2014年 秋ドラマ感想

2014年秋ドラマの感想です。


ドラマを観る基準は「個人的に好みな物語っぽいか」「出演者(本人もしくはその役柄)に興味があるか」が軸になっているのですが、今回観た3作品とも前者の理由で視聴を始めたので、そこそこ期待が持てるシーズンでしたし、どれも比較的面白かったです。


「MOZU Season2 〜幻の翼〜」
素敵な選TAXI
「Nのために」



>「MOZU Season2 〜幻の翼〜」
2クール前に放映されていた「MOZU Season1〜百舌の叫ぶ夜〜」の続編。Season1で都内で起きた爆発事件で「なぜ妻が死ななければならなかったのか、ただそれが知りたいだけ」という思いだけで事件の核心へと迫るハードボイルドな公安警察の主人公を描いていましたが、元警察である彼の妻は生前にある極秘作戦に参加してから様子がおかしくなっており「極秘作戦でなぜ妻だけが生きて帰ってこれたのか」というSeason1では明かされなかった真相を追い求める主人公が描かれています。時系列的にはSeason1の半年後だそうです。
通常のドラマと同様に1クールでやるのかと思いきや、その半分の5話で終わってしまいました。話を少しずつ小出しにして真相を追っていくスタイルは変わりませんが、Season2では登場人物は最初からはっきりとしていたため意外性のある人物が飛び込んでくることが少なく、アクションシーンの数もかなり減ったような印象を受けました。こんな調子で10話もやると少しぐだぐだとしてしまうため5話であったことは良かったです。
最終話は極秘作戦を命じた者を追う側と極秘作戦の真相を追う主人公側の2つの軸から描かれていましたが、最終的にこれらが交わり合うことがなかったのがちょっと残念な感じがしました。Season1の終わりは主要人物がそれぞれ違う目的を持ちながらも全員が空港に集まるというような盛り上がりを演出していただけに、Season2は登場人物は多くなくて黒幕が現れるようなこともないまま、ただ真相明かしをするだけで終わってしまったような印象は否めません。
なので、Season2は続編という名目でありながら外伝というのが実質の位置付けだったように思います。そう考えると、本編にあたるSeason1は外伝なしでもある程度完結しているとも言えるので良い作りだったかなと思います。そして、外伝ポジションの今作を挟んで次は映画化されるようですが、残りの隠れている真相がどこにあるかが分からないです。。
Season1と2でキャラクター性が全然変わった気がする長谷川博己の演じる役ですが、「イカれている」と言われて「最高の褒め言葉」と返すようなキャラクターでいい味を出していたのが印象的でした。主演の西島秀俊に関しては、かっこいいのは承知ですが、役で見るとSeason1に比べて掴みかけた真相を掴むために奮闘していることから少しクールさが足りないという感じはしましたね。


>「素敵な選TAXI
過去にタイムスリップができるタクシー、通称・選TAXI。たまたま乗り合わせた乗客が選TAXIを利用して過去の分岐点に戻って人生の選択をやり直す物語。話をまたがって登場する人物もいましたが、構成は1話完結となっています。
個人的に、タクシーの運転手さんにはロマンチックな要素があると思っているので、それだけでものすごく魅力的でした。初対面なのに2人きり、行きつけのお店とは違ってそれっきりでもう会うことはないかもしれない…という不思議な関係で、運転しながら乗客の話を聞いてあげられる。それでいて、バックミラーで話をする乗客の顔色を伺いながら、何か言葉や行動を返すときは運転の最中なので背中を向けたまま気持ちを向ける・・・なんていうことが実際にあるかどうか分かりませんが、こんな素敵な展開があるかもしれないという期待を持っています。
そんな期待を持って3話から観始めた(1,2話は録画し損ねていた)のですが、木村文乃演じる秘書が家族ある不倫相手に結婚を迫った結果断られて選TAXIに乗車、涙で化粧も崩れているところに運転手が背中を向けつつもハンカチをそっと差し出す・・・こんな展開が理想なわけです。なお、実際には運転手は誤って手袋を差し出して(意図的ではない)しまい、今まで涙していた秘書はそれに思わず笑ってしまうような展開になっており、私が感じるタクシーの運転手さんのロマンチックさを的確に表現していたので、とても共感できました。
どのような事情で過去に戻るかはそのときの乗客それぞれで、婚活パーティで出し抜かれたからリベンジするためであったり、仕事や恋愛など取り返しがつかない人間関係のためだったり、とストーリー性も豊富だったので楽しく観ることができました。
過去の選択の分岐点に戻ったとしても必ず良い結果になるわけではなく、自分が知らなかった事情を知ってしまったり、より悪い巡り合わせと対面してしまう可能性もあり、過去に戻ってそういう経験をした乗客が人生を一歩前に進むような展開をコミカル要素を混ぜ込みながら作られているストーリーが好みでした。
ただ、少し気になった点もあります。一度だけ過去に戻らないで乗客を乗せたストーリーがあり、それは2種類の強盗が逃走用にタクシーに乗り合わせたという話で、アンラッキーな出来事をコメディチックに描いていることは面白かったですが、コメディーに徹したストーリーなら最終話の直前ではなくもう少し前の段階に持ってくる方が良かったような気がします。
あとは最終話の終わり方です。最終話では主人公が元々選TAXIの乗客でありながら過去に戻る前に当時の運転手が免許停止を受けたことから再開できるまでの3ヶ月間代わりに運転手を務めていたということが明かされます。彼女との関係のために過去に戻ろうとしていた主人公が偶然現在の彼女を見掛けてしまい、彼女の頑張りを無駄にしたくないから過去には戻らないと決意をするというところは良かったのですが、再開した運転手が再び免許停止を受けて主人公が代役を務めることになる終わり方は蛇足だったと思います。続編をやるにしても続編の冒頭にその事情を入れるか今回のように続編の最終話で再び運転手をすることになった理由を明かす物語を入れるような工夫ができたのではないかと思います。
それでも最初に心を掴まれたように楽しく観ることができました。ポケモンという1ターン1ターンの選択が重要になっている勝負をやっている身からすると大一番の勝負をする棋士の話とかあったら面白そうなんて思いました。


>「Nのために」
10年前に起こったマンションでの夫婦殺人事件とその場に居合わせたイニシャルにNのつく4人の若者。10年前に何が起きたのか、それぞれが何を思っていたのか、を解き明かしながら10年経った今どういう思いを持ってどういう道を進んでいくのかを描いた物語。原作は湊かなえのミステリー小説。作品でいくと「告白」しか読んだことがないのですが、物語が面白くないわけないだろうとなんとなく思っていたので視聴することに。
10年前に何が起きたのか解き明かすと書きましたが、誰かが事件の真相を求めて様々な人物を訪れて話を聞いたりしているような感じではなく、過去と現在を切り分けて描いています。視聴者には過去を当時の出来事として少しずつ見せつつ、そこから10年経ったいまの描写があります。
話は15年前に離島に住む主人公の父親が家族を家から追い出すところから始まり、苦しい境遇の中で主人公と幼馴染は前を向いて島を出る決意をします。そんな中で幼馴染の家である料亭が火事に遭い、それが幼馴染による放火だと思った主人公は彼を庇って罪を共有する仲となります。それから進学のために島を出た2人と主人公が東京で暮らす家の住人2人が10年前の事件と対面するまで・・・という流れで過去は描かれていました。大事な過程ではあると思うのですが、1話の時点で「10年前の事件が…」と言っていた割には15年前の原点を描く部分からスタートするとやや長くなるので最初から興味のありそうな視聴者しか釣れなさそうな感じでした。ただ、そこから観ていた方からすれば、その段階を越えてからは核心に迫っていき面白味が増したように見えると思います。
最終回で悲劇が起こってしまったのはそれぞれがそれぞれのNのために動いたからときれいに繋がりました。観ている側としてはそれですっきりしたと同時に、最終話までに描いてきた背景を鑑みたら各々の行動はそうせざるをえないものであり、それが重なった結果悲劇が起こってしまったので、誰のせいでもなく仕方のないことだという真相の作りこみ方が凄いなと思いました。なので、もう一度見てみると見え方が変わるのではないかなと思っています。
ちょっと疑問だったのは主人公の病気の設定です。フィクションの登場人物を殺してしまうことは簡単で現実に比べるとはるかに重みがありません。しかし、それでいて読者・視聴者の立場からすると情を動かされてしまいます。そのため、フィクションにおける病気や死はただ観る者を引き込むための便利な設定としてだけではなく、物語にとって大きな意味のあるものでなくてはならないと思っています。今回のドラマでは過去を解き明かしながらも唐突に現代で病気を抱えている設定が現れたような気がしていて、もちろんリミットができたことによる物語の動きもあったのですが、過去の作り込みが綿密にされていただけに現代の設定が少し薄っぺらく感じてしまいました。
あと気になったのは榮倉奈々の方言の違和感と進学のために島を出た弟が最終話まで出てこなかったことでしょうか。また、イニシャルに全員Nが入っているという設定の中で、なぜ杉下と安藤は下の名前にNが入り(しかも、この2人はどちらも名前が「のぞみ」であることも)、成瀬と西崎(と野口夫妻)は苗字だったのかも気になりはしましたが、推測するにも私の理解が浅い気がしました。
小出恵介が少し病んだような役柄を演じるのは珍しい気がしましたが、ドアチェーンが掛けられていて逃げられなかったときの表情なんかは迫真の演技だったと思います。