選択制限時間との付き合い方

ポケモンの新作が発売されて既に半年近く経ちました。


XY対戦がBWとは全く違った環境になるのもそうですが、対戦における最も大きな変化は対戦時に選出・選択・試合の3つに制限時間が設けられるようになったことだと私は思っています。対戦に使われるポケモンや新技・仕様の変更などは世代が変わるごとに毎回何かしらの形で変化がありますが、それはそれまでに持っていた対戦環境に対する考え方に新しい要素を加えてうまくシフトさせて順応することができます。もちろん、誰もが簡単に順応できるわけではなく、それまで持っていた考え方と新要素のチューニングに苦戦するプレイヤーも多数いることでしょう。
しかし、時間制約というのは今までになかった(一応04,05の公式大会では取り入れらている)別の側面の問題です。考え方というのは一種の財産なので、失くしたり使い方を忘れたりしていなければ道筋を辿って必要な思考に辿り着くことができますが、制限時間によってそこに辿り着くスピードまで求められるようになりました。対戦ではどんなポケモンを使っていてもコマンドを選択するのはプレイヤーであるため、対戦環境に対する影響よりもプレイヤーに対する影響の方が変化としてははるかに大きく感じるというのが最も大きな変化だと思っている理由です。


対戦オフに何度か参加しましたが、私も今のところ新要素による変化に対応を利かせられていないことに加えてそれよりも制限時間に苦戦しているプレイヤーの一人です。対戦時の思考にどれくらい時間を割いているかを意識することはあまりなかったのですが、選出を決めるのに平気で15分以上かけていたり、選出から1ターン目が終わるまでに40分以上の時間を費やしていたり、予期せぬ行動の後に蜻蛉帰りを選んでから交代先を10分以上考えていたり・・・と極端ながらいくつか思い返せるものはそこそこ時間を費やしています。これだけの時間考えて選択をしても平然とプレイングミスを起こすので、時間に制約ができてしまったらより正しいプレイング(少なくとも自分が納得して選んだ選択)には辿り着きづらくなったと言えるでしょう。
もっとも、これは私に限った話なはずがなく対戦相手にも平等に制限時間が設けられています。与えられた条件の元で勝利を目指す競技であるため、対戦環境の変化だけでなく制限時間という要素にも順応することがXYの対戦環境で勝てるプレイヤーとして求められている条件だと言えます。


そのためには、制限時間との向き合い方を考えなくてはなりません。



〜選出時の時間制限〜


○課題:「相手の選出が予想できない」

選出時の時間制限は厳しいです。ポケモン対戦における選出は対戦中の行動選択の自由度に大きく関わっていて、そのウエイトを考えると選出を決める時間は毎ターンの選択時間とそこまで大差がなく非常に短いものとなっています。必ずしも自由度が大きい方が良いわけではありませんが、できる選択が限られている状況では不利になった場合に建て直しが利く選択の数も当然少なくなりがちなので自由度は大きい方がいいです。
選出の考え方は人それぞれかもしれませんが、私の場合はまず相手のポケモンの多くに対応が利くポケモンを軸にそのポケモンが苦手なポケモンを対策する形で選出を決めていきます。経験的な話だと、相手の6匹のどれにもあまり強くはないポケモンがこちらのパーティに1匹いることも多く、だいたいは3匹の選出が決まってから残り1匹を残った2匹のうちのどちらにするかを考えていることが多いです。このときに残り2匹のうちどちらを選ぶかは選出したい3匹を先発に配置するのか後発に配置するのかによってどちらに配置しやすいポケモンが良いかという点と相手が出してくるポケモンを予想してそのポケモンの対策を厚くできるかどうかという点が選出の決定要因になります。先発での出しやすさなどは使っているポケモンの性能を把握していれば問題ないものの、時間制限があると相手が出してくるポケモンを予想するのは難しいです。
そのため、確率が高いところをマークしていく選出ができずに大崩れしにくい・なるべく五分を保てるような形での選出になりがちです。そして、その際に初手でやや不利な対面でスタートすることが多くなる上に、3,4匹目に選出するポケモンを間違えているとあまり想定していなかった事態に遭遇したときに立ち回りでは取り返せずそのまま取れなくなってしまいます。


○対策:「そもそも構築を選出間違いの起こりにくいものにする」

選出をする時間を長くしたり時間内に考えを巡らせる能力を短期間で得ることは現実的に不可能と言えるでしょう。そんな中でできる対策としてはそもそも構築の方向性を見直すということで、基本選出というものがはっきりした構築を使うことがあげられるでしょうか。ダブルバトルの例を挙げると、構築の組み方は「昔の公式大会に従い4匹のまとまったパーティを残り2匹で補完する方法」と「選出の自由度が高い6匹をバランス良く集める方法」に大きく分かれるような気がします。メガシンカという選出に制約を与えそうなポケモンが加わっているので一概にこうだとは言えないのですが、この方法で言えば前者の組み方の方が選出は間違いにくいといえるでしょう。
勝ちたい相手に勝てる選出をパーティの基本選出とするのも良さそうです。たとえば雨パーティなどは支配力が非常に高いパーティであるためどのルールでも対策が必須なので雨パーティに勝てるポケモンを補完で探すようにするよりも最も構築の力を発揮しやすい基本選出を雨パーティに勝てるようにして構築を組み始める方が選出もブレにくいので良いと言えるでしょう。
また、作業パーティと呼ばれるようなやることが決まっているパーティならば相手の選出に関わらず立ち回りの方針がほぼ決まっているため選出を間違えにくいだけでなく技選択時にも間違えにくくなります。イージーウィンという言葉も流行っていますが、負けにくいパーティより勝ちやすいパーティが多く好まれているようなイメージがあります。


〜技選択時の制限時間〜


○課題:「時間内に自分の行動が正しいものかどうかを判断しきれない」

ここでいう「正しい行動」は「少なくとも選択主であるプレイヤーがその時点で最善だと思えるものを納得して選べた行動」というような意味合いで解釈してください。
選出よりも1回のミスが命取りになることが少ないですが、実際に選出したあとの試合の勝敗を決めるのは毎ターンの行動選択の積み重ねの結果であり、不運な要素が訪れることも考えると行動選択も間違いなく行っていきたいものです。
選択時の考え方も人それぞれでしょう。自分と相手と選ぶ技や行動対象で様々な条件が複雑に重なるので、「何かしらの条件を固定して他の条件を変える→固定する条件を変えて他の条件を変える→これを繰り返して照らし合わせる」というように考えるのが基本(?)でしょうか。最初に固定する条件を自分の行動とする人もいれば相手の行動とする人もいて多様な気がします。
しかし、一つ一つ照らし合わせいたらとてもじゃありませんが選択は間に合いませんし考える作業に労力を使ってしまいます。よって、最初に条件を固定する段階からなるべく正しい選択に近いものを選んでおく必要があります。私は選択を考える際はそのように「おそらく相手はこう動きそうだしこちらはこう動くのが良いだろう」というのを見つけてから条件をいじって選択が最善かどうかを考慮していたので技選択の制限時間にはそこまで困ることはないだろうと思っていました。
正しい選択に近いものから考えておけば選ばないであろう選択を考慮するという時間と労力をを省くことができます。因みに、この考え手順の問題は「正しい選択に近いと思うものを最初に決めつけるので、本当に正しい選択に近いものを自分から遠ざけてしまっていることに気付かない可能性があること」と「最初から固定する条件の量が多くなるので、他の条件を変えていくうちにどの条件を変更したかが脳内でもつれてケアレスミスを起こしやすくなる」ということでしょうか。


○対策:「選択の直感力を身に着ける」

要するに、「時間内に納得できる答えに辿り着けるようにしよう」ということなのであまり解決策にはなっていませんが、辿り着きやすいようにする能力を身に着けようということです。直感というとある種の閃きのようなものが求められているようで身に着け方がイメージしづらい気がしますが、直感は経験の蓄積によって成り立っているものだと個人的には考えているため、経験を積み重ねていけば十分鍛えられる能力だと思っております。
では、何の経験を積み重ねればよいのか。正しい選択を行うための直感力を身に着けるための経験なので、正しい選択を行う経験を積み重ねるのが良いかと思います。短い時間で選択を行えるように対戦回数を重ねて体に覚えさせたり、自分が対戦した試合や他人の試合を見てそれが正しい選択なのかどうかや別の選択をしていると何が問題になるのかなどを考える時間を作ったりするのが簡単にできる方法でしょうか。だいたいの物事において、人間の成長は時間をかけてもなかなか成果が上がらない状態が続いてあるとき急に目覚ましく成長する(そして、あるときから費やした時間の割には成長しなくなる・・・)という傾向が私の経験則としてありますが、この程度の工夫なら多くの方が経験しているでしょうし、経験の質と量も考えて根気よく挑戦したいところですね。特に、ある試合数をこなしたときに自分のプレイングミスがない試合がどれくらいあるのか、どうしてそのミスが起きたのか、などを意識して見直したいです。
因みに、先ほどの成長の話題は私の経験則であってどこにも根拠はありません。同じような経験をしたことある方は自然と納得できるかもしれませんが、そうでない方は頷けないでしょう。このように経験則で物を語るときは経験則であるということを注釈しておいた方が良いと思います・・・っていうのも経験則ですね((
また、先ほど問題点としてあげたケアレスミスを起こしやすいという点について。私はケアレスミスの多さに関しては人一倍の自信を持っており経験を重ねても全く改善することができていません。すべて脳内で行おうとしているのが原因なので、できるだけそれをメモのような形で別のところに落とし込むというのが対策として考えられるでしょうか。制限時間の関係でメモをとる時間もあまりありませんが、個人的な話をすれば対戦ログはバトルビデオを見れば振り返れるようになったので本当に時間を使ってまでメモしたい点を洗い直してメモの取り方を変えてみようかなと思っているところです。
本当に長考が求められるときというのは一手が試合の勝敗に大きくかかわるような(特にピンチに立たされた)場面であるときがほとんどな気がしています。構築面で勝ちやすい構築と負けにくい構築という話を少しだけしましたが、負けにくい構築は一手が試合を左右する場面に遭遇しやすいと思うので、勝ちやすい構築を使うことで長考が必要な場面にあまり遭遇しないようにするという対策をとることができるかもしれません。


〜試合時間の制限時間〜


1試合の時間にも制限はできましたが、技選択に制限時間ができたことから長期戦にならない限りは試合時間をフルに使うことはあまりないでしょう。そのため、影響はそれほど大きくはないと言えます。
しかし、お互いに時間内にすべてのポケモンを倒せないような状況は起こりますし、時間をかけられたら勝てないはずなのに時間制限のルールに従って勝ち試合になる状況もあるので、制限時間が来た際にどのように勝敗を判定するのかは知っておいた方が良いです。


○試合制限時間が訪れたときの勝敗判定方法の優先順位
1.残っているポケモンの数
2.残っているポケモンのそれぞれの残りHP割合の合計
3.残っているポケモンのそれぞれの残りHPの合計


・・・となっています。そのため、試合制限時間を使い切ると見立てたときには、これらの要素で相手に勝てるように意識して立ち回りを変える必要があるでしょう。
因みに、試合制限時間が0になってもそのターンの選択制限時間はカウントダウンを続けていますが、試合制限時間が0になったターンの行動は行われずにそのまま試合が終了するので、勝ちを狙うためのターン調整はその辺りも考えて行わなくてはなりません。。



〜それでも時間が足りないときのために〜


○バトルボックス・技の配置に気を遣う
時間内に選択ができなかったからとはいえ、ポケモンが出せなかったり技を出せないままターンが終わるわけではなく勝手に選択をされて試合が進みます。選出時の時間が足りないことは特にダブルバトルトリプルバトルでは場に同時に複数匹分の技と行動対象を選択しなくてはならないためコマンド入力が間に合わない可能性は十分にあります。そこで自動的な選択がどのように行われるかを知って対策を考えておく必要があります。
詳しく検証はしていないのですが、現時点で意識しておきたいことは


・選出が完全に間に合わない場合、一番上から規定の選出数を満たすように自動的に選ばれる
・時間切れ時に選出を決定しているポケモンがいる場合はその順番通りに選出されて、規定の選出数に数が足りない場合は一番上から自動的に選出がされる、
・技選択が完全に間に合わない場合、一番上の技が自動的に選ばれる
ダブルバトルの場合など時間切れ時に選択が終えられているポケモンがいればそのポケモンは選択通りに行動する


というところでしょうか。つまり、パーティの6匹の配置や技の配置などに気を遣っておいた方が良くなりました。6匹の配置に関しては何が来てもある程度戦えるような基本的選出があるのであれば、それで配置すると良いかもしれませんが裏を返せば相手にパーティの中身を悟られやすくなるかもしれません。
技配置論については意見が飛び交っているのをよく見る気がします。特に、話題にあがっているのは「ダブルバトルで一番上に持ってくる技を守るにするかどうか」というものでしょうか。時間切れを迎えた際に守るが出れば相手に隙を見せるかもしれませんがこちらがポケモンを失うなどのリスクがありません。逆に攻撃技が出れば相手に負荷は与えていけますがそもそもこちらのポケモンが行動しないまま倒れるリスクもあります。この2つのどちらがリスクが高いと考えるかによって何を一番上に置くかは変わると思いますが、少なくとも自分が最善だと思うものが出るように配置には気を遣っておきたいです。
因みに、おおまかにですが私は技配置を「メインウエポン→サブウエポン→状態異常技→相手に干渉する補助技→場に干渉する補助技→自分に干渉する補助技→守る→回復技」という順番に並べております。もしどうしても守るを使わなきゃいけない状況であれば迷うことなく守るを選べているはずなので、その場は守るを選ばなくても行動が通る可能性が十分にあるので相手に干渉して負担を掛ける方が良いと思っているのがおおまかな理由になります。


ということで、選択制限時間とどう付き合うかを考えてきました。一朝一夕に解決できるものではありませんが、意識して質と量をこなせばスキルは伸びると思います。


日頃から対戦競技としてのポケモンからは学べることが多いと感じています。XYになって制限時間がついたのは「今の情報過多な時代を生きるには正しい選択を素早く選ぶことが求められていて、その能力を身に着けて日常を生きるため」の試練だと思っています・・・というか、前向きにそうとでも思わないと制限時間に縛られながらやっていられない気がします((