2019年のプロ野球日本シリーズの感想

10/19〜23に行われていた2019年の日本シリーズの感想。

 

2000年のON対決以来の組み合わせで、私がプロ野球を認知して観るようになったのがちょうどそのシーズンだったのでで、少し思い入れがありました。
結果ソフトバンクが4連勝して終わってしまいましたが、第1戦をフル視聴、第2,4戦をほぼほぼ視聴していたので感想を書いておきます。

 

 

○第1戦 (巨人 2-7 ソフトバンク)

【ハイライト】
千賀と山口の先発でスタート。2回表に今年度限りで引退を表明している阿部のホームランで巨人が1点を先制。しかし、ソフトバンクも5番中村のツーベースから6番グラシアルのツーランホームランで逆転。
その後お互い好投が続くものの、ソフトバンクは6回裏にも犠飛で追加点。更に山口が降板した7回裏には代打・代走・犠打を駆使した攻撃で4点を追加するなど終わってみれば5点差をつけてソフトバンクの勝利。

【感想】
まず色々な驚き。今年は全くレギュラーシーズンの野球を観ていなかったので、お互いのスターティングメンバーや成績などが意外でした(亀井の1番、山口の投手三冠、内川の8番)。
千賀は制球に苦しみながら阿部のホームラン1本による失点に抑える中、山口はグラシアルにツーランを浴びて2失点。タイトル三冠の圧倒的な貫禄はあまり感じなかったものの、奪三振率も高くいいピッチングをしていたと思います(グラシアルのホームランは打つ側が上手かったのである意味仕方ない)。
この試合で圧巻だったのは7回裏のソフトバンクの攻撃。代打代走を含めて采配が的中してダメ押しの4点を取る流れが鮮やかでした(先に流れだけ書くと、先頭の松田がツーベースで出塁。これに代走周東を送り続く内川は送りバント。9番甲斐に代打長谷川を送ったところで巨人もピッチャーをマシソンから田口に交代。これに合わせて対左投手に強い川島を代打の代打として送り結果はフォアボール。牧原への初球でスクイズを偽装しつつ川島が二塁へスチール。その後牧原・今宮・柳田にタイムリーが出て4得点といった具合)。
采配の印象的だったところはまずツーベースを打った松田への代走やその後の甲斐に対する代打。既に2点リードしているソフトバンクは8,9回を抑えれば勝てるのですが、守りの強い甲斐や松田を思い切り代えるところに「失点確率を考えて2点を守りきるのではなく更に点を取る」という姿勢が伺えました。実際8回の巨人の攻撃は1番亀井からで2点リードをがっちり守るよりも1点でも追加点を挙げた方が試合に勝てる確率は高そうです。もう一つは牧原のスクイズ偽装からの川島スチール。三塁走者が代走の周東であることからキャッチャーはまず三塁を意識してしまうため成功率は高い作戦で、これは普段から状況を想定していないとなかなか行えない作戦だと思いました。

 

○第2戦 (巨人 3-6 ソフトバンク)

【ハイライト】
巨人はサウスポーのメルセデスソフトバンクアンダースローの高橋礼が先発。5回表まで両者1人のランナーも許さない投手戦。
試合が動いたのはメルセデスが降板した7回裏。代わった大竹から先頭デスパイネのサードゴロを同じく代わったサードの山本がエラー。ソフトバンクはすかさず代走の周東を送るとグラシアルのランエンドヒットで一・三塁とチャンスを広げて、6番松田のスリーランで先制。8回には柳田と代打福田にホームランが出て更に3点を追加。
9回表に登板したソフトバンク高橋純が3四球と巨人にとって絶好の機会が訪れて連打で得点を重ねるも、途中まずい走塁もあってチャンスを物にできず負け。

【感想】
 4回くらいから試合を観始めました。投手戦は予想していたものの、まさかの両者パーフェクト。5回表までお互い完全だったので「完全試合:27連続凡退」という意味ではある意味達成とも言えますね(
印象的だったのは巨人がチャンスを何度か作るものの悉く攻め切れなかったことです。最初のチャンスは6回表の一死二塁でしたが、ショートライナーで併殺。これはショートの今宮が良い位置にいたのもありますが、ライナーを見てその場でステイしているように見えた(?)ランナーの若林のミスだと思いました。続くチャンスは7回表に二死一・三塁から阿部が内野安打になりそうなボテボテの内野ゴロを打つものの一塁まで疾走できずにアウト。これは打撃は仕方ないとしてもうちょっと走れなかったのかなという思いがあります。状態がどの程度悪いのかこちらからは分からないので無理なら仕方ないのですが、まともに走ることもできない選手をスタメンで使っているのもどうかと思いました。最後は9回表。まずい走塁で不用意にアウトを献上したのは言及するまでもないですが、坂本の淡泊な打撃が気になりました。この回代わった高橋純が先頭から二者連続フォアボール。明らかにコントロールに苦しむ中で回ってきた打席だったのに1-1から打たされたファールフライでアウト。結局高橋はその後も立ち直れず降板しますが、キャリアハイの成績を収めた年でもこういうピッチャーを助ける打撃をしてしまうのはいかがなものかと思いました。
巨人は2試合とも先発投手が頑張っているだけに打線の奮起が求められますが、それがこうも噛み合わないと勝機が見えません。特に先発の高橋礼に対しては低めのボール球を振らされている場面が多く見受けられ、チームとして相手をどう崩すのかという指針も明確されてないのではないかと不安に思いました。

 

○第4戦 (ソフトバンク 4-3 巨人)

【ハイライト】
ソフトバンクは4回表に菅野から連打でチャンスを作ってグラシアルのスリーランで先制。先発の和田が5回無失点と好投するものの、6回に代わったスアレスが岡本にツーランを浴びてたちまち1点差と緊迫したゲームに。
しかし、7回表に岡本の失策から招いた一・二塁のピンチで代打長谷川をセカンドゴロに打ち取ったはずが山本のエラーで失点。7回裏に丸のタイムリーで点差は詰めたものの最後までリリーフを崩すことができず、ソフトバンクがそのまま勝利して日本一。

【感想】
 この日も4回表くらいから観始めました。グラシアルの先制スリーランですが、これは打った方がすごかったと思います。打った球自体は甘く入った失投でしたが、2球でツーストライクと追い込まれてから低めの変化球に一切手を出さず外の際どいストレートはカットしてフルカウントまでこぎつけてからの一打だったので、素晴らしかったです。
この日気になったのはソフトバンクの継投策。先発和田の巧みな投球術の前に巨人打線は全くタイミングが合わず5回まで0点。ここまで70球を投げており当初から5回までの予定だったので6回からリリーフを投入したと思うのですが、個人的には6回は和田続投で良かったのではないかと思いました。頼れるリリーフが甲斐野・モイネロ・森と3人いるためどうやって7回まで繋ぐかが鍵でしたが、想定より和田の安定感が抜群だったので下手にリリーフを挟む必要はなかったように見えました。スアレスが失点したので甲斐野やモイネロをそれぞれイニング跨ぎで投入することになり、結果的に事故にはならなかったもののちょっと投げづらそうな雰囲気は感じました。
あと印象的だったのは甲斐野のバントヒットとデスパイネの好守。甲斐野はパリーグのリリーフということもあってプロ初打席でしたが、綺麗なバントをきっちり三塁線に決めた上にピッチャーなのに一塁まで疾走して内野安打にしました。これは三塁手の岡本の怠慢が大きいのですが、セーフになる可能性を感じてしっかり走った判断が素晴らしいです。また、デスパイネは丸のフェンスダイレクトの打球に対するクッションボールの処理が上手く、生還を1人で止めたことで1点のリードを守り抜けました。普段DHなので守備に不安な声もありましたが、できる範囲でしっかり守っているのが素晴らしかったです(もっと上手いレフトならそもそもフェンス際でアウトにできた可能性自体はあります)。
巨人は亀井だけが絶好調で岡本がまあまあで坂本丸が不調と見えていたので打順のテコ入れはあっても良かったのかなと思います。

 

○シリーズを通して
あっさり4連勝で閉幕しましたが、結果通り戦力差が大きかったと思います。特にスターティングメンバーの地力というよりも控えの選手の層の厚さが段違いでした(長谷川・福田・高谷・明石、どの選手も他球団ならスタメンで出ていてもおかしくない)。
ただ、戦力差だけで決まったような書き方をしましたが、ソフトバンクの選手の方が隙を見逃さない意識が高かったように思います。それは先述した牧原の偽装スクイズであったり甲斐野のバントヒットであったりと日頃から想定していないとできるものではありません。また、工藤監督の積極的な采配も見事でした。4戦目は結果的に裏目だったものがいくつかあったものの、先の展開を見据えた上での素早い決断は短期決戦では重要です。このようなアプローチは戦力層が厚くて毎年上位にいるからこそできるものとも言えますが、ただポテンシャルで勝負するだけでは4連勝とはならなかったと思います。
そういった戦略的な部分が見れたので個人的にはとても面白い日本シリーズだったと思います。ポテンシャルで負けるのは仕方がないにしても、セリーグ球団にはチームとしての意識やルールなどアプローチの部分をもっと磨いて互角の勝負ができるようになるとより洗練された戦いが見れて楽しくなりそうですね。

 

○余談
2戦目までソフトバンクがあまりに圧倒的だったのでどうすれば巨人が勝てるか考えようとしたところ「ソフトバンクから出場禁止選手を出そう」という冗談が挙がりました()
先述の通りアプローチ部分での差が大きいので何人か出禁にしないといけないだろうというのが正直なところでしたが、1人禁止にするなら誰がいいか考えるのは結構面白そうだと思いました。
結論として巨人が勝つために誰か1人出場禁止にできるなら、私なら今宮を選びます。その理由としては一番代替が利かないからです。ショートという要のポジションで球界屈指のレベルを誇り、打撃面も俊足好打で小技も器用にこなせるということで、基本的に交代させる理由がない選手です。これだけであれば柳田も該当はするのですが、今宮の場合は打順が2番であることが大きいです。これは持論ですが「2番にどの選手を置くかによって攻撃の形か決まる」と考えているので、今宮が抜けるとシーズンとは異なる攻撃の形が求められます。ショートを守る別の選手をスタメンに加えた上でこれを強いられるので、いつもより打線が窮屈になるか控えの選手を使った積極的な采配を取りづらくなるかで巨人サイドとしても勝負に持ち込める可能性があると考えました。
因みに持論の補足ですが、良いバッターの打席機会が多くなるよう若い打順を攻撃の軸とする前提の元で、1番打者は出塁、3,4,5番はバリエーションを無視すればただ打つこと、とそれぞれ明確な役割が期待されます。2番打者はその間に位置しており、期待役割としては良い形で後続に繋ぐことと少しふわっとしています。これはすなわち2番打者の技量によって繋ぎ方のバリエーションが変わってくるということであり、攻撃の形(幅)が決まるという考えはここから来ています。