金を成果を上げた掛け子と分配する形で稼ぎます。掛け子としては、普通に働くよりも楽に稼げるだけでなく、そもそもお金を持つ高齢者の数が増えたことによって生じた不平等が若い自分たちに還ってきている点からそれを再分配する正義的な動機が十分にあります。組織は住所や家族構成がまとまった名簿(例えば老人ホームの入居登録の情報を横流しにすれば名簿ができあがる)を用いて電話を片っ端から掛けるので、警察はそれを突き止める必要があるのですが、あくまでそれは被害の拡大を防ぐためのものでしかなく、実際に被害に遭った方に対してはアフターケアしかできない点で無力です。ただ、被害に遭った老人たちは一度騙されてもまた信じてしまったり騙されたと分かっても目の前で向けられた笑顔に「自分が人の役に立っている」と感じてしまうこともあるというのがやるせないところでしょうか。

ドラマとして考えると、もうちょっと話数が欲しかったのが正直なところです。全5回しかない中でこの基本構造を描くのに最初の3話を要したため、大元を捕まえる部分の描写がたったの2回で片付けられてしまうというのが少しあっけなかったです。尺の問題なのは残念ですが、丁寧な描写が多く配役もそれをしっかりこなせる方々でまとまっていたので好印象でした。